神楽坂の喧騒と、参謀からの「贈り物」
ゆるゆると書いてます。
変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。
新しいおもちゃを手に入れた小学生のように、ひよりは逸る気持ちを抑えきれずにいた。
全力の「韋駄天」を駆使して神楽坂のメインストリートを駆け抜け、神楽坂ダンジョンの入り口へ到着すると、そこには見覚えのある顔ぶれが揃っていた。
「あれ? 三上先輩?」
「ホントだ! 三上先輩だ!」
ひよりに気づいて声を上げたのは、穂乃と栞だった。
そこには浅野と瑠奈もおり、「サンフラワー」の4人が揃って準備を整えていた。
「おぉ、みんな! こっちに来てたんだ」
「まさか三上と会えるとは思わなかったよ。世田谷では潜ったんだけど、今日が初の神楽坂だから気合が入ってるんだ」
浅野がグッと拳を握り、爽やかな笑顔を見せる。
「世田谷でも連携の確認を中心にやったんですが、こちらでも攻略より探索と連携をメインに頑張ります。安全第一、ですもんね!」
瑠奈がそう言ってひよりを見つめる。
ひよりが常日頃から大切にしている言葉を、彼女たちはしっかりと胸に刻んでいるようだった。
「そうだよ! 安全にね。栞ちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫ですよ! 安全! 完璧!」
「本当か? 昨日の訓練でも一番はしゃいでただろ」
浅野にツッコまれ、一同に笑いが広がる。
「せっかくだから、みんなで受付に行こうか」
ひよりの提案で、賑やかな一行はロビーへと向かった。
ロビーに入ると、これまたお馴染みの顔がひよりを待っていた。
「お、三上くん! ……あれ? 見慣れないメンバーだね」
「お疲れ様です! あ、もしかしてCurrentの……!」
常連の金子と、自称「ひよりの弟子」を自称する若手探索者の林田だった。
「二人ともお疲れ様です! そうそう、このパーティが『サンフラワー』です」
「初めまして。今日が神楽坂ダンジョンへの初探索になります。リーダーの浅野といいます。よろしくお願いします!」
少々緊張気味に挨拶する浅野に続き、女子3人も丁寧に自己紹介を済ませた。
「ご丁寧にありがとう。こちらは金子と申します。三上くんの友人なら心配はないと思うけど、ここで困ったことがあれば俺でも、他の探索者でも頼ってね。みんな力になってくれるよ」
「そうですよ! みんな優しいですから。あ、林田です! 三上さんと涼さんの弟子をやってます!」
「三上の弟子……? 凄いですね!」
驚く浅野に、金子が横から呆れたように口を挟む。
「弟子というか、自称だろ?」
「弟子というか、林田くんはわからないことをしっかり聞きに来てくれてますから。伸びますよ」
ひよりの「お墨付き」が出た瞬間、林田の顔がパッと輝いた。
「金子さん! 聞きましたか!? 師匠のお墨付きですよ!!」
「すぐ調子に乗る……」
笑い合う一行だったが、金子が「おっと、これから受付だったね。足を止めさせて申し訳ない」と道を譲ってくれた。
「いえいえ、紹介もできたので良かったです。またお願いしますね!」
ひよりは二人に手を振って別れ、ようやく受付カウンターへと辿り着いた。
「三上さん……白鷺さんから連絡が来ていますよ」
カウンターに立つ妃那が、苦笑いを浮かべながらひよりを迎え入れた。
その第一声に、ひよりの背筋に冷たいものが走る。
「『ダメだと釘を刺したけれど、たぶん行くからよろしく』……だそうです」
「あっ! やばい……。内緒には、できないよね?」
「私、嘘はつきたくないですもん! それに……『帰ったらお話があるから』とも言っていましたよ。頑張ってくださいね?」
妃那の完璧な笑顔が、今は何よりの凶報に見えた。
「お話……お説教だね。あぁ、帰りたくない……」
ひよりが天を仰いで絶望する姿に、浅野が呆れ顔で声をかける。
「お前、参謀様を怒らせるなよ……。あの人、怒るとめちゃくちゃ怖いんだから。……あ、妃那さん! ひより組の拠点ではありがとうございました!」
「こちらこそです! 神楽坂ダンジョンへようこそ!」
「基本的には世田谷なんですが、こちらも通わせていただきます。よろしくお願いします」
瑠奈が丁寧に頭を下げ、他のメンバーもそれに続く。
「まあ、妃那さんはライバルだけど、お世話になるしね。ね、穂乃?」
栞が少し挑戦的な、けれど親しみのこもった視線を妃那に向ける。
「なんで私に振るの!? ……うん、でも、本当にお世話になります」
「ふふ、私たちはサンフラワーを歓迎しますよ。Currentもチェックしていますから」
妃那は楽しそうに彼女たちと話していたが、再びひよりの方へ視線を戻した。
「それで、ひよりさんは今日はどうするんですか? まさか、14層とか言わないですよね……?」
「流石に一人だからね! まあ、ちょっとだけ覗くかもしれないけど……」
「白鷺さんに、詳細を報告しておきますね?」
ニッコリと笑う妃那の瞳の奥に、逃げ場はない。
「うそうそ! 安全にいくから! 本当に! じゃあ、行ってきます!」
これ以上追求されるのを恐れ、ひよりは逃げるようにゲートへと駆け出した。
「置いていかれちゃいましたね。よほど怒られるのが嫌なんだ」
妃那が可笑しそうに呟く。
「なんで探索中はあんなにかっこいいのに、普段はあんななんだろうな……」
「それがいいんじゃないですか!」
「普段の三上先輩も素敵ですよ」
「まあまあ。とりあえず、私たちも行きましょう」
瑠奈が副リーダーらしく場をまとめ、4人もゲートへと向かう。
「気をつけて! 無事に戻ってきてくださいね!」
妃那の温かい声援を背に受けながら、サンフラワーのメンバーも、それぞれの決意を胸にダンジョンの闇へと消えていった。
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