表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園祭開催中です。(仮)  作者: たすく
1/2

第1演目_仮装パーティ

新作です。

黄昏時。

目の前で、パチパチと音を立てて火が燃えていた。

キャンプファイヤーの中心に組まれた歪な木組みや、色褪せた造花の飾りが、

熱に耐えきれず弾ける。

そのたび、星が滲みはじめた空へ、白い煙がゆっくりと昇っていく。


私は隣に立つ黒髪の女性――生徒会副会長を、ちらりと盗み見た。

彼女は懐中時計で時刻を確かめ、パチンと蓋を閉じる。

しばらく炎を見つめたあと、胸ポケットへ静かにしまった。


誰かが歌い出す。

――蛍の光、窓の夕日。

気づけば、火を囲む全員が声を重ねていた。

少し離れた場所で焚き火を見つめていた生徒会長が、学園祭のしおりを開く。


最後のプログラム――「キャンプファイヤー」の文字に、

一本の横線が引かれた。すべての演目に線が引かれている。


突如、マイクの調整音が走り、放送部の声が校庭に流れる。


「これにて、第34回白百合学園祭を終了いたします」


周囲の女生徒たちは、誰も言葉を発さず、ただ焚き火を見つめていた。



――――



夜が白みに変わるころ。

校舎には朝だというのに、Tシャツ姿の女生徒が行き交い、飾り付けや紙コップを運んでいた。


飲食店まで出る規模の学園祭。その準備の熱に、胸が少し高鳴る。


私はトイレの鏡の前で立ち止まった。

シルクハットに燕尾服、口元には牙。

映画に出てくるようなドラキュラ伯爵の格好だ。

クラスの出し物はお化け屋敷。

じゃんけんで負けた結果、この役が回ってきた。


一番人気は、オオカミの水着みたいな衣装だったらしい。

さすがにあれは着られない。

そう思えば、私にはこれがちょうどいい。


教室では、仮装に着替える生徒と、まだ来ていない生徒が半々だった。


私は外の飾りを付け、〈衣装〉と書かれた段ボールを整理していた。

箱の中身を並べ替えていると、廊下の向こうから足音がする。

見回りに来た生徒会長と副会長だった。

生徒会長が私を見つけ、手を振る。

「おはようございます」

「おはよう。ええと……文化祭実行委員の、あかりさんだったわね?」

はい、と答えると、会長は少し申し訳なさそうに切り出した。

「忙しいところごめんなさい。昨日の話、引き受けてもらえないかしら」

「昨日というと……会議で出た、臨時の?」

「そう。書記が急きょ入院してしまって。あなたの議事録、とても分かりやすかったの。

なのでぜひ、生徒会を手伝っていただけると助かるのだけど」


私は文化祭実行委員で、会議では議事録係だった。

それもジャンケンで負けた結果。ただ、それだけだ。


隣を見る。


黒髪の清楚な副会長。すらりとした体躯に、鋭い目元。

いつもマスクをしているのに、不思議と美人だと分かる人。


仕事が増えるのは正直つらい。でも――。


「分かりました。がんばります」

「ありがとう。無理はさせないわ」

生徒会長が抱きついてくる。


「じゃあ、朝礼もあるし生徒会室へ。……どうしたの、朱音?」


会長が副会長――宵月朱音よいづき・あかねに声をかけた。

宵月副会長は、私をじっと見つめ、音もなく近づいてくる。

整理していた衣装箱から、悪魔のような羽を一つ取り出し、私の背中に当てた。

安全ピンが小さく鳴る。


「え……?」

「本当の吸血鬼は、羽が生えてるのよ」


そう言って、彼女は親指を立てた。

なぜだか、その仕草が可笑しくて、可愛くて、顔が熱くなる。


「じゃあ、生徒会室にレッツゴー」


会長の合図で、私たちは歩き出した。


廊下の先では、放送部のマイクチェックの音が聞こえてきた。

学園祭が始まるまで、あと一時間だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ