犠牲 神様からの贈り物
決まった。このポーズ、そしてこの台詞。
全てが完璧だ。さあ、どんな反応をしてくれるか。
「魔女…?」
「そう。魔女さ」
「なんですか、それ?」
思わずずっこけそうになった。おいおい…魔女の事を知らないなんて、こいつ何年生きてるんだ?
「そんな価値のない物を見るような目をしてないで、教えてくれませんか?」
おっと。どうやら身体が思考と対応していたようだ。気をつけねば。
「…あー、まず魔女って言葉は知ってるか?」
「えっと…なんか怪しい液体に満たされた釜を混ぜていて、老けているあの変な人のことですか?」
おいこいつ老けてる変な人とか言いやがった。
「…まああながち間違いでもない。世の中に出回っている印象はそうなんだろう」
ふざけた偶像だな。そいつが生きてたら殴り込みにいく必要がありそうだ。
「でも、本当は少し違う。いや、かなりか…?」
「どっちでもいいので結論を」
せっかちだな。私にとっては重要なんだけど…。
「ああ、そうだね。“魔女”っていうのは、特別な能力を持った人のことを指すんだ。
魔”女“って言うけど、これは女に限ったことではない。誰だってなれるのさ」
「…そうなんですね。じゃあ、テレンさんの能力はなんなんですか?」
「私の能力は、the all magic(ザ、オールマジック)。水とか火とか、その他諸々の物を創り出せる能力さ。君を支えたのも、魔法で空気の層を創り出した」
試しに、水の塊を一つ創り出す。小さな塊が宙を漂う。
「無から有を生み出すなんてすごいですね!
…でもなんで三流なんですか?しかも他称じゃなくて自称」
うぐ、痛いところをついてきた。
「それはだな…。私の能力が微妙なんだよ。他の魔女は、もっと派手で、そして圧倒的に強い。けど、私はどうだ?火を生み出せても、小さな塊ぐらいだ。派手さも強さもない」
「僕からしたら、十分驚きなんですけど」
「あー大事なことを一つ、言ってなかったな。
魔女は、何の犠牲も払わずに能力を使える訳じゃないんだ。私たちは、何かを失う代わりに、この力を得ているんだ。それは、手足だったり、言葉だったり」
犠牲なしに、新しいものは得られない。至極当然のことだ。
「私が失ったものは、視力だ。今は眼鏡があるが、無かったら目の前の景色全てがぼやけて何も分からない。一寸先が闇みたいなもんだ」
眼鏡を外した。
やはり何も判別できない。色の塊が視界を埋め尽くしている。
「でだ。不利益を被って、得られた能力がこれ。そりゃあ自称したくもなるさ」
「…そうなんですね」
「さ、私の番は終わり。次は君のことを教えてくれるかな?」
ため息を大きくつき、子供に視線を戻した。
「僕は、ヘドっていいます。年齢は7歳で、来た場所は…わかりません。ここに来た理由は…家を追い出されたからです」
なるほど。元いた場所もわからないし、どうやってきたかも分からない。
なんもわかんねえじゃん。
じっとヘドを見つめた。何か違和感を感じる。
…あれ?そう言えば…。
「どうして君は、片目を閉じたままなんだ?私が言えたことじゃないが、視力が落ちるぞ?」
そうだ。これだ。
片方の目を、目覚めてから一度も見ていない。
「…あ、えっと…これは……」
重たい沈黙が場にのしかかる。もしかして…
「…僕は、片目が無いんです…」
ぽつりと呟かれた発言に、目を開かずにはいられなかった。
また来週




