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猫 冒険

雪が溶け始め、より一層輝きを増していく春。

暖かい日差しが霜焼けの手を癒してくれる。


僕はいつも通り、友達のところに来ていた。

外で遊んでいると、暖かいを超えて、暑さを感じる。それでも、朝夕はまだ冷たい。


「今日は近くの森に行かないか?」


「いいねいいね!もう雪も降ってないし、先生も認めてくれるんじゃない?」


「確かに。ずっと庭だったから、違うところに行きたい。ヘドはどう?」


「…え?ああ、いいと思うよ。ここら辺はあんまりわからないから、なんとも言えないけどね」


「どう、先生!?行っていい?」


「う〜ん、まあいいわよ。けど、何かあった時のために、この子を同行させるわ」

そういうと、足元から一匹の黒猫が出てきた。


何処にもいなかったはず。不思議だ。


「猫ちゃん!可愛い〜」

「すげー!これ、先生の能力?」

「…ふわふわだ…」


「そうよ〜。さ、行ってらっしゃい。怪我には気をつけるのよ〜。あ、あとあんまり遠くに行かないでね。わかった?」


「はーい。行ってきまーす」

「行ってきます」「行ってきます!」


一瞬、師匠を見た。

「気をつけろよ」


その視線は猫から動いていない。


「…行ってきます」

曖昧な返答をして、玄関を出た。


ーーー


「こうやって、みんなで歩いていると、冒険みたいな感じがするな」


「そうかしら?私はお姫様とその従者って思うけど」


「なんだと?俺たちが従者?」

「そうよ。何?文句でも?」


モルとシュンが睨み合いを始めた。まただ。しょうもないことでいつもいがみ合ってる。


「はあ、相変わらずだね。ヘドはどう思う?」


「…ぱっと思いついたのは、騎士と従者?あの有名な本が浮かんだ」


「ははっ。帰郷のシーンかな?少し人数が足りないけど、確かにそうかもね」


「お前ら、どっちが正しい?!」

「あんたたち、聞いてる?!」


飛び散った火が、僕らの脳内の本を焼いてしまった。どうやらここまでのようだ。


「さあね。まぁ、従者っていうよりも、騎士じゃないかな?お姫様を守る、かっこいい、騎士」

リューイも首を振って肯定を示す。


「あんたたち、わかってるじゃない!さすが、私の騎士ね!」


「…こいつの騎士ってのは、ちょっと気に食わないが、まあいいだろう。なんせ、かっこいい騎士だからな」


既視感しかない返事。ここまでがいつもの流れ。

黒猫が大きく欠伸をする、その音が何故か、大きく聞こえた。



「さあ、もっと奥に行こう!まだまだ明るいし」


「えー、でも先生にあんまり遠くに行くなって言われてるじゃない。何かあったらどうするの?」


気づいたら、思ったよりも遠くに来てしまったようだ。雪についた足跡が、大きく伸びている。


「大丈夫だって。俺はなんせ騎士だぜ?」


「はあ?それはあくまで、たとえ!実際にそうじゃないでしょ?」


「ちゃんと実力はあるって。ほら、それにこんなもんも持ってきたしな!」


そう言って、練習用の木の剣を掲げた。

所々に傷が入り、どれだけ練習したかが一目でわかる。


「はあ…そんなんで何になるの?ほら!猫ちゃんだって、あんなに鳴いてるし、やめろって言ってるのよ!」


「そうですよ。先生に迷惑をかけるのはよくない。ここらで帰るべきです。ヘドはどう思う?」


「…帰るべき。何か違和感がある」


気をつけて周りを見ると、そこらに折れた枝が散乱し、雪に紛れて光る何かが落ちていた。


「何かって…何か落ちてたの?」


「片目がないのに、そんなわかるのか?」

「ないからこそ!…より、注意深く見てるんだ」


沈黙がその場を支配して、樹木の揺れる音がその独裁を破った。

強く言いすぎた。目について言われたのは初めてだった。


「…そうか、わかった。帰ろう」


「ええ、そうしましょ。猫ちゃんを連れ…」

モルの手が震えている。


「何んだよ、そんな話を止め…」

シュンは口を小刻みに震わせ始めた。

その視線を追った。



そこには、大きな猫がいた。


いや、違う。



「おいおい…嘘だよな?大きくなったとか…」


「そう思う?あれはどう見ても…」



どう見ても、熊だ。

片目に傷のついた熊が、仁王立ちしていた。


時間ができたので、一章完結まで毎日投稿します。

ということで、また明日。

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