5話 異能じゃねえの?
何も分からないままアブナイ鬼ごっこが始まった。
「おいサメ」
サメと呼ばれるのは勿論主張の激しいパーカーを着た氷雨である。
「はーい?」
「何か言うことは…?」
本当に何も知らされずに巻き込まれた少年は都合のよろしい害獣(暫定)を問い質した。
しかし彼女はあくまでも『救援要請』だというスタンスを曲げる気はさらさらないようで
「助けてくれる気になってくれてありがとう!」
「巻き込まれただけだっつーの!」
「くるる。それよりも聞くべきことがあるはずだが」
「?」
すっとぼけた家主に居候はこう教えた。勿論最初から気づくべきだった、うやむやなままで放棄された課題を。
「事情だよ」
「お前が言えたことか…?」
「…」
この少女に言えたことではなかったようだ。結局説明されてないし!
とにかくキョトンとしている海の王様(笑)に聞くこととなった。
「知らないよ?」
「「は?」」
「知らないよ?」
二度言えと言ったわけではないはずだがどこまで言ってもアホはアホなのだ。相変わらずの呑気っぷりでけろりと答えやがった。状況把握能力が著しく欠けている。
「「はああああ?!」」
「お、怒んないでよ分かんないんだもん。朝家出たらなんか居てね? 逃げ回ってたらいつもより調子が良かったの。なんか自由自在に体が動くっていうか…。あれ関係なかったかな? まあとにかくまだ逃げれてることぐらいしか…」
…確かに。常人には裏路地の上、つまりそこそこの高さの建物から飛び降りて無事なはずがないのだ。ここから考えられることは普段から鍛えてる『筋肉モリモリマッチョマンの変態』かあるいは…
「…なあおい。あれって異能じゃねえの?」
「恐らくな」
「先天性じゃねえの? 急に調子が良いとかいってるけど」
「…後天性もあるにはある。そもそも異能は一人ひとつじゃないからな」
「え゛」
当人に聞こえないように耳打ちしてこそこそやってる二人組を、フードを被り直した魚介類は作戦会議でもしてるのかな? と(着いてきて貰ってる側のクセに)のほほんとした目で眺めていた。
まだまだ書くのへたっぴですかねー。楽しんでいただけると幸いです。そのために書いてるんでね!




