18話 ご対面
響くノック。城門はそこそこ大きなものだ。正門らしくかなりでかい。十数メートルほどに見える。
「……どなたで?」
「わーたーしーだー」
…雑。
ギギギギギーという音と共に開いた城門を通ると、城門脇につけられた、カウンターとブロック塀を組んだだけの粗末な受付のような場所に守衛さん? みたいな男の人がいた。胸当てと膝、肘のところだけ金属で、あとは冒険者のような格好だ。少しぼろっとした長袖と長ズボン、ベルトを腰に2本巻いて帯剣している。年齢の方は30はいってそうだが。
「……いい加減合言葉を覚えていただけませんか。ルールブレイカー殿」
「今はそっちの顔でやってないんだよおやっさん」
「『おやっさん』呼びもやめていただきたい。何のご用で?」
こちらを見つめる『おやっさん』。敵意というものを全く感じない。というかあまり掴めない不思議な人だ。
「コイツらを登録する」
「それでわざわざこのサイトに。では連絡はいれておきますので。入って右手の廊下突き当たりにいらっしゃいます。一人でチェスを楽しんでおられるかと」
あいかわらずおいてけぼり。要は着いてきゃいいんだよこんなの。
それと一人でチェスって何事だよ。
「じゃまするぞー」
内装も普通に城。赤いカーペット白い壁たまにかけてある謎の絵にしばしば置いてある花瓶。
言われていた入って右手廊下の突き当たりの方を見る。
「ううむ。遠くね?」
「遠いね」
「そうか?」
コイツ感性ずれてる。ずれてる絶対。いや100メートルぐらいあるぞこれ。
実際に歩いてみると割とすぐだった。ここ作ったヤツふざけてんな絶対に。
「おかしいだろうが」
「うん。これは良くない」
「は? 何が?」
というのも実際には100メートルほどに見えた廊下は実際のところ30メートルほどだったのだ。それでも十分広いがこれだけは納得いかない。廊下はこうなっていたのだ。
「突き当たりのドアにさらにその先の廊下(幻)をデザインして廊下を長く見せるとか小賢しすぎるだろ。どこに技術割いてんだよ。ほんとに騙されたじゃん」
「しっかり遠近法による視界の一点透視図法まで計算された造形だね。丁度入り口から入ったときが一番きれいに見えるよう工夫されてるよ」
「私はこれに慣れてしまったものだからな…」
「「慣れたくない!」」
またノック。
「アガー。登録に来たんだがーぅっ?!」
「おお我が友よっ! よくぞ来たな! おや、我が友の声がしたのだが、ご存知ないか?」
「お前が食いぎみにドア開けて挟まれてるよ」
――白スーツに赤いネクタイの若者が出てきた。
「いやあすまない! 我が友よ許したまえ! さすれば我ら再び、運命共同体としての絆は蘇り…」
「そんな時期はない。いいから登録しに来たんだが」
まだ若干不機嫌ながら急かすカルア。
『無』の彩気は不意打ちだと攻撃を無力化したりできないらしい。鼻がまだ赤い。
「それに関しては……今回は断らせてもらう」
「はあ? お前なに言って」
「誰でも彼でも受け入れるわけにはいかないのだよ。君ら、特保といざこざあるじゃないか。それでは本当に匿うだけだろう?」
実際、アガと呼ばれた男の言い分は間違っていないのだ。特保とダイバーシティは特別仲が良いわけではない。
記憶を探る。
◇─◇─◇─◇
フードコートに向かう間のこと。
「先に言っておくけど、特保と先輩たちのトコロは特別仲が良いわけではないんだよ。内通とは少し違うんだが、僕と先輩が少ーし色々あるだけで」
――間明の言葉だ。
「かといって、年中争いをするわけじゃない。勢力は五分。お互いルールがあるんだ。今回『人は先に直接接触できた方に譲る』って暗黙の了解があったから丸く収まった」
――カルアの言葉だ。
「またよく分からないんですが、なぜ『直接接触』なんでしょうねえ。随分前からあったみたいですけど、先に狙い始めた方ではなく先に接触できた方に譲るみたいで…」
――不飛鳥の言葉だ。
結局それ以上その話は発展しなかったが。
◇─◇─◇─◇
ありゃま。譲られたってことは別にいざこざは大丈夫じゃないか? コイツがそういうルールを知らないとして、そんな人間がお役目に立つものだろうか。
「メリットを提示しろとでも…?」
「そう殺気立つでない。何もそうとは言っていなかろう。デメリットが大きすぎる。そういうことなのだよ」
デメリット…?
「アイツらはカルアに譲ったんだろ? じゃあなんで俺達の登録? がデメリットになるんだよ」
「君な。自分の立場を本当に理解できていないのかね? よく考えてみることだ。そちらの娘に関しては反対しないが、君に関して、直ぐにはイエスの返事はしたくないな」
は……?




