16話 マッドでクレイジーですよ!
沈黙かと思ったが。
「カルアちゃんと関係とか、そんなものあるわけな…」
「ふうん?」
「な、なんでそんな目をされなきゃいけないのー?」
「……ちなみに、俺は一度もアイツの名前をアンタの前で呼んでないんだがな」
「……」
睨みつつ言い放つと、目に見えるものではないが、一気に雰囲気が変わった。
「いやはや! 彰様は案外鋭いのですね! 私は少々、度肝、を抜かれてしまいましたよ! いやあ!」
…ずいぶんと明るい雰囲気に。間明さんとかが化けてるのかと思ったが違ったようだ。
…にしても。
「変人だ」
「おや? そういわれて傷つくのは正常であることに未だ囚われている未熟な変人だけですヨッ! 私にとってはもはや、ほ・め・こ・と・ば!」
…認識を改めよう。コイツは狂人だ。相手すんの疲れる。椅子にしなだれかかってうあーっとしながら相手をしよう。それがいい。
「お前は誰とかの前に聞きたいんだが」
「はい?」
「いつからお前だった?」
「つまりどういうことでしょうか?」
すっとぼけやがったコイツ。目を見りゃ分かる。面白がってる。楽しんでいやがる。
「最初はお前じゃなかっただろ」
「それでそれで? では彰様はいつから私だったとお考えですかね?」
「氷雨に奇襲を頼んで遠回りさせた時」
「おお素晴らしい! 正解でございますね! いやいやものすごく鋭いですよ!」
なんだコイツ。はぐらかしていたクセにバレたらバレたで楽しそうだしベタ褒めだ。読めない。
「タイミングに関しては聞かずとも分かりますが。なぜ途中で変わったとお思いで? 最初から私だった可能性は考慮しなかったのですか?」
「…とりあえずその格好でその口調やめろ笑いそうだ」
なんか一般人が戻ってきた。
「失礼! 私は本体ではないので媒体がいるんですヨ! そのために先の少女をお借りしていたのですが、お返ししましょう。はいそこに」
いつの間にか隣の席に寝てる氷雨が居た。話からすると格好ではなく本人の肉体だったようだ。人体に害はないらしい。などと思ったらサメが倒れて肩に頭のせてきやがった。起きたら許さん。
「お前…」
「ジャナイデスヨ」
「はあ?」
「オマエジャナイデスヨ。コードネームは備後です」
……今更。
「備後が途中で入れ替わったって感じたのは雰囲気だ。若干変わってたんだよ。あの後は妙に言動に身が入っていたというか、楽しんでなかったか?」
「いやあお恥ずかしいですね! そこまで見抜かれていたとは…。演技は楽しいものですよ! なにせアイドルの卵の身体となるとうかうかしてしまって! あぁアイドルの卵は誤解しかねないですね! 一般的な意味ではないとだけ」
「はあ…ったく。お前ら毎度ぼかしやがって。で? お前とカルアの関係は?」
「さあ?」
…意味不明。
「私は少なくと七回ほど渡っていますが、カルア殿がどのようであるかまでは知らないんですよ。今回は直接関わっていませんしねえ。いえしかし、カルア様はそもそも有名ですから、彩気社会に生きるものなら大抵知っていますよ?」
コイツら説明する気あんのか?
「おやもうこんな時間ですか。今回のうちにまた会えるといいですね」
一方的に会話を切られた。なんでこう、基本的に時間を気にしてるんだ揃いも揃って。
備後はドロン!という効果音と煙幕を置いて消え去った。
気づけばそこには眠っている例の一般人と、机の上には紙切れが一つ。




