第5話夢みるあの頃③
もうすぐ10歳になる。けど、俺にはいまだにスキルが出ない。父や母は遅い子はいるから心配しなくていいと言ってくれたが、それでも同年代の子はみんな出てるものが自分にはないと焦るものだ。
「10歳になってもスキルが出なかったら神官のところに行ってみるか?」
この世には魔法で他人のスキルを見ることができる人がいるらしい。基本的にスキルは自覚できるものであるが、自覚できないこともあるらしい。
「でも、高いんじゃない?」
俺は心配になる。教会とか宗教はお金にがめついイメージがあり、このようなことで大金を払えと言ってくると思ったからだ。
しかも、うちは普通の農家であるからお金持ちというほどでもない。
「んー、前に聞いた話だとそこまで大金ではないらしいぞ。安くはないけど」
「どこで前に聞いたの?」
「う、それはだな...」
「お父さんったら、結局心配で教会のところまで聞きに行ったんですって、この前野菜を売りに行った時に。」
「おい、言うなよ!」
「なによ、自分でバレるようなこと言ったんじゃない。」
「だけどなぁ...あ、おい」
やっぱり心配はしてくれていた両親に感謝をしつつ、気晴らしに外に出る。今日もいい天気だ。
村の外でも散歩しに行こうかな。
「おーい、エルム。どっか行くのか?」
たまたま会ったオルニアとユーラが駆け寄ってくる。
「ちょっと外に散歩しに行こうと思って。」
「お!なら暇だし俺たちも行くよ!」
そんな感じでいつものように3人で遊ぶことになった。スキルの発現が遅いからといって、避けられたり、いじめられたりしたことはない。まぁ、結局のところスキルは特技。なくても生きてくことはできるし、スキルを活かせる仕事に就かないことも少なくない。
冒険者は流石にスキルがないと厳しいようだが。
「なぁ、知ってるか?」
ユーラが話を切り出す。
「村にな、俺たちと同い年ぐらいのハーフの子がいるらしいんだよ。」
「え?俺たち以外に同い年がいるなんて初めて聞いたよ?最近引っ越してきたってこと?」
「エルム、そうじゃなくて、なんでも体が弱かったから今まで外に出てなかったらしいんだ。」
「へー。んで、ハーフってのは?」
「そうなんだよ!聞いた話によると獣人とヒトのハーフらしいよ。」
「でも、体が弱いってだけで今まで存在すら知ることができないってどう言うことだよ。」
「そりゃ、エルム。ハーフだからだろ?」
オルニアがわかるだろという顔でこちらをみてくる。
「...ん?」
「聞いたことないのか?」
ハーフについてなんか聞いたことあったっけ?あった気がするな?えーと、確かハーフだから獣人とヒト、どちらからも迫害されるてきな?
「ハーフは忌み嫌われているとかなんとか?」
「何言ってんだよ、ハーフってのはめちゃくちゃ珍しくて、幸運を運ぶとさえ言われてんだぞ。」
「なんで珍しいのかはわかんねーけど」
「へー、そうなんだ。勘違いしてたみたい」
多分、今のも前世の記憶が原因なんだろうな。最近こういうことが前よりも頻繁にある。
「結構あるいたね。」
「そうだね、もう森が近いしこれ以上は行かないようにしようよ。」
気がつくと、森の近くまで来ていた。
オルニアがここでいつものようにゲームを始める。
「んじゃ、ここら辺で珍しい生き物見つけようぜ!前にいた尻尾が虹色のトカゲとか!」
「いいけど、自分が見つけるスキル持ってるからって。ずるいんじゃない?」
「お前だって、走る速いからその分探せるだろ!」
うん、羨ましいな。
「俺、まだスキルないんだけど。」
爆弾投下!自爆攻撃だけど。
「あっ」 「えっと」
予想通り二人は返答に一瞬困った。
「いや、エルムは捕獲するのうまいじゃん!」
「そうだよ!この前虹色のやつ見つけて捕まえたのだってエルムだったじゃん!」
「尻尾切って逃げてだけどね。」
「そういえばそうだった」
「...よし、開始!負けたやつは今度、ハーフの子を遊びに誘ってくることにする!」
ゲームを開始することで話をぶちぎる。悪くない手だ。しれっと罰ゲーム決まってるし。
でも、やるなら負けたくない。他の二人はスキルがあるけど俺にはない。頭を使って勝たないと。
森の近くの方がいろんな生き物がいるよな。
そう思いつつ、気になる森の方へ自然と足が進んだ。