第4話夢みるあの頃②
7歳になった。
「おーい、エルムー。釣りに行こうぜー。」
「行こうぜ、行こうぜー!」
「うん!お母さん行ってきます!」
友達のオルニアとユーラに誘われて村の外にある川にいく。
「おーい、坊主どもー。あんまり遠くに行くなよー。暗くなる前には戻ってこいよー。」
門にいる兵士にいつも通りのことを言われ川に行く。
「おどろけ!俺はついにスキルを手に入れた!」
オルニアが釣竿を掲げながら声高らかにいう。
「えーいいなぁ。」
「どんなスキル?」
「なんと!どこに生物がいるかなんとなくわかるスキルだ!」
「すげー!釣りに使えるじゃん!今日絶対勝てないじゃん!」
「だから釣り行こうって誘ったんだなー!」
「お前、釣竿禁止!素手でとれ」
「えー!それは無理!なんとなくしかわからないのに!」
そして釣りが開始してから数十分後。
「ここだ!」
オルニアがバシャンと音を立てて川に手を突っ込む。
「とったぞー!」
素手で魚を取っていた。
「普通に取れてんじゃん。」
すでにみんな釣竿を持っておらず、素手で魚を探し回っていた。
スキルっていいなぁ
暗くなりそうで帰ろうとなり、獲った魚が入ったバケツをもつ。
「結局オルニアの勝ちかぁ」
とユーラが嘆く。
「やっぱりスキルっていいよな。どんなのでもいいから早く欲しいよ。」
「オルニアのスキルなら冒険者にもなれるんじゃない!?」
「んー、でも俺戦うの怖いし向いてないかもな。」
「えー、もったいないな。エルムは冒険者なりたいよね!?」
「俺はそうだなぁ...」
ふと、遠くに見える森に目が止まる。
なぜだろう。森から、というよりもあの方向からどうしても目が離せない。気になる。行ってみたい。どうしても。
「...エルム?」
「あ、うん。そうだね。なれるんだったら冒険者になりたいかな」
声をかけられて無理やり森から目を離す。それからずっと森が気になっていた。
あれからまた時が経ち、9歳になった。
俺にはいまだにスキルが発現していない。
そもそもスキルとは誰かに出たかどうか鑑定してもらうわけじゃなく、自然とわかる感じなのだ。言っちゃえば特技みたいなもんだからな。
ユーラは走る速さが上がる【疾走】という名付きスキルを手に入れた。
名付きスキルとは、基本的にスキルとは人それぞれ違うものである。しかし、世の中的に速度が上がるものをまとめて【疾走】持ちといったり、力が上がるスキルのことを【怪力】と言ったりすることでまとめている。
もちろん、どのくらい速いかとか、力が上がるかなどを同じ名前のスキルでも個人差が出てくる。
今活躍しているA級冒険者には【神速】と呼ばれる人がいるらしい。この人も【疾走】持ちだったのだろう。でもみんながみんなA級冒険者になれるぐらい速くなるかというとそうじゃない。
スキルは身体能力の一部なので鍛えることができる。もちろん限度も人それぞれである。
鍛えられないスキルもあるけど。
俺はいつスキルをゲットできるかな。森の方を眺めながらぼんやりと思う。