第3話夢みるあの頃①
「あー、あー!!」
「どうしたんでちゅかー。エルムちゃ〜ん」
「雷が怖いんだろう。明日になれば天気も良くなるはずさ」
母と父が蝋燭で照らされる暗い部屋の中で、俺を抱えながら話している。
俺は泣きながら思う。なぜ泣いているんだろう。
雷の音は今も響いている。怖かったのは確かなんだろう。でも今は雷なんだぐらいの気持ちである。
「お!泣き止んだな。強い子だな、エルム」
父は俺が母に抱かれて安心したと思ったらしい。もしかしたらそうなのかもしれない。
色々とチグハグだと自分でも思う。ふわふわとした感覚だ。
「エルムちゃん、これみて」
そう母は手をひらひらさせてから。
「ライト」
手の中に光の玉を作り出した。
すぐに俺は魔法だ!と思い、この光のたまに目を釘付けにされた。
手の中で色を変える光の玉を見ながら俺は
(ファンタジー世界!)
と強く頭で叫んだ。
あれ?ファンタジーってなんだっけ。
それから5歳になった。
たまに記憶に違和感がある時があったけど、普通の5歳だったと思う。
俺が住んでるところはのどかな村であった。北に広がる森に近づかなければ滅多に魔物すら出ない。
出たとしても弱い魔物が多い。
俺は近所の同年代の友達とよく遊んだ。そして、魔法に興味を持った俺は母から魔法のことを聞いていた。
「ごめんね、エルム。ママはこれしか使えないのよ」
結果は「ライト」という生活魔法を教えてもらったぐらいだ。
でも、魔法に関する一般的な認識もわかった。
この世の中には一般的に初級、中級、上級と呼ばれる魔法のレベルがあって、魔法使いなどは段々と覚えていくらしい。
また、噂では超級やオリジナルと呼ばれる魔法があるのだとか。
そして、一応初級の下に生活魔法と呼ばれるものがある。
初級以上の魔法が戦闘やその他非日常の中で使われるのに対して、
小さな炎を出す「ファイア」や明かりを出す「ライト」などはどのような人でも使えるもの、生活魔法として広まっている。
ただ、これも使える人と使えない人で分かれるらしい。
色々な理由が出ていて、そもそもの魔力量だとか、魔力の特色だとからしい。
ライトは使えるけど、ファイアは使えないとかあるのだとか。
基本的に、魔法には火、水、風、土、光の5種類がある。
光はあるのに闇はないのかと聞いたら、人間が使う例が少なく、魔物やモンスターが使うことが多いらしい。だから、人間の基本性質には含まれないとのこと。
「ママが昔教えてもらったのはこのぐらいかな。将来、エルムのスキルが魔法系だったら、魔法使いを目指せるかもね!」
「スキル?」
「そうよ。みんな7〜8歳ぐらいなるとスキルが出るのよ。でも、スキルは本当に人それぞれだし、何が出るかとか、どうやって決められてるのかと分かってないから、実際出てみないとわからないのよね。」
「生活系、農業系、釣り系、精神系...。とにかくいっぱいあって、実際には運なのよ。」
「へーー、運かぁ。」
「ただいまー。」
父が畑から帰ってきた。
「お?また魔法を教えてもらおうとしていたのか?ただ、ママも使える魔法はライトだけだし、パパは何も使えないしな」
「あなた、今日はスキルについて話してたのよ。」
「なんだ、スキルか!俺は植物が毒を持っているかどうかわかるスキルだし、ママは...」
「わたしはなんとなくその日の天気がわかるわよ」
「エルムはどんなスキルが欲しいんだ?」
スキル、初めて聞いたはずなのによく聞いた感じだ。欲しいスキル...スキル...
ここはやっぱり
「戦う系!」
あれ?何がやっぱりなんだろう?でも、戦うのには憧れる。
「そうか、そうか!エルムは男の子だもんなぁ!勇者とか冒険者になってみたいよな!わかるぞ!その気持ち!」
そういいながら俺を抱えて肩に乗せる。
「はぁ、あなたがいつもそういう物語を読み聞かせるから...。私は危ないことをしてほしくありません。」
「まぁ、いいじゃないか。スキルが出てから考えれば。俺も昔は憧れたんだから男の子はみんなこうさ。」
スキル、いいのが出るといいなぁ