現実
昔書いた作品のリメイクです。
かわいそうな女の子。
幼い頃から言葉を紡ぐのが好きだった。
特に小説。小説はわたしの人生と言っても過言では無い。いつだって物語は自由で、綺麗で、時には残酷で。無数の未来があって―。
わたしとは、大違いだ。
小説を書くことが好きだった。
好きだったの。ずーっと。心からそう思っていた。嘘偽りの無い感情。“少し前まで”はね。
いつからか、「好き」は「嫉妬」になっていた。
自分が紡いだ物語なのに、自由な物語の世界が羨ましくて……羨ましくて、憎かった。
いくら手を伸ばしても届かない。努力を積み重ねたって、何やったって、わたしは、物語の脇役にすらなれない。
嫉妬に塗れたわたしは、小説を嫌った。
唯一の「好き」を殺した。壊した。だってこのままじゃわたしが壊れちゃう。「好きなもの」で生きづらくなっちゃうから。
そんな自分の醜い感情に嫌気がさした。
暗がりで独り泣いて。傷つけて。現実逃避をして。
理想とは程遠い、地獄みたいな、暗くて冷たい。そんな場所に沈んでいく。
戻れない。昔のわたしには。小説を心から愛し、文字に、物語に触れていたわたしには。
「人生」そのもの、生きる意義のようなものを失った。今のわたしには、何もない。
届かない夢に手を伸ばし続けて、現状に絶望する。それの繰り返し。いつも、いつもそうだった。
「わたしは、なんのために生きているの?」
生まれて初めて生きることに疑問を持ってしまった。前なら大きな声ではっきりと、「小説を書くため」なんて言えたのに。本当に、わたしはからっぽになってしまったんだ。まるで死んでいるみたい。でも、とわたしは気づいた。
「これは、悪い夢なのかな?」
きっとそう、人生ってこんな痛くて苦しくて心がぐちゃぐちゃに壊されてしまうようなものじゃない。ほんのちょっと、悪い夢を見ているだけなんだ。ああ、早く起きなきゃ!元の世界に、楽しい世界に、わたしが生きている世界に!こういうときってどうすれば良いんだっけなあ……
確か……死ねば良いんだっけ?
そうだよね?この世界で死ねば元の世界で起きれるよね?震える手で包丁を握る。死ぬのは怖い。でもここで生きるのはもっと怖い。
だから……おやすみなさい、夢のわたし
夢とは思えないほどのリアルな痛み。広がっていく血の海。少女は膝から崩れ落ち、深く、長い眠りについた。