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愛国者達

2035第三次世界大戦開戦 


──台湾独立運動の活発化による台湾と中国の武力衝突が発生、いわゆる台湾有事が勃発した。

 

 第一にインターネットによるデマ拡散や反政府勢力︙大陆兄弟会─大陸同胞団─と名乗る勢力が台北や高雄で発起、反政府勢力は秘密裏に中国の支援や中国陸戦隊特殊部隊による、いわゆるハイブリッド戦が繰り広げられていった。

─しかし、ハイブリッド戦は戦争準備段階に過ぎない。中国本土からの巡航ミサイルの飛来である。

 台湾政府は国連、特に西側諸国へ悲鳴にも取れる声明を発表。これを受けたアメリカ第7艦隊は準戦闘行動に入った。これにより台湾有事が拡大し恐れていた東側諸国のワルシャワ条約機構と西側諸国の北大西洋条約機構の武力衝突にまで発展してしまった。


 ──それ以上に恐れていた事態が起きた。我が国、日本が攻撃目標に指定されたのだ。

 朝鮮人民軍のレインと名付けられた弾道ミサイルが西側諸国に発射された。弾頭には新型BC兵器γウイルスが搭載され、着弾した西側諸国には歩く死者《歩屍》が発生。もちろんアメリカの同盟国である我が国日本にも着弾し多くの被害が出た。

 特殊武器防護隊や歩屍の駆逐のために特殊作戦群などが出動、その混乱に乗じて北朝鮮軍による侵攻で瞬く間に韓国の半分、対馬、竹島、尖閣諸島、更には北方領土や釧路までもが占領され、我が日本も危険な状態であった。


──政府はこの危機を乗り越えるため、ある部隊に無制限作戦《考案》権限を発動した。     


日本政府直属特殊部隊 特殊行動小隊である。


第一部隊隊長兼パトリオット隊長コードネーム ウルフ 

第二部隊隊長兼パトリオット副長コードネーム カムシア

ウォーリア隊5名 アサルト隊5名  計10名

そして傘下の300人の自衛官で構成される。


第一班 ウォーリアー

 

ウルフ 近衛 刀楼

アサシン 小川 勇   

ブリッグ 松本 雄之助

バーサ 園田 宏美

ベノム 橋本 双葉



第二部隊アサルト 


カムシア 高橋 弘

フォックス 夏木 天狐  

ナイトアイ 栗田 夜風

グリック 松本 春樹

ロボ 藤川 彼方



傘下部隊 

レンジャー紀章取得隊員から成る《Ω戦闘団》

戦闘ヘリや輸送ヘリから成る《a航空機動団》




命令 12月6日


《特殊行動小隊は各員司令室へ集合》という伝令に我々は指令室へ向かった。

我々に聞こえる声のボリュームで

「おい、あれ見ろよ」

「ああ、あいつら噂の髑髏部隊だ。全く、血生臭いな。」


髑髏部隊 

特殊行動小隊の部隊章が髑髏と刀と89式小銃が描かれているデザインから特殊行動小隊の二つ名と成った。また恐らくウェットワークス─血汚れ仕事─が多いからでも有るだろう。


「なにが特殊部隊だ…隊長は一佐なんだから司令室に引っ込んどけ…」

「何なんですか彼等は?」

「あいつらの噂知らんのか」

「どんな噂だ?」

「特殊行動小隊の隊長ウルフが14年前行方不明になったんだよ」

「どうせ女だよ」下卑た笑い声が響く。

右斜め後ろに立っていたアサシンの怒りをひしひしと感じた。

「マスター…あいつらを殺して良いですか?」

「ほっとけ。負け犬の遠吠えだ」

「了解」

そんな会話をしている間に司令室につくと第二部隊アサルト部隊が目の前にいる、どうやら同時に着いたらしい。

「よう」

「…久しぶりぶりだな…カムシア」

その男は、低いが張りのある声で返してくる。

「そうだな、お前さんも元気そうじゃないか」

簡単な言葉を交わしながら我々は司令室に入った。

30〜40代の司令が座っていた。

「やぁきたな、気分はどうかな?」

「まぁまぁ…です」

「突然だがウルフ、君は14年前幻想郷に行ったことがあったね?」

気分は下がった

「…それがどうしましたか」

無意識に殺気が出ていたらしいく

「そう怒るなよ」司令は苦笑いしながら言う

「これが君の怒る言葉である事は知っている、私は君たちに命令を下すだけだよ」

だが司令は真面目な顔をして口を開く。

「本題だ君たちには幻想郷に行ってもらう、後方は別隊が担当する。それに従い今日1日休暇を与える、以上。」

どうやら聞き間違いではないらしい。

「何故自分なんですか?」と口をついて出てしまった

「あちらさんからの直々のご指名だと。長野に弾道ミサイルが着弾して以降、荒地となったあの土地に突如として幻想郷を名乗る勢力が出現。その幻想郷を名乗る勢力は現代科学では解明出来ない能力を使ういわゆる魔法使いで、それが我が国と連邦を組みたいと打診してきてその交渉やくに君が選ばれた。というわけだ。はいこれでおしまい。だれか質問有る?」

 特に我々はそれ以外何も質問が無いため何も答えなかったので、期待してるよとだけ言われ我々は司令室を追い出された。

「……マスター」「ウルフ…」

 カムシアとアサシン両名はまじまじと、そして困惑の目で私を見た。

私は無意識にニヤリとしてしまった。

──これも神の悪戯かな…いやそれとも悪魔か。

「各員に通達」

「確実な装備点検及び消耗品の補充」

「そして!」

「明日に備えしっかり寝ろ!」

全員「了解」

 私は愛銃MP5、M1911、ナイフ、ガスマスク、フィルター、各種装備を点検し私は官舎の床についた。が、私は何故か寝れなかった。部下も同じだろうか?彼女たちは元気だろうか?『あの子』は…?結局寝れたのは12時だった。


 翌日我々は多目的ヘリに乗り幻想郷に出発した。

「隊長一つ聞いてもいいですか?」

ヘリのローター音に邪魔されながらもベノムの声はよく聞こえた。

「何だ?」

「幻想郷はどんな所なんですか?」

それに便乗したバーサとアサシンが

「作戦上気になります」

「マスクー自分も」

少し考え「そうだな…人それぞれだ…」と答えた。

 我ながらこれは駄目だ。と絶望してしまうほどの回答だ。

「…あの場所が楽しいと感じ取るか、辛いと感じ取るかは人それぞれだ。私にはこれ以上あそこを言葉で表す事は出来ない。」

 それだけの説明を聞き理解してくれた優秀な部下は「分かりました。楽しみにしておきます。」と、苦笑いの相槌をいれてくれた。その後はまともな会話は無く、我々は流れる風景を見ながら装備の各種点検を行っていた。


とはいえ、装備点検をしている間の1時間は短いもので我々は幻想郷に着いた。


到着した直後、私は何かに突き動かされたかの様に無意識に幻想郷に足を踏み入れていた。

「おいウルフ!」「マスター!上だ!」

 カムシアとアサシンの鋭い警告に私はゆっくりと天を見上げた。

すると、女性が空をゆっくりと下降してきている場面だった。

「あらあら、私に気づくとは。優秀ね…ウルフ?」

「歓迎かな?八雲紫…ひさしぶりだ。」

八雲紫「フフフッ」


幻想入り


どうやらマスターと八雲紫と呼ばれた人物は知り合いのようだ。俺は銃を下ろした。

「マスター…本当に彼女は?」

「落ち着けアサシン…彼女は敵じゃない。カムシアも銃をおろせ。」

「ウルフ、本当に大丈夫なのか?」

「…問題ない。胡散臭い事には間違い無いが。ともかく紫。ここは安全か?」

「まあ、危険な子は居るけどね」

おずおず、とばかりにブリッグが目の前の女性に尋ねた。

「…聞きたく無いが…どんな?」

「うーん人間が主食の娘…とか?」

「こわっ…」

「まあ幻想郷を見て回りましょう。私と居れば大丈夫よ。」

 胡散臭いが俺たちは八雲紫の案内で幻想郷を見てまわった。良く見れば我が師匠はあまり外さないガスマスクを取り、師匠は普段あまり見せない無警戒の雰囲気を出していた。それに気づいているのは俺だけではないだろう。

 しかし、それなら何故あんなにも幻想郷の事が話しに出ると怒るんだろうか。



──紅魔館



「……紅魔館か…あの日以来久しい。」

「あら、忘れてないわね。案内は頼んだわよ。私はやることがあるから、しばしお暇するわ」

「勝手を言いやがって…」

ウルフは肩を落として、扉のドアノブへ手を伸ばした。

「隊長大丈夫か?」ナイトアイが師匠の肩を掴んだ。

「ああ、大丈夫だ。開けるぞ。」

そこは広く、中央には階段があった、そこには少女が佇んでいた…その少女は不思議な雰囲気だった。

いや不思議な雰囲気なのは少女だけでは無く、横に立つ師匠も同じだった。

横顔なので詳しくは分からないが、苦笑いしている様な…警戒している様な…


──館の主


 まさかこの雰囲気が眼の前の少女からでるものと理解するにはかなり時間がかかった

10から8歳ほどの少女に自分も部下も眼の前の少女に釘付けになっていた。

 すると不意にウルフが思い出した様に振り向いた。

「各員【MIND GREEN】に設定する。大丈夫だ。彼女たちは味方だ銃をおろせ。大丈夫だから。」

ウルフは、フウ…とため息をついた。懐かしむ様に吐いたその息は、何処か淋しげだ。

「──久しぶりだな…フラン、レミリア」

フランと呼ばれた少女が「久しぶりねお兄さま!今日はお友達も一緒?」と歓喜の極みとばかりに笑みを浮かべた。

「ああ、そうだ。」と苦笑交じりに言った。

「だが弾幕ごっこはだめだ。」

「ウフフ、おにいさま以外の人じゃやらないよ」

「…………」

「まあ良いわ、貴方もうハクレイ神社には行ったの?」とレミリアと言われた少女が口を開く

ハクレイ神社だと?横に立つウルフはやはり知っているようだ

「あぁ、これから行く。」

「そう、巫女に宜しくお願いね。貴方の事を覚えていないだろうけど。」

「…そうか。信濃もきっと大きくなっただろう。」

「そうね、多分そろそろ来るわよ」そう言い終えたと同時に犬の鳴き声が響いた。

「信濃!待ちなさい!信濃!」

「あら、どうやら来たようね。」

「信濃か。さぁ来い。」

ウルフは受け止める姿勢を取りそこに犬が飛び込み、ウルフの顔を舐める。

「すみません、ウルフさんに気づいて飛び出してしまって…」

「いや、構わんよ、それより久しぶりだな、咲夜。」

その様子を見ていたレミリアが口を開いた。

「そういえばウルフ、貴方その指輪まだ付けているのね?」

「…皮肉か?」

「いいえ、ただ、嬉しいの。」


帰還。


──ふと、気配を感じ、振り向くと八雲紫がいつの間にか後ろに立っていた。

「あらあらモテる男は大変ね」とほざく。

「ふん、もう仕事が終わったのか。」

「あら、悪いかしら?」

「知るか。すまんなレミリア、フラン。お暇させていただこう。」

「ええ、話せて嬉しかった。」

「お兄様。また来てね!」

 恐らく、屋敷を出れば隊員たちから質問攻めに成るのは予想着いていたが─これは予想外だ。

パシャリパシャリ!

「うっ!」

「英雄、舞い戻る!これはいい記事になりそうですね。」

「次はなんだ…!」

「銃をおろせカムシア。…またお前か…射命丸…文」

「またお前とは失礼極まりないですね!あっ、申し遅れました!清く正しい射命丸文です!今後ともよろしくおねがいします!」

少女は少し間を開けて再び口を開いた。

「ウルフさん久しぶりです」

「ああ…あの時以来だな」

 あの時の思い出を思い出しながら私達は博麗神社にむかう。あの時通った以来だがまだ道を覚えている。

14年前はツルツルとしていた岩には苔むして居て、時の流れを感じさせた。

〈あの子達〉は元気だろうかそう思うと自然と足が速くなる。

─30分程度で博麗神社に着いた。しかし私には待ち遠しく、二時間にも感じられた。

「…………………」

「どうしたウルフ」

大丈夫だと言おうとしたがその前に「貴方たちは誰!」と鋭い声が聞こえた。

まさかと思い後ろを見れば二人の少女が立っていた。


彼女たち


「此処は博麗神社だ!その賽銭箱を盗んだってなんにも入ってないぜ!」

「ちょ!あんた何言ってんのよ!」

「だって本当のことだろ〜」

ともう一人の少女は茶化すように言う

「……はあもういいわ。その格好、外の人間ね。迷ったの?」。

「へぇ外の人間だなんてなんて久しぶりだな!何でこんな貧乏神社に…」

私は無意識のうちに口を開いていた。

「もし違ったら申し訳無い…もしかしてだが霊夢…博麗霊夢か?」

「…え……何で私の名前を?」その場にいた人間全てが凍り付いた。

「…やはりか……大きくなったな…あんなに小さかった君が…」

「マスター……?」とアサシンが心配そうに聞く

「済まないな…失言だった」

「お前…霊夢とどんな関係だ?」

「………」

「出来るなら答えてくれないかね?」

「君は…魔理沙、霧雨魔理沙かな?」

「マジか。私の名前まで!」

「…君達の先代と個人的にな…君等が赤ん坊の時さ。」自分でもこんな言葉がでるなんて驚きだった。

「そう…良かったらお茶してかない?色々ときかせてよ。」

「…遠慮なく」


真実


 茶飲みが15分ほど経ち私は外に出た。自分も一緒に。と言うアサシンに大丈夫だと強く言って私は障子を開けた。

「………紫…いるんだろ?」その答えはすぐに出た。

「御名答。鈍らにはなってないのね。」

 何故連れてきた。その問いは予想されていた。

「今貴方の世界で戦争そして感染症が流行っているわよね?」

 何故知っている?これの問も予想されていたらしかった。

「もしかしたら幻想郷のせいかも知れないから。」

「なに……」

何故だ此処には入ることも出ることも出来ない。結界が張っているはずだ…そう聞くと

「パルシィや青娥やヤマメ達が居ないのにお気づき?」

私としたことが…失態だ。

「件のbc兵器は彼女たちが…まさか…」

「恐らくパルシィが洗脳されたか彼女の意志。けど今は他言無用ね。そして今は忘れて。作戦会議中に私から説明するわ。」

「あぁ、了解した。」

私はできるだけ顔に出さないように中に戻った。だがアサシンは何かに気づいたようだが。

「各員15分後に出立だ。霊夢、魔理沙。改めて、大きくなったな…いつかまたゆっくりと話そう。」

「…いつか、私の母親…先代の事も話してくれる?」

私は強く頷いた。

「いつか、必ず。」


──私の旧友との出逢いもあり予定より大幅に幻想郷回りに時間を費やしてしまった為に休養を取ることにした。

 

 その旧友の一人、さとりが気を効かせて温泉の一部を貸し切ってくれたのだ。

「──温泉に入りませんか?埃を落とした方が任務も遂行しやすいでしょうしね。」 

「しかし…かなり遅れてしまっているからな…」

「まぁいいじゃねえか。贅沢の極みは人間の特権よ。」と飛びついた。もはや宥めることは不可能だ。

 そこからは早かった。温泉の支度を恐ろしい程、予定していたかの如くのスピードで事は流れた。

温泉内は観光している間に再会したものも居てにぎやかである。

「なぁ、酒飲めよ。今夜は招集無いだろうし。」

 温泉内で酒を飲むなど贅沢の極みだ。実に魅力的だ。

しかし私は万が一を考えて、酒はいらん。ときっぱり拒否するとカムシアはつれないな、と言いつつ諦めた。

この物分かりの良さが私が部下として見捨てない理由の一つでもある。

─女性陣からひとりアサシンに近づいてきた。

あれは…何故かアサシンの偽装という特技を興味津々と聞いていたこいしだろうか?

「アサシンさんこのあと、こいしに少し付き合ってよ。色々と遊ぼ!」とアサシンに話しかけている。

するとベクターをはさんでさとりがこいしに妖艶な声で忠告していた。

「コラコラこいし、抜け駆けは許しませんよ?」

「あ!お姉ちゃん近すぎ!」

「貴女も言えた口じゃないでしょ」

アサシンは少し困った顔をこちらにむけてきた。

「カムシア。助けてやれ。」

「コードネームを使うっていうことは任務だな。了解。」

 可愛い部下を助けるのは上司の役目たることは重々承知の事だが、私は人と話すという事が殊の外苦手なのだ。

そういう時、カムシア、もとい高橋は便利だ。対人交際能力においては多目的に動けて、機動的だ。

──とはいえ私も誰とも話せないわけではないのだ。幻想郷の住民には気楽に喋れる。特に隣の少女には。

「いやはや、やはり温泉はいいな」隣の白銀の髪の少女が話しかけてきた。

「…ひさしぶりだな妹紅…」

「コノ…いや、ウルフ…本当にひさしぶりだな。…私にとって数年など一刻にも満たない程なのに、近衛と離れて居るこの間は永遠にも感ぜられたよ。」と彼女はとびきりの笑顔を見せた。だがその笑顔もすぐに消した。

「それはともかく、お前さんそしてお前さんの仲間が一緒に来たということは…何かあったの?」

「あぁそうだ詳しくは後に説明する」と問に答えた

「了解。楽しみに待ってるよ。」短い言葉を交わし私は妹紅と分かれた。

彼女が言うには、私と彼女は心で繋がっているのだそうだ。


説明と覚悟


至急作った天幕の下で今回我々が幻想郷に来た経緯を簡単に説明した。

「…あんたらの状況は分かったが、何故幻想郷なんだ?」勇義が腕を組むとほぼ同時に最後方に紫が現れた。

「それに関しては、私が」

「あんた!?」

「八雲紫!?何故…退治されに来たの!?」

「落ち着いて霊夢、わたしは今回は何もしない。」

「そうだぜ霊夢、今回は静かに話しを聞いた方がなんだか良さそうだぜ。」

魔理沙からの説得も有り、霊夢も落ち着きを取り戻し八雲紫の説明に耳を傾けた。

 八雲紫は感想ながらも的確に例え、万人に分かりやすく説明した。我々ならば不可能だったであろう。

「なるほど…説明は理解しました、ですが私達には一つだけ問題が」

狼の様な耳と尻尾を持つ少女の問に、カムシアが答えた。

「ほぅ…何だいお嬢ちゃん」

「お嬢ちゃんじゃありません!私は白狼天狗の犬走椛です!」

「ほぅそれは失礼したお嬢ちゃん?」

「この!」

私は苦笑いしながら仲裁に入った。

「まぁ待て喧嘩は会議のあとにしてくれ」

「そうですよ!話がズレてしまいました」

「すまんすまん、お…」

途中で変に途切れたのは、カムシアがお嬢ちゃんと言おうとしたところ椛と私に睨まれたからだ。

「…えーと、私達に問題があるとこまでは言いましたよね?」

すかさず相槌を打った。

「あぁそうだ。」

「実は、私達は此処では少し弱体化しているんです。」

私は無意識に何故?という問いかけが顔に出ていたらしい…例えガスマスクを付けていても、見抜くのは彼女には容易いことだが…

「残念ながら理由はわかりません。私達は新たな異変かと思っていたんですが、違ったみたいですね。」

霊夢はそれに続き「全く、飛びづらいったらありゃしない!」

その場に居た全員は少し顔を緩ませた。

「それに関しては後々何とかしよう、質問?」

 我々自衛隊という組織では簡素に質問という。いちいち律儀に質問ありますか?などとは聞かない。

その為、幻想郷の住民は戸惑っていた。ナイトアイが手を上げた。「当分の目標は?」

ありがたい。質問への道を架けてくれた。

私は少し間を開けて答えた。

「韓国奪還だ」

「奪還するには揚陸艦や掩護射撃が必須ですが、自衛隊にはどれも不足しています。どうするのですか?」

「それに関して一つだけ心当たりがある、安心してくれ。」この質問の後、それぞれから今後の事などの質問がどっと押し寄せた。ナイトアイには本当に感謝している。

 質問が途切れたころ、私は自らと隊員に問うた。どうしてもここで言いたかくなった。

「…此度の戦、諸君に期待している。私にとっても日本にとってもこれを最後の戦にしたい…だが私はこの戦い、正直ここに居る隊員全員が生き残れるとは思っていない…だがそれでもこの中に日本を護り、故郷を護り、友や家族、それを護るため諸君の命、私にくれその覚悟が有る者は…一歩前に出てくれ」

この言葉を聞いた全員が前へ出た、驚くことに幻想郷の者までも前に出た、全員が凛とした表情で死の恐れなど無いかのように…


「─あんたには、アタシらの命以上の恩が有っからな、ここらで返さにゃ返せんのよ!」


二人、女性が入ってきた。「八千慧、早鬼、何故」

「あたしらは、義と仁を重視してるんだ。なら此処で恩を返さんと義を貫けんのよ。のう、八千慧」

「ウルフ達への恩だけれどね。しかた有りません。手を組みましょう。」

「すま…」

「オット、謝ってくれるなよ。」

「」ならば、感謝するのは良いだろう?…本当に、有り難う。君達に救われる。」

私は最後にこの言葉を早鬼や八千慧と全員に伝えた。

「諸君ここにこの言葉を下命す。我が国と幻想郷の荒廃この一戦に有り!各員一斉奮励努力せよ!これにて説明会を解散とする、明日から忙しくなるぞ、休める時に休め。各員気を付け!敬礼!」

 私は壇上をゆっくりと降りた。出来ることなら二度と登りたくないものだ。


《戦争参加を求める為の壇上になど。処刑台も良いところだ。》


「私にとっても日本にとっても…か…少し失言だったか…」

壇上を私は誰にも聞こえない小声の独り言口にした。

あの言葉に、カムシアは深く俯いたが。



我が師の提案。


 今夜は何処で就寝するのかというトラブルは有ったが紅魔館の主レミリア・スカーレットが解決した。

だが紅魔館にもやはり収容可能人数が有り、いくら詰めても残り一人分足りない。流石に成功が確定の交渉とはいえ、交渉者が野宿というのもよろしく無い。誰が他で就寝するのか心配したが、師匠であるウルフが他で就寝すると提案した。

 自分が他で就寝可能ですと提案したが、お前にはあてが無いだろと真っ当な事を言われ引き下がったが、それでもマスターにはあてがあるのですか?と問うと、妹紅あたりが恐らく泊めてくれるはずだ。と言い闇夜に消えていった。

 やはりマスターはここに来てから柔らかくなった気がする。



思い出の話


「妹紅の家はここら辺だったはずだが…」

と周りを見渡していると、誰かが話し掛けてきた。

「よう」と言う声と共に声の主が姿を暗闇から現した。

やはり妹紅である。

「やっぱり来たな。」

「何故分かった?」その問いには妹紅が歩きながら答えた。

「お前のことだ。あの人数なら例え紅魔館だとしても貸し出せる部屋は満員だろう。そしたらお前があてが有るここに来ると考えることが出来た。っと、言った所さ。どんなもんだい?」

「そうか…」まさかそこまで勘付かれるとは…思っていなかった。

色々と今後を思案して居ると、すぐに妹紅の家に着いた。

妹紅が「慧音~帰ったぞ~」と言うと足音が近づく。

「あら妹紅、珍しくお客さ……まさか…貴方は…」と私に気づいたようだ。

「あぁそうだ。いや、ただいま先生。」

──ひさしぶりに再開した慧音に縁側に案内された。夜空にはとても月が美しく光を放っていた。

「…良かった皆息災だな。」

「あぁ、お前の頑張りの成果だ。」

「私は何もしていない。…しかし、月を見るとあの頃を思い出す。」

「私達が初めて出逢った頃か?」

「あの頃私は兵器として生まれ殺戮だけを教えられ、文字も読めなかった。慧音が居なかったら人間でも、兵士でも無い、人の形をした、生物だった。」そこまでいい終えてから煙草をふかした。

妹紅がいいな私にもくれよ、と言ってきたので煙草を渡し、ライターで火を付けようとしたが、オイルが入っていない。

仕方がないので私の煙草の火を彼女の煙草に移した。

 火を移している時、少し妹紅の顔が紅った。まだ人の心が分からない。いや…読めない

そして仕事を済ませた慧音を含め、思い出話に花を咲かせた。



非戦闘排除 12月8日

 

 幻想入りしてから初の任務が下された。占拠された石油プラットフォームを奪還しろとの命令だった。

ブリッグは初陣に対する緊張、そしてようやく戦えるという興奮がブリッグを支配した。

 作戦はふたつ立案された。


Α案は潜水艦から潜入の後に下からの突入。B案は攻撃ヘリの支援を受けながらヘリからの降下の強行突入。


今回は前者が選ばれた。理由としてはこの石油プラットフォームはかなりの重要拠点で石油はもちろん。敵がバイオ兵器の保管場所としているからである。恐らくγウイルスや新型バイオ兵器も保管しているだろう。攻撃ヘリでの掩護は保管庫を傷つけかねない。よって前者が選ばれた。

「回収は屋上のヘリポートだ、質問。」

何も質問する声は無かった。

「では、各員行動開始」

作戦に参加する者はウルフ、アサシン、ブリッグ、グリック、バーサの5名となり、部隊名はゴーストとなった。




20:00日本海にて

 私はいつしかどこかの施設での戦闘の最中にいた味方はもう私しかいない、ここまで生き残った仲間の二人もすぐに死んだ。

私も死ぬ。そう感じ、涙を流した。「軍人」となってから初めて「仲間」と呼べた兵士を亡くした。

彼等の怨みを晴らすことさえ出来ずに、私はもう戦えない。どうしようもなく敗北感が襲った。

 その時、上から白銀の髪の少女が降下してきた。

何故と思った、彼女は他の兵士と共に退避させたはずだった。

「友を捨てては行けないんだよ少年」


──ふと、私は目を開けた、そこはかつての敵国たるアメリカ海軍潜水艦の内部だった。

「我々は作戦地域内に潜入中敵からのレーダー照射は確認されず、敵さんサボってんじゃないのかね」

艦長の敵を嘲るような態度にはムッとしたが、出来るだけそれを隠して私は艦長に対し問いかけた。

「潜水艇に乗ってからプラットフォームまでの時間は?」

「20分程だ。」

「了解。」

 今回の作戦はヘリからの掩護は緊急時を除いて殆ど無い。その代わり、妹紅、椛、優曇華の掩護として作戦に参加してもらった。

また心苦しさに悩まされるのかと、私は肩を落とした。


状況開始


25分ほど潜水艦艦長が口を開いた。

「プラットフォーム付近に到着。ゴッドスピード。」

 我々はもうダイビング装備で固めていたので、すぐにハッチを開けてプラットフォームにむけて泳ぎ始めた。

隊員達は水練を極めていたお陰で出立から数分でプラットフォームにつくことができた。

 

──まず見張りだな…


 私は手だけで水中で仲間に合図した、すぐさまナイフ抜き見張りの足を引っ張る。海に落ちた見張りの首にナイフを刺した。

しかしここで問題がある。サメだ。サメは血の匂いに集まるので素早くプラットフォームに上がらなければいけない。

その為には呼吸を合わせて見張りを一網打尽にしなくてはならない。しかし、その心配も虚しく近くの仲間も同様の行動をとっていた。ハンドサインで合図したとは言え、ここまで完璧にこなすのは自画自賛だが、神業に近い。


──まずは1階からだな…


 私は酸素ボンベからガスマスクへと付け変え、突入に備えた。施設中に入る為のドアに左に私とブリッグそしてバーサ、右にアサシンとグリックという配置に付き素早く突入する。私が先頭で突入し、バーサとグリックは突入せず援護に回った。我々に気づいた3人の警備員がこちらに気づいたが、構える前に射殺した。相手は警備を疎かにしていたのが幸いだった。

 

 このプラットフォームは一階はコントロールルーム、二階が研究室3階が警備室兼乗組員室、屋上にヘリポートとなっている


 まずは一番大きな部屋であるコントロールルームに突入した。

──ここを奪還するためには、第一にこの部屋のコンピューターを奪取する必要があるのだ。

 突入した室内の乗組員は気づいたようだが確実に射殺していく。罪悪感は有るものの兵器になってからは覚悟の上である。

室内をクリアリングし終えるとハッキングの作業に取り掛かった。

「ブリッグやれ、掩護する」ブリッグを除く我々はこの部屋の唯一の扉に銃を向けた。

ブリッグはすかさず「了解」とだけ言い作業に入った。1分ほどでハッキングは終わった。

彼が言うには、簡単過ぎて欠伸が出るらしい。

「消火装置を作動しろ。二酸化炭素でパニックを起こせ。バーサはここでブリッグを護衛。それ以外はついて来い。」

「了解」「了解」「了解」「了解」

 

 我々は階段をこそこそと上るのではなくカンカンカンと金属の階段特有の音をけたたましく鳴らしながら階段を上った。消火装置の作動音が足音を圧倒的に凌駕していて、しかもパニック状態と有ってはまともに警備も出来まい。

 理由はそれだけでは無く、二階は大きな研究室になっているので制圧は素早くこなさなければいけない。とはいえ、逆に言えば相手側は隠れる場所は殆ど無いのだ。

 扉の前で再び突入時と同じ配置に着く。

 ハンドサインで3秒後突入。と合図すると対面しているアサシンは頷く。

3 2 1 GO。我々は一気に突入していく。まずは銃を向けてきた警備兵に射撃する。次に悲鳴を上げながら背を向け逃走しようとしていた研究者に私は反射的に5発指切りで撃った。

──私は殺気を感じ奥を見ると、警備兵は私を狙っていた。気づくのが遅れていたら危なかった。

「クッ…!」タンタンタン!

 黒の軍服を紅に染めてその警備兵は倒れ、深紅の血を流した。我々はあまりにも直接的なグロテスクを直視した。

─その刹那、背後から銃声が鳴った。背中に強いショックを感じ、倒れ込んだ。

「伏せろっ!」怒声にとっさに遮蔽物に隠れる。しかし銃声が止まった。恐らく彼が持っていた銃は重厚な銃声からしてAKシリーズだ。弾切れなはずがない。

 我々は扉付近に向け銃弾を放った。何発かが壁を貫通したらしく、斃れる音と共に血が流れる。

自分達の損害は私が被弾したのみであった。

幸い銃弾は防弾チョッキで止まっており、作戦に支障は無い。


Silence

Violence

Silence ……か


 その後銃声に気づいた兵士と3階で交戦したがコントロールルームにいる二人から報告が回っていたし、それに加えて二酸化炭素中毒によって死亡していた兵も居る中で敵兵はまともな反撃も出来ず殲滅された。こちらは戦闘不能になる程の負傷をせず突破、難無く制圧した。

「残りは屋上だけですね…」 とブリッグが覚悟を決めた顔をガスマスク越しに向けてくる。

アサシンは三階での戦闘で頬から血が流れているが、闘志は万全と言う意志がガスマスク越しに伝わってくる。


 コントロールルームの二人もカメラ越しに闘志が伝わってくる。私は心強い限りだった。

 私は屋上に繋がるドアをそっと、少しだけ開けた。そこにはヘリから兵士がラペリングして続々と降りてくる。ヘリに気づかなかったのは恐らくヘリが無音モードだったからであろう。

「…まずいですねスティンガーすら有りませんし…」

 アサシンのため息混じりの呟きはもっともだった。

 思わずため息が出てしまった、あまりこの手は使いたくなかったのだが…と無線を手に取った。

「すまんヘリを撃てるか…」

「お任せあれ。」


「─全く、ようやく出番が来ましたよ。ウルフさんは私達を戦闘に参加させたく無かったんでしょうが…」

 椛のやれやれ、といった伝令に優曇華は狙撃姿勢に入った。

─だが彼女の手にはライフル無い、彼女の能力で狙撃するのだ。

ヘリに向け拳を作り人差し指をヘリに向け、親指を上に向ける。まるで子供が遊びに使う指鉄砲だが、彼女は本当に弾が出る。実弾では無くエネルギー弾だが。

「妹紅さん、射撃準備出来ました。他に指示は?」

問われた妹紅は一瞬目を閉じ、指示を放った。

「弾種を炸裂弾にしろ確実に、そして早く破壊可能だからな」

「了解」そう答え私はヘリに対し放った、弾丸が少し逸れてしまったが炸裂弾だった為、ヘリは墜落した。


 目の前のヘリを光が貫き「ガシャッ」と音を立て、まだラペリング中の兵士と共に撃墜された。

アサシンは目の前の事態をあまりにも現実離れし過ぎていて理解出来なかった。

「行くぞ」我が師匠のその言葉でハッと戻った。

 師匠が勢いよくドアを開け、ルーフファンに身を隠して弾丸をばら撒いた。自分はウルフの右のルーフファン、グリッグは左のルーフファンに隠れた。ウルフが愛用するM P 5 の貫徹力を上げるために新造した弾薬、ホロー徹甲弾がヘリが墜落した海面を眺めて硬直していた敵兵を襲った。


チェックポイント ホロー徹甲弾

(このホロー徹甲弾はホローとは付いているものの同じホローが付くホローポイント弾の様な体内を切り裂く力は無い。ホローポイント弾の欠点、それは厚着して居ると貫通力が上がってしまうこと。そこを逆手に取り生まれたものがこの対防弾チョッキ用弾薬、ホロー徹甲弾である。しかし、貫通力が上がったことによりストッピングパワーが下がってしまった。

貫通力が上がった方が強いのではないか?普通は思うだろうが、銃弾は体内に残った方が身体に対するダメージは大きいのだ。

しかし防弾チョッキを貫通するかしないかでは、やはり貫通した方がダメージは高かろう。

余談だが、ウルフのMP5は五.五六ミリ弾も撃てる様にシステムウェポン化されている。)


 当たった3名の兵士が崩れ落ち、海面へとおちていった。敵兵も馬鹿では無い為、我々に気付きこちらに発砲する。

そこに自分が手榴弾を投げる。一瞬にして4〜5名が斃れる、恐らく即死だ。左から敵兵が出現したが、グリッグの射撃で倒した。

見える限りの敵兵は居なくなった。それでも警戒は解けない。


─警備は正解だった。


 目の前に大型の敵兵が現れた。我々を認めるや否や我々に発砲し、《ガーーー》と前までの敵兵の持っていたアサルトライフルや MGとは似ても似つかない銃声が鳴り響いた。

「クソ!伏せろ!」と師匠の必死の声も銃声で掻き消された。

「おいおい…あのパワード・スーツは試作品だったはずだ!」とグリックの怒りが隠せない声が届いた。

「グリックとアサシンは私を掩護しろ!」奴に対し弾丸を浴びせながら、奴の後ろのルーフファンの後ろに隠れた。

5.56ミリ弾でも貫通しない装甲にひんやりと冷たい汗が背中を流れた。

──まずい…万事休す。これではジリ貧だ。

 突然、無線から声が聞こえた。「掩護します!」と同時に光が敵兵を貫いた。しかし致命傷には至らなかった。敵兵は倒れず、周りに無茶苦茶に射撃した。だがその一瞬の隙を突き、師匠は後ろから近づいてナイフを逆手に持った右手首を首の下に入れて相手を固定し右足で相手の左足を蹴って転倒させた。そして、優曇華の射撃の衝撃で装甲が剥がれた首にナイフを突き刺した。 



私は敵兵を斃し、無線を司令部に繋げた。

[こちらゴースト感送れ。]

[こちらHQ感良し感。]

[感良し感。HQコチラゴーストワン、報告目標地点を奪還。P Pにて待機する、オクレ]

 

P P=ピックアップポイント


「了解、現在戦闘員を乗せたブラック・ホークをそちらに向かわせている。到着は15分後、オクレ。」

「HQコチラゴースト了解、終わり。」無線を切り部下に顔を向け「二人を回収してくる」とだけを伝えた。

 やはり愛弟子のアサシンでさえも疲労困憊して居るらしく、頷くだけであった。

一階に降り、二人に屋上に行くぞと伝えた刹那。

「うぁぁぁぁ!」

 叫び声と共に銃弾が飛んできた。

すぐに壁に隠れ、バーサが携帯していたコルトハイパワーで応射し、見事な腕前で3発で敵を斃した。──が。

「まずいです分隊長!敵の弾が生物兵器の培養槽に…!」見れば、培養槽に亀裂が入っていた。

─そして動き出している。

「不味いな…五分程度で動き出すぞ…」

クソ…あの記憶が…蘇る…

「とりあえずクレイモアを置いて撤退!二階で防御を固めるぞ!あと防衛設備か何かあるだろう!起動しろ!」

「了解!」

[司令部!化け物が目を覚ました!ブラックホークからの支援射撃と攻撃ヘリを要請する!終わり!]

 我々はクレイモアを設置し、やはりこの様に収容が解かれてしまった事を警戒して設置されていた自動ターレットを起動した。

──3分後クレイモアとターレットの作動音がした。

化け物の様子を監視カメラで見ていると、ダメージはなんとなく与えられてはいるがターレットは発泡スチロールのように破壊された。そこから化け物が眼の前に姿を現したのはあっという間だった。

「撃て!」

射撃音が鳴り響きターレットまでも射撃している化け物は、肥大化した右腕でガートしながら突っ込んできた。

「避けろ!」と叫ぶと同時に全員が伏せた。

──いかん!この調子では殺せん!なにか策は無いのか!

「各員撤退!手榴弾を投げろ!」各自投擲の後に発砲をしながら後退を開始した。

─残弾がかなり少なくなってきた。



「──はぁはぁ…まだか…まだ死なんか…」と吐き出す様に声をだした。

 私はリロードを始めた。かれこれ30分以上戦闘を続いていた。ヘリからの掩護はヘリ側の残弾数がゼロになりヘリは離脱した。補給弾薬と戦闘員を置いていってくれただけ有難い。


──その時、狙いをアサシンに定めた化物が尖っている左腕をアサシンに突き刺そうとしていた。


クソッと声を出しつつ、反射的にベクターを押し退ける。

──ここで逃げたら、奴等と奴に合わせる顔がない。

ベクターを押し退けたら私も避けるつもりだったが、避けれず脇腹に冷たく、熱い物が刺さる。

「ッ…グウゥ!」と痛みで視界がフラッシュする。

 私はMP5を化物の顔に向けた。

「グッ!…ウオォォォ!」と獣の様な咆哮を挙げ、フルオートで弾倉が空になるまで引き金を引く。

 化物は悲鳴を上げ私ごと腕を振り回し、遠心力で吹き飛ばされる。

着地の時に受け身を失敗して頭を強打。意識が遠くなる。

クソッ……意識が…これじゃ回復が………………



「───リーダー!」

 バーサは引き金を引き続けた。しかし、化物は息も絶え絶えながらもウルフにとどめを刺そうとして居る。助けに行きたいが此処からでは間に合わない。

─だが不可思議なことが起きた。

紅蓮の炎が矢となり化物を貫ら抜いたのだ。アパッチのミサイルではない。

「援護してくれ!」

 ウルフに駆け寄ったとき、驚くことに化物は生きていた。共に駆けつけたブリッグとその他の隊員達と共にアサルトライフルのマガジン一箱分頭にぶち込みついに斃れた。だが炎の正体がわからないまま私達はヘリに回収され、ウルフは自衛隊病院に送られた。



病室



 869号室の前でアサシンが一人、椅子に座っていた。

「なんだまだ居たのか、隣いいかな?」と一人がベクターに声を掛けた。

顔を上げると、師匠に妹紅と呼ばれた少女が居た。

「あぁ、どうぞ。」と自分でも驚いたほどのかすれた声が喉から出てきた。

 妹紅は隣に腰掛けた。

「ありがとさん──お前さん、仲間は皆帰ったぞ、良いのか?」

俺は頷いた。そして、少し間を開けて自分から問いかけた。

「…貴方はマスターのことを心配にならないのですか?」

その問いに、彼女はしばし考え込んだ。

「う〜む、まあ君ならいいかな?出来るだけこの話は彼から言うべきだし、内緒で頼むよ?」

「お願いします。」

「即答だね。」

 眼の前の少女は微笑んだ。しかし、少し引きつった様にも見えた。

「…あいつは回復能力が他の人間よりも高い。ただ高いんじゃなく損傷や欠損した器官さえ修復出来ちまう。そして気が遠くなるほど長く生きているんだ。…信じられないだろうがね。」

 彼女はだが、と思い出した様に続けた。

「弱点もある。気を失うと修復出来なくなる。そして…死ぬ、今回がそれだな。」

なら、と疑問が増える

「ならなぜ…マスターは気を失い、身体の修復出来ない…それこそ不安にならないのですか?」

少女は少し間を開けて話す。

「あいつは生きて帰って来る。…それを感じる…否…それが分かる。何故とは言うな。私とて説明出来ない。」

 俺はため息交じりに声が出た。

「マスターは強いですね…たどり着くのは自分には…いや我々には無理ですね…何故マスターは戦えるのでしょうか?」

「憎みさ」

「え…」

「ずっと昔、やつの嫁さんが戦いに巻き込まれて死んだ…奴は衛士であったのに護れなかった事に酷く自分を責めている。憎みだけがあいつを動かしているんだ…もう何百年いや、千年くらい前の事さ。」

 彼女は少し懐かしむように間を開けて続けて話す。

「あいつの嫁さんは武芸に長けていた。戦場で共に背中を合わせて戦っていたという逸話も有るほど強い女性だったな…だからかな、彼女の最期もそれは凄まじかったさ。」マスターが千年生きている事も驚きだがそれを聞いてまた疑問が増える。

 妹紅とマスターはどんな関係なのだろう。俺は耐えきれずに尋ねてしまった。

「それはあいつから聞いてくれ。」

「分かりました。…もし、マスターの目が覚めたら、申し訳なかったです。とお伝えしていただけますか?」

「勿論だとも。さぁ行きな。」


──マスター。話を聞かせてくださいよ。必ず。




弟子


 アサシン君が居なくなった事を確認して、私は病室に入った。

ウルフと二人きりになった病室で独語の様につぶやく。

「お前は良い弟子を取ったな」返事は無い。

「安心しな、もうあいつは帰ったぞ」

ウルフはゆっくり目を開け、口を開いた。

「そうか…ゲホッ…ゲホッ…クソ、久…しぶりの受傷だ…また痛みに…馴れないとな。情けない…鈍ったものだ。」

「そうだな、手伝ってやろうか?」

ウルフは苦笑いしながら返した。

「いや、結構…」

「ふっ、そうか…皆待ってるぞ。特にお前の弟子がな。今にも泣き出しそうだったぞ早く治せ。」

「善処するさ…」ウルフは苦痛に顔を歪めながら苦笑いをした。

「一昔前にこんなこともあった。覚えてるか?」

「…そうだな懐かしいな」

それを聞き、病室のドアを開ける。

「またな」

「あぁ」


─息も絶え絶えに言った最期の言葉を思い出す。

〈あの人を…私の代わりに…助けて…そして伝えて…愛しています…そしてこれからも…愛します…と〉


「大丈夫。伝えたよ…だけど…この有り様じゃ、守れないよ…」私は病室の前で膝を抱えて泣き出してしまった。

「もっと…早く助ける事が出来たかも知れない…ごめんね…」


10日後の生還


帰ってそうそうこれか…

「師匠ー!」「お兄様ぁ!」とくっついてくるベノムとフラン、そして信濃を剥がす。

カムシアも「帰って来たか!この死に損ない!」と背中を叩いてくるが、この痛みも久しぶりだ。

「待たせたな…もう少し休みたかったが。」

──アサシンが視界に入った。

「アサシンお前、怪我は無いか?」と問う

「マスターの…おかげで…」とほんの少し震えた声で答える。

 その声に一安心して胸を撫で下ろした。

あぁ…誰も負傷しなかったか…少しは《あいつ等》と《あいつ》の約束を…守れたのか。

「…ただいま」









あとがき


 まず第一に《小説家になろう》での初投稿をここまで読んでいただき、本当に有り難うございました!

この小説は小学生6年生の頃、同じミリタリーヲタクの戦友と書いたピクシブ小説を少々手直しした小説となっております。(それでも駄作なのは目を瞑って頂いてもらいたく…笑)その為、幼稚な箇所が多く存在しております。そんな小説をどうか見捨てずに、これからも見て頂けると幸いです。これからも、よろしくお願いします。

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