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オレがお前でオマエが俺??? 〜異世界騎士物語〜

作者: 柱島

「うおおおおお・・・・・・っ! また、また・・・・・・」

「受かったの?」

「落ちたんだよ!!!」

「うーん。やっぱり平民が騎士になるのはムリなんじゃない?」

「いや、きっと気合が足りなかったんだ! 面接で噛んだし・・・・・・」

「あたしは気合だけで騎士になれるとは思わないけどなあ」

「そんな事は無いはずだ!! 町の入り口で毎日毎日ぼんやり突っ立っているだけのランドルフおじさんだって騎士位なんだぜ? 気合やヤル気だったら俺の方が上だっつーの!」

「それだけじゃーね・・・・・・」

「んだよ!」


「ふふふ。俺は何としても騎士になるんだ! 月給45万ペセタ! 特別給付金に戦争報酬金。あんな無精ひげに欠伸ばっかりしているランドルフおじさんだって務まるんだ。余裕だぜ」

「お兄ちゃんバカな夢見てないで麦の収穫手伝ってよ」

「バカとはなんだ! 将来の騎士様だぜ? 麦の収穫ぅ? ヤダヤダ、これだから庶民は」

「お兄ちゃんも庶民じゃん。騎士になりたいっていうのはイイ事だけどさ」

「我が愚昧にしては理解が早い。誰にかしずくか理解して―――」

「でも気合いだー、ヤル気で満ちてるぜーばっかりで何も努力してないじゃん。得体のしれないガキンチョなんて騎士団さんたち相手にしてくれないよ?」

「はぁぁぁあああああ~~~~~ッ??? なにオマエ、舐めてんの?」

「痛いッ!! おにいのばかぁあああああーーーーーーッ!!!」

「このっ!! あっ、クソ!! 逃げ足の速いヤツ!!!」



「ああーーーーッ!!! また、落ちた・・・・・・マジふざけんなよ!!!」

「このクソッたれ!!」

「え、壊れ、やべ落ち・・・・・・―――」


『いたたた・・・・・・階段から滑り落ちるとか。歳か・・・・・・』

「いてぇ・・・・・・は? なんだ? なんで俺の中から声が???」

『え?』

「え? もしかして」

『オレたち―――』

『「混ざり合ってる――――ぅ!?』」

『だ、誰なんだキミ!?』

「オマエこそ誰なんだよ!! 俺ン中から出ていけよ!! 気持ちワリィ!!」

『む! なんて口の悪い!! オレの名はタドコロ ソウジュウロウ36歳、ただの会社員だ!!』

「勝手に人の中に入りやがって!! 俺は騎士になる男イゼリア・キカン・ユウコットだ!! バカヤロウ!!」

『そうか! えらく若いな!!』

「うっせえ!! 15歳でも大人だ!! バカにしてんのか!!」

『いや、若返ったみたいで少し嬉しい・・・・・・』

「・・・・・・」


『「なるほど。状況はよく分からんが、オレがお前でお前が俺ってことか』」

『これが異世界転生』

「なんだそれ?」

『いや、気にしなくていい。都市伝説みたいなもんだし』

「?」

「あーッ! やっべえ!! 青の騎士団の試験すっぽかしちまったじゃねえか!!」

『騎士団? 騎士になりたいのか?』

「そうだよ! なんだ、アンタもバカにすんのかっ!?」

『良いな。夢があって、夢に向かって突き進めるのって』

「え?」

『立派な事だよ。好きなものになりたいとか目指せるのって』

「あー、うん? あ、ありがと、よ」

「オッサンは無いのかよ」

『オレには、そんなに熱い気合とか無かったから、さ。何となく生きて、何となく会社員になって、何となく生きてるよ。あれ? 死んだのか? これ?』

「ふーん。カイシャインってのは誰でもなれるのか?」

『どうだろう。オレは家業を継いで農家になるっていう道もあったけど、きっとそれはやりたくなかったから少しは頑張ったのかもな』

「・・・・・・」

『オレは子どもん時はパイロットになりたかったんだ。でも、努力しなかった』

「パイロット?」

『こっちの世界には無いのかな? 空飛ぶ機械を操って、空を駆ける職業さ。親父に乗せてもらった飛行機がカッコよくてな』

「いいな、それ。でもなんでならなかったんだ?」

『オレは将来パイロットになるんだ。オレの想いはこんなに熱いんだって思ってた』

『思ってただけで、何も努力しなかった。何が必要で、どうやれば良いかなんてこれっぽっちも考えなかった。気合とかヤル気だけしか持ってなかった』

「―――っ」

『だからダメだった。そうだよな。気合とかヤル気だけで夢が叶うなら、みんな夢が叶うもんな』

「・・・・・・どうやったら、夢って叶うんだ?」

『そうだな。知ること、行動に起こすこと。それから毎日の地道な研鑽かな』

「・・・・・・」

「例えば。例えばだぜ・・・・・・ヤル気に満ちているけど、なりたいものになれないヤツがいたとして。どうしてもなりたいものがある場合、そいつはどうしたらいいと思う?」

『そうだな。何が必要で、何が自分に足りないか知ること。それから不格好でもいいから行動に起こすことだ』

「行動、に」

『オレの友人に漫画家、ああ、えっと絵かきになりたいってヤツがいたんだ』

「うん」

『立派な道具を揃えて、いい机を買って、評論家気取りで色んな作品にケチをつけてた。でも、自分では一切何もしなかった』

「・・・・・・」

『どうなったのか知らないけどさ。少なくともなれなかったんだなって事は分かる』

「どうしたら良かったんだ。そいつは」

『ミミズの走ったようなダサい絵でもいい。とにかく描けば良かったんだよ。なんのかんの誰かを批評するヒマなんて無いんだから』

「そっか」

『一歩一歩歩み続けてれば花開く事もあるさ。開かなくても、きっとそれは何かの役に立つ。あとは運だ』

「運?」

『ああ。その時その時の運がある。運も実力のうちとかいう言葉もあるけど、オレはそうは思わない』

「なんでだ?」

『実力なら運を操れるだろ。運は運でしかないさ。たまたま運が良かったってだけ。それだけ』

「あー、急に走りたくなってきた!!」

『どうしたんだ』

「騎士になるなら体力がいるからな!! プレートアーマーを着て、門番するだけでも体力いるだろ!!」

『そうだな。いざって時に武器も扱えるといいぞ』

「違いねぇや。よし、急に素振りがしたくなってきたぞ!!」

『若いも老いも無いか』

「ん? なんだって?」

『何もないさ。パイロットが無理でもセスナ乗りくらいにはなれるかなって』

「また分かんねぇ言葉が」

『夢のかけらくらいには手が届くかなってな』




「おじさん―――おじさんってば!」

「ん、ああ。すまんな。少し考え事をしていた。で、なんだって?」

「おじさんみたいな騎士になるにはどうしたら良いんだよ!」

「夢に向かって毎日努力だ!」

「お、おう! 努力だな、おじさん!」

「そうだ。やってきたことは裏切らない。あとは情熱だ!」

「おう! おじさん、あと10年待ってろよ! 俺が騎士になって、おじさんのフトコロガタナになってやるんだからな!!」

「70歳まで騎士団長なんてできねぇよ!」

「なんだよ! 情熱だろ!!」

「老いには・・・・・・。いや、若いも老いも無い、か。いいぞ小僧! 10年だけ待っててやる! 騎士になってみせろよ!!」

「任せろイゼリア団長!!」

「・・・・・・俺は貧乏だった実家も養えるようになった。夢も叶った」

「なあ、ソウジュウロウ。あんたは今、どこの空を旅してんだ? あんたに―――」

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