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〜逆らう奴は無塩バターにしてやる〜
「ジャケットよし、剣よし、と……行ってきまーす! って誰もいないんだけどな、はは」
玄関の扉を開けると、春の香りが鼻をかすめた。
思わず走り出しそうになる足を必死でなだめながら、光あふれる坂道をゆっくりと歩き出す。
伝説が、始まるのだ。
俺の、最強の剣士に至る伝説が。
足取りは軽く、それでいて心構えはどっしりと。
今は亡き祖父の教えだった。
「じっちゃん、見ててくれよ! 俺、この件で世界を守ってみせるからな!」
拳を高く天に掲げる。
その瞬間、掲げていたはずの俺の右腕が地面に転がり落ちた。