3月14日
ホワイトデーですから
一ヶ月、待ち侘びたという表現をするとなんだかメチャクチャに楽しみにしてたみたいで腹が立つから避けるけど、楽しみでなかった訳では無い、うん。
だからといって諸手を上げてはしゃぎ回る程でもない、福引で言うならそんなに欲しくはない一等が当たった感じ。
まぁ、私の心の状況はどうだっていいのだ。些末な事だ。
今ぶち当たっている壁は想像以上に高い。
現在時刻は5時30分 いつもならもう少し寝ている所なんだが早くに目が覚めてしまったからリビングでくつろぎ中だ。
二度寝と行きたい所だがそうもいかない理由がある。それは…
「千代子よ、今日の朝食は米を主食として作り上げた。普段パンを食べていることはトースターの使い込み具合と昼を共にしていることから想像に難くないが、たまにはしっかり米も食え」
コイツだ。
いつも通りお返しとして綺麗に装飾された甘いモノでも寄越してくるのかなと思ったら、今年は趣向を変えてみた、だそうで今日1日の食事の面倒を見るとか言い出しやがった。
つまりは、今ソファーに座ってテレビを眺めている私の!後ろで!アイツが朝食作りに勤しんでるって事だ!
まぁ、家に上げる事自体には何も感じないさ。幼馴染みだしな、一緒にお昼寝とかした事あるし。でもそれって常に親が近くにいたじゃん!子ども頃だったじゃん!
昨日の夜に急に電話してきたと思ったら、空気読んで席外しておくから、ってなんだよ!二人きりだよ、思う壺だよ!
うっわぁ、普段気にならないけど二人っきりって恥ずかしぃ…
料理中鼻歌とか歌うんだアイツ、しかも流行の曲だぁ。こんな事普段なら気にしないけど、気にしざるを得ない!
彼我の距離は約5メートル、5メートルもあるのか。数値にしてみると大分遠く思えるな、ちょっと冷静になれたわ。
まずは深呼吸、スゥー
「千代子よ」
カハァッ!
きゅ急に話しかけるんじゃねぇやい!べらんめぇ!
「う、うむ。すまなかった。その、食事が出来上がった故配膳をお願いしたいのだが」
ああ!?まっかせろお前!俺はこの家のお手伝い名人だぞこの野郎!
初めて会話のない食事というのを経験した気がする。
やっちまったぁ、何がどうしてもこうじゃあないだろう。
ご飯美味しかったよ、ムカツク程に。私もそこそこ自信あったがやっぱり和の方面じゃ勝てないか。
「ふむ、言葉少なであったから不安はあったが、想像以上に喜んで貰えて何よりだ」
ッ!まさかバレるとは、そんなに顔に出てたか?
…そんなにか、そうか結構分かりやすい人間だったんだな私。
いや、昔の事だけどさ、表情が分かりにくくて怖い、って同級生に言われて来たからコンプレックス的なモノだったけど、それ聞いて安心した。ありがとうな。
っともうこんな時間なのか、ほら呑気に茶啜ってないで支度して学校行こうぜ。
今日の登校はたっぷり余裕を持って行けたぜ、いつも走って行くのもアホくさいからな。
不満そうな顔するなよ、今日は確認事項が多いんだから余裕持ちたかったんだよ。鍵とか火元とか電気とか。
だからこれで良いの、オーケー?
ん、そんじゃここらで。また昼な!
午前の暖かい日差しが私をゆるりと眠りへと誘う〜イデッ。
あんにゃろ乙女の頭になんて事しやがる。傷になんないようちゃんと手加減されてるのはわかるが、よく教科書で叩こうと思うよな、世論とか怖くないんかね?
まぁいい、4時間目も終わったしアイツんとこ行くか。
「うむ、定刻通りでいつも通り。今日も一撃貰ったようで何より、歓迎しよう」
何様のつもりなんだお前。そっちもいつも通りで何より、その間違いだらけの高校デビューを辞める目処はついたか?
「ふむ、似合ってないのは重々承知、自らの名前の意味と逆行しているのも確か、しかし中々に気に入ってるのでな当分はこのままだ」
そーかい、恥ずかしくないんならいいが。
というか今日弁当持ってくんの忘れてるわ、今から購買いって間に合うかね?
「それはそうであろう、今日一日君の食事の面倒を見るという約束を忘れたか?全く渡そうとしたらそそくさと行ってしまうのだから」
あ?
ああ、そうか昼飯もお前の手製なのか、アレ、ちょっと待てよ
。
今って冷静に結構恥ずかしいことしようとしてないか?だって今からコイツが作ってきた弁当を公衆の面前で食うのか?作成者と一緒に?
・・・!
あー、もう無理!こういう考えが浮かばなかったことはないさ、勿論最初の方は恥ずかしいな〜とか思ってたけど段々とそんなに気になんなくなったから続けて来たけど、このパターンはなかった!どっちかがどっちかの分まで作ってくるのはなかった!
あ“あ”考えれば考えるほどに恥ずかしい!
「うむ、朝は米だったから昼はパンにしてみた、君の母君程の味は出せなかったが食べられる物には…おい、どうした?俯いたままでッ!?」
気づけば私は弁当箱を引ったくるようにして奪い去っていた。
悲しいくらいに上手くいかない、あの後屋上で一人昼飯食べたけどちゃんと美味しかったのも罪悪感に拍車をかける。
更に顔合わせづらいからって一人で帰って来てしまった。
何やってんだろう私。全部一人で自爆して、いらないことにまで目を向けて、挙げ句の果てに全部逃げ出して今こうやって一人で落ち込んでるのも。
全部馬鹿みたいで、視界がぼやけてくる。
「千代子!帰っているか!?いるので有れば返事して欲しい!」
なんで来るんだよ、放っておいて欲しいのに、こんな顔見せたくないのに…
「やはりここにいたか、昔から隠れるのが下手な奴だ。わかりやすい」
見るなよ、今見せられる顔してないから、あっち行っててくれよ、放っておいてくれ。
「そういうわけにもいかん、泣いてる幼馴染みを放っておくほど私は非情ではないし、何より夕食のリクエストを聞いていないし昼食の感想も聞いていないからな」
いいから放っておいてくれよ!何でそうやっていつも通りに接してくるんだよ!あんなに酷いことしたのに!お前を傷つけたのに…
「ほう?誰が、誰を傷つけたと?そんなに弱い男に見られていたのか私は、その言葉の方が傷つくがね」
「それに昼と下校時の事を気に病む必要もない、君がああいう風に何も言わない時は大概私が悪いのだ、何が悪かったのか今は分からないが」
違う、お前は悪くないよ。私が勝手に先走って、どうにもならなくなった結果無様に逃げ出したんだ。
私が悪いんだよ。
「そうか、今回は君が原因であったか」
そうだよ、悪いのは私なんだ。
「ふむ、では私は君を許そう」
?何言ってんだお前。
「今の言葉を解釈するに、今回の件は君が加害者であり私が被害者という事になる。しかし私は君に対しての悪感情を現在待ち合わせていない。だから許すのだ。つまりは気にするなということさ」
気にするなって、そう簡単に割り切れるかよ。
ハイそーですかって聞けるならこんな困ってないんだよ。
「では、君はどうされたいのだ?」
どうされたいって…
「出てこないだろう?ならばこれで良いのだ。私も徒に人を責めたくはないし、君だって責められるのは嫌だろう。そらもう夕食ができている、冷める前に食べてしまおう」
お、おい!勝手に話を進めるなよ!
というか夕食のリクエストの件どうなったんだよ!
まんまと乗せられた気分だ、そりゃ勝手にでも進めなきゃ千日手になってけど、いくらなんでもゴリ押しが過ぎないかね?
「そう?個人的には結構良い手段だと思ったんだけどなぁ」
そうなの!それに夕飯だって勝手に作っちまいやがって。
「仕方無いじゃない、連絡なしで家に入るの憚られたからわざわざ自分家で作ってから持って来たんだから、重かったよ」
それも悪かったよ、いくら隣の家だからってカレーの鍋一人で持ってこさせたのは。
でもやっぱり納得いかないぜ。
「まぁもういいじゃない、終わった事なんだしさ。というかお代わり込みで三杯も食べてくれたのは嬉しかったな、良かったよ喜んで貰えて」
むぅ、まぁもういいか。
ああなった理由を聞いてこないだけ温情だしな。
はぁ、今日一日何というか何も上手くいかなかったなぁ。
朝の占いバッチリ当たっちゃったよ。
「うん、じゃあそんなついてない君にプレゼント」
ん、いつも律儀だよなお前も。ちゃんと甘いものも用意してるんだから。
その、今日一日迷惑かけたけど、ありがとう新
「どういたしまして、千代子ちゃん」
(内容が)上手くいかないよなぁ、なんというか
これからも気が向いたら更新するかもしれません。