第八十一話 犯人はヤ--じゃなかった、アリス
エリサの言葉に私はしばし固まる。衝撃の大きさが半端ないんだが……え? ええ? わ、私がライバル役の悪役令嬢?
「……それ、マジ?」
「……残念ながら」
……おうふ。ま、マジか……っていうか……
「……アリスってジーク一筋のキャラかと思ったんだが……」
まさか、美味しく兄弟で頂いてしまおうという考えを持っているとは……アリス、恐ろしい子!!
「あー……それはちょっと違うんですよ」
「違う?」
「アリス・サルバートはちゃんとジーク一筋なんです。ただ、アレンがアリスに横恋慕と言いましょうか……とにかく、アリスに対する思慕の思いが強すぎるキャラなんですよ。なもんで、中々ヒロインであるエリサに靡かないと言うか……そんな感じのストーリーです」
「……」
なんだろう? 自分がアリスだからか……ちょっと『ほっ』としている。にしても、エリサとアリスというアレンルートのライバル同士でこの話をしていると思うと、相当メタいものがあるな、うん。
「……にしても……アリスか……」
「……不満ですか?」
「不満っていうか……」
なんだろう? 自分で言うのもなんなんだが……
「……何処に魅力があるの、アリスの?」
「……それ、アリスさんが自分で言います?」
いや、まあ、そうなんだけど……だって、アリスだぞ? アリス・サルバートだぞ? いや、待てよ?
「……もしかして、アレンルートのアリスはもうちょっと魅力的だったりするの? セリフも増えてたりとか……」
それならワンチャン、アレンがアリスにホレる可能性も――
「いいえ。残念ながら、アリスの実装セリフは変わらず、『ジーク様は私の物ですわ』と『おーっほほほほ』の二つです」
「……昨今のRPGの村人だってもうちょっと喋るぞ?」
いや、マジで。
「いやでも、結構凄かったんですよ、アレンとアリスの会話。『なあ、アリス嬢?』『おーっほほほ』『君は……兄上の事が好きなのかい? 兄上とは政略結婚なんだろう? ならば……兄上じゃなくても良いじゃないか!』『おーっほほほ』『……兄上以外は、君の瞳に入る事は無いのかい? 君は……兄上の事を、どう思っているんだ!!』『ジーク様は私のモノですわ!』『……僕には全く、チャンスは無いのか?』『おーっほほほほ!』『笑ってないで答えてくれないか!!』っていうセリフがあるんですが」
「……コントじゃん」
「本当に。もうほとんどコントですよ、コント。あるじゃないですか? 違う事について話しているのに、意味がつながる……すれ違い系って言うんですかね? ああいうコントみたいな事をしてストーリーが進んでいきます。あのたった二つのセリフでアリスの心情を読み取るアレンを称して、一部では『エスパーアレン』なんて呼ばれていましたね」
「エスパーアレンって……それならアリスのセリフを増やせよな、わく学」
「その辺がアレですよ。わく学がわく学たる由縁ですね。テキスト打つの面倒くさかったんじゃないですか?」
「むしろさっきのコントの方が面倒くさいと思うんですけど」
……マジでクソゲーだな、わく学。
「アリスさんの前で言うのはなんですが……そんなアリスに心底惹かれているアレン、っていうのもなんというか……『アリスの事が分かるのは、アリスの事を心底愛しているからだ! 率直に言って気持ち悪い』とか『ぶっちゃけ、引く』とか『もう殆どサイコパスじゃん、アレン!』なんて声が鍵付きブログに溢れましてですね?」
「……だろうよ」
私だってそう思うよ、そりゃ。
「一応、アレンがアリスに惹かれている理由はあるらしいんですが……アレンルートでは一切書かれておりません」
「そこ書けよ!! そこ書かないと意味が分かんないじゃん!!」
手を抜くところと力を入れる所がおかしい。本当に……物凄い感性しているな、わく学スタッフって。なんか一周回って尊敬の念すら抱くんだが。気のせいか? 気のせいか。
「まあ、そこはどうでもいいんですよ。アレンがアリスにホレた理由がどうあれ……たとえサイコパスであっても」
「ヤダよ。私はヤダよ。そんなサイコパスに好かれるの」
他人事だと思って簡単に言いやがって、エリサ。怖いじゃん、そんなサイコパスに好かれるの。しかも理由が分からないって……この瞬間に、既にホレられてるかも知れないって事だろ? こえーよ。
「まあ、そこは不幸な事故と思って諦めて貰うとして……って、そうじゃなくてですね? 実はわく学、ちょっとした謎がありまして……なんだか分かります、アリスさん?」
そう言って『ん?』と首をかしげて見せるエリサ。いや、謎じゃない部分って……
「むしろ謎じゃない部分ある?」
あのゲームを発売した時点で謎しかないんだが。
「……いや、そう言われるとそうなんですけど……じゃなくて! わく学……もそうなんですけど、わく学2のオープニングですよ!」
「……わく学2のオープニングって……ジークとエリサが断頭台に送られたってヤツ?」
「そうです! ちなみにアリスさん、無印のわく学、ジークルートでアリスさん、どうなっていました?」
「どうなってって……なんか、気付いたらいつの間にか居なくなっていた」
本当に、アリスの扱いは酷すぎると思う。ジークの婚約者であった筈なのに、いつの間にか、本当にいつの間にかフェードアウトしていき、その後は一切登場すらしなくなったからな。婚約破棄のシーンとかも無かったし。
「そうです! そして、国王であるジークが断頭台に送られて、なんで第二王子のアレンは生き残ってるいるんでしょう?」
「……なんでって……」
「二次創作界隈、盛り上がったって言いましたよね? そこで、ある人が仮説を立てたんですよ。流石にこれはあの時言うのは憚られたんですが……今なら良いでしょう」
そう言って人差し指をピンと立てて。
「――ジークとエリサを断頭台に送ったのは、実はアリスだったのじゃないか、って。それを手引きして、スモル王国を滅ぼしたのは……アレン・スモルだ、って」
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