第六十六話 デザイナー、エリサ! 爆誕!!
「……ブルーオーシャン?」
「はいー。ブルーオーシャンですよ、ブルーオーシャン!」
「……いや……古着屋だよ?」
正直、わく学一般市民事情は分からんが……お父さまの話じゃアレなんだろ? 基本は古着屋で調達するんだろ? んじゃ、むしろライバル企業多数のレッドオーシャンなんじゃね? しかも、デザイン殆ど差異が無いなら後は値段勝負な印象しかないんですけど……
「違いますよ~。まあ、確かに古着屋は一杯ありますし、何処も似た様なものを売っていますよね」
「でしょ?」
「はい。でも! 私達には有るじゃないですか!! この現代知識が!! この現代知識で、デザイン性重視の服を売り出しましょう!! 革命ですよ、革命! このわく学服飾業界に革命を起こしましょう!!」
鼻息荒くそう言って私に詰め寄ってくるエリサ。ちけーよ!
「……そう言えばちょっと気になってたんだけどさ? あれ、あったじゃん?」
「あれ?」
「ほら、エリサがラインハルトに勉強教えるヤツ。女教師風のコスプレのイベント」
「ああ、ありましたね」
「あの衣装があるのに……なんで全然衣装、発達して無いの?」
あれなんてまんま現代風じゃん。まあ、私も着せられたけどさ? あれがあるなら、あの派生形とか誰か考えそうなもんだけど……
「あー……まあ、わく学ですし? その辺の設定はゆるゆるなんじゃないんですか?」
「いや、私もそう思ったけど……此処、完全にゲームの世界って訳じゃないじゃん? 人の意思があって、生活して、生きているのに……そういう発想にならないのかな、って」
「……あー……まあ、確かにアリスさんの言っている事は分からないでもないんですけど……たぶんですよ? 必要、ないからじゃないかな? って」
「必要ないの?」
「はい。基本、着られる服だったら別に問題無いんですよ、皆」
「……マジか」
それはそれで発想が怖いが。皆一緒の恰好で問題無いって、一昔前のどっかの社会主義国家とか戦時中の日本みたいだけど。
「というかですね? あんまり皆さん、お洒落に関心が無いんですよ」
「生活が苦しいから?」
「まあ、決して楽ではないんですけど……そうでもなくて、基本、皆綺麗なんですよね、この世界の人」
「……マジ?」
「マジです。アリスさん、わく学のキャラで『ぶさっ!』って思ったキャラいました?」
「いや……そりゃ、居ないけど……」
「暴飲暴食もしないですし、皆さん健康的なんですよね。だからぶくぶく太ったりとかも無いし、夜は早く寝ますから肌も綺麗です。基本、自動車に乗ってとか電車に乗っての生活じゃないですし、デスクワークなんてものもあんまり無いんで、適度に運動もしますし……物凄く美人! とか、すっごいイケメン! みたいな人はいないですけど、皆さん普通に綺麗だし、男前ですよ?」
「……なるほど」
まあ、健康的な生活してりゃ顔も体も引き締まって来るしな。それだけで結構綺麗、格好いいって思えるわな、そりゃ。
「……でもさ? そんなにお洒落に関心がなかったら、デザイン重視の服を作っても難しいんじゃない?」
「甘いですね、アリスさん! そうはいっても皆さん、ちょっとずつ差を付けてますよ? リボン付けたりとか、ボタンを付けたりぐらいの『改造』は行っています! ただ、服本体に手を付けるとなると中々、と言った感じでしょうか? 値段も高くなりますし」
「んじゃ、価格設定は抑え目で、って事?」
「そうですね。基本は古着をいくつか組み合わせてリメイク、みたいな感じでしょうか? 可能であれば生地から仕入れて作れればいいんですが……お金の面が……」
「それぐらいはまあ、大丈夫なんじゃないかな?」
お父様に言えばきっとお金を出してくれると思うけど……
「……でもさ? それ……誰が作るの?」
ミシン……は多分、自動とかじゃなくて良いならあると思うけど……
「……私、家庭科も美術も2しか取った事無いんだけど……」
「大丈夫ですよ! そんなに難しくは――」
「十段階評価で」
「――……それはちょっと難しいかも知れませんね、アリスさんには」
うるさいやい。芸術的センスは壊滅的に無いんだよ、私には。
「まあ、デザイン画は私が描きますよ。縫製もまあ、私が出来ますし……そもそも、どれぐらい売れるかも分かりませんし、少量生産で良いんじゃないんですか?」
「まあね」
ただ……これ、最早古着屋じゃなくなってる気がするが。
「……っていうか、エリサ、縫製とか出来るの?」
「出来ますよ?」
「それって、こっちの世界に来て覚えたって事?」
「あー、いえいえ。ほら、私ってまあ、自分で言うのもなんですけど結構なオタクだったじゃないですか?」
「……まあね」
あのわく学を周回プレイするぐらいに訓練されたオタクだよね。
「だから、コスプレとかも結構好きで……買うと値段も張るから、自分で作ってたんですよ。好きでしたしね、コスプレ」
「……なんか想像つくわ、それ」
「なもんで、ミシンの使い方さえ覚えればすぐに作れるようになりますよ。デザイン画と言いましたが、一度作った服なら頭の中に大体ありますし」
「それで出来るの?」
「まあ、この世界には『此処、原作と違う!! クオリティひっくwwww』みたいな草生やして煽ってくる輩も居ないですし……少々違っても可愛ければ良いんじゃないですかね?」
「……まあね」
「あ、そうだ!! 折角なら、男の子物のコスプレ衣装も作りましょう!! それでエディとかジーク、ラインハルトにも着て貰うんですよ!」
「あー……それは、どうだろう? 手伝うとは言ってくれてたけど……」
「手伝うって言ってくれてるんですか? んじゃ、手伝って貰いましょう! モデルして貰いましょう、モデル!!」
「多分、そういう意味で手伝うって言ったんじゃないと思うけど……」
「なに言ってるんですか、アリスさん! 言質取ったんでしょ?」
「……言質って」
言い方! そう思い、ため息を吐く私に。
「――そもそもあのポンコツども、顔面のプリントだけはよろしく刷れてますしね!! なら、使わない手はないでしょう!!」
……おい。顔面のプリントって。凄い悪い顔になってんぞ、エリサ。
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