第四十一話 幾らクソゲーと言えども、疑ってかかってばかりじゃダメだよ、うん。
今回はコメント欄で『おかしくね?』と突っ込まれた部分を直すことなく、折角なのでそのまま流用して設定にしてみました。サンキューな!!
「……ふう。終わった~!!」
メアリに出された宿題をどうにかこうにか説き終わり、私はベッドにダイブ。ふかふかのお布団が優しく私の体を包んでくれる。極楽や~。
『あの時は本当に済まなかった』とエディが頭を下げて来て、勉強会の参加が決定したのが今から一か月前の事。快諾した私と違い、リリーなんかはすげー不満そうだったが……私が頭を撫でると『……仕方ない。これで手打ちにして差し上げます』と頬をだるんだるんにしながら言ってた。いや、手打ちって。ヤの付く自由業の方々じゃないんだから。
最初こそ、若干ぎくしゃくしてた男性陣だったが、流石男の子、一か月経った今ではお互いに尊称も敬語もなく普通の友人の様に喋っている。仲良きことは良き事だ。
「……っていうか……意外に普通よね、皆」
そう。
あまりにも癖が強い『わく学』メンバーなのだが、ゲーム内とは違い、皆割合普通に良い子なのだ。ジークもラインハルトもエディも、話してみれば年相応の男の子だし、別段変な点もない。
「……やっぱり幼少期の親子関係って人格形成の上で凄い重要なんだね……実感したよ、私」
なんだかんだ、全員親子関係で悩んだ結果、捻くれて育ってしまい『あの』わく学キャラになってしまったってワケで……もし、今の状態でジークとかラインハルト、エディが成長すれば少なくとも、全方位から『ポンコツ大集合』と言われたわく学の様にはならんのではなかろうか。
「……攻略キャラを教育するより、その親を教育した方がワンチャン、早かったんじゃないか説もあり得るな、これ」
ホントに。こういう所だぞ、わく学……と、言いたい所だが、これってわく学あんま関係ないのか。いや、でもわく学だからこそ、親が全員ポンコツ説もあるな。
「……こういう時って、原作と随分違うっていうもんなんでしょうけど……」
正直、よく分からん。普通、こういう『異世界転移系』って、悪役令嬢が色々した結果、愛され令嬢になって原作とドンドンかけ離れて行くって展開が一般的なんだが……
「……原作の設定、一切ないもんな~、アリスって」
……そうなのだ。何しろ、実装されたセリフが二つしかないポンコツ令嬢であるアリスには『設定』的なものが一切ない。まあ、実装セリフ二つのキャラに重厚な裏設定とかあったらそれはそれで力の使い方が違うだろ! と、突っ込みを入れる所ではあるのだが……力の入れ方がおかしいで有名なわく学だしな。その可能性もゼロじゃない。
「……」
ジーク、ラインハルト、エディという攻略キャラとは全員顔見知りになった。となると……
「……流れから行けば、最後はやっぱり『カレ』……だよね?」
『わく学、唯一の良心』と呼ばれ『他のシナリオは見れたもんじゃないけど、彼のシナリオは良い。だからこそ、ヒロインに全く感情移入出来ない』と言われたクリフト・ロートリゲンである。ロートリゲン子爵家の一人息子で、リリーの幼馴染だ。寄親は違うが、領地は隣同士であり、兄妹……というか、姉弟だな。姉弟同然に育った……らしい。
「……うーん……」
ちなみに、このクリフトさん、ゲーム上ではクリフト・ロートリゲン『子爵』と表記されている。わかるだろ? 誤字だ。この辺が安定のわく学クオリティで、クリフトは『子爵』という渾名で呼ばれていたりする。
「クリフトとリリー……どうなってるんだろう、この二人って」
優しい、というか気の弱いクリフトとリリーはいい意味でリリーが引っ張って行く感じのコンビだった。クリフトがおろおろしていると、リリーがため息を吐きながら『仕方ないですね』って感じで色々お手伝いしているという感じのカップルだ。そんなリリーに頼りにされる男になりたいと、クリフトが勉強や剣術を頑張っている所にヒロインが出くわすのだ。
少しずつ、クリフトが男らしくなっていく姿はこう、胸に迫るものがある。弟系のクリフトが不意に見せる大人びた表情にドキッとしたわく学プレイヤーも多いだろう。最初がポンコツスタートだった分、振り幅が半端ないのだ。そんなクリフトの成長を喜びながら、段々頼られる事が少なくなって来た事に寂しさを覚え、だからと言って今までの関係性上、なんとなくクリフトを頼る事が出来ないリリーとの擦れ違いの中で、ヒロインがしゃしゃり出て来る……みたいな感じのシナリオである。王道と言えば王道だが、最後にクリフトが悩んだ末、ヒロインを選んでも涙一つ流さずに寂しそうな笑顔で見送るリリーのスチールが印象的である。
「……うーん」
……個人的に、リリーとクリフトはお似合いだと思う。出来れば二人には幸せになって貰いたいし、むしろ数少ないわく学プレイヤーとしては、あのヒロインにだけはクリフトを渡したくない気がする。
「でもな~……実際、リリーがどう思ってるか分かんないし」
下手に入って行ってウマに蹴られるのもイヤだし……というか、リリーが『アレ』なら、クリフトが幸せになれるかどうか分かんないし。逆にくっ付けない方が幸せなんじゃなかろうか、なんてことを考えていたら、ドアがトントントン、と三度、ノックされる。どうぞと返せば、部屋のドアを開けてリリーが入って来た。なんとタイムリーな。
「リリー? どうしたの?」
「アリス様。もうお休みでしたか?」
「いや、もうちょっと起きているけど……」
「それでは少し、お喋りしませんか? 今日はサルバート家にお世話になりますし……」
リリーはこうして『明日が授業』の日はちょくちょく泊まりに来て、夜はメアリも含めて女子会が開催される事もしばしばある。楽しいから良いし……それに、今日は好都合だ。
「いいわよ?」
「本当ですか? 良かったです」
そう言ってにっこり笑ってパタパタと私のそばに駆け寄って来るリリー。ああ、かわええな~。
「……リリーは本当に可愛いわね」
「アリス様には敵いませんが」
「……う、うん。ありがとね?」
……真顔なんだが。いや、そんな事はどうでも良い。
「その……ちょっとリリーに聞きたい事があったんだけど……良い?」
「なんですか、改まって。構いませんよ?」
私のベッドの端にちょこんと座ってこちらを見やるリリー。え、ええっと……どう切り出そうかしら。
「その……リリー、幼馴染、居たじゃない? クリフト・ロートリゲンっていう男の子なんだけど……」
「クリフト……ああ、ロートリゲン子爵の事ですか?」
「子爵!?」
……え? な、なに? なんでリリー、そのあだ名知ってるの? ま、まさか貴方も異世界転生系の、わく学プレイヤーなの?
「アリス様?」
「い、いや、リリー、クリフト様の事『子爵』って呼んでるの?」
「そうですが……爵位でお呼びするのは変ですかね? 確かに幼馴染ですが、こちらはただの子爵の娘ですが、あちらは爵位を継がれたれっきとした子爵様ですし……」
「いや、それ――」
……。
………。
…………。
「……爵位を継がれた……子爵?」
「はい。三年前の流行病でクリフトのお父様とお母様が亡くなられましたので。クリフトがロートリゲン子爵位を継いだのですよ? 四歳の時に」
何を言っているんですか今更、と言わんばかりのリリーの言葉に。
「――はぁあああ!?!?」
マジか! そして、ごめん、わく学!! 絶対ただの誤字だと思ってたわ!?
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