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第二百七十五話 クリフトの提案


「……どういう意味、クリフト? 正直、パワーバランス的な話で言えばアレンなんて一番嫁いじゃ駄目な気がするんだけど……?」


 昔々のお話になるが、そもそも『ジーク派』『アレン派』で争ってたジャマイカ。まあ、今はそんな事も無いんだろうけど……それでも、未だにアレンの即位を目論む輩が居る様な気はせんでもない。エディのお兄ちゃんとか。


「ロッテの……というか、ゲーリング家の力を宛にする有象無象が集まって来て、更なる派閥争いになるんじゃないの、それ?」


 正直、新たに派閥を形成する様なモノになんないの? そう思う私に、クリフトはにっこり笑って見せた後、ロッテに視線を向けた。


「シャルロッテ嬢? 貴方は親友でもあるアリス様と派閥争いを行いたいですか? 入学当初の様に」


「……死んでもごめんですわ。アリスは……その、お、お友達ですし……争ったりするのは辛いですから」


 頬を薄っすら赤く染めてこちらをチラチラ見て来るロッテ。なにそれ、可愛すぎ。嫁に来ないか? そう思って一人悶える私に苦笑を浮かべ、クリフトは言葉を継いだ。


「アレン様の……そうですね、勢力は衰えたと云えまだまだ王城内では一定の力を持っています。陛下もエカテリーナ様も望んではおられないでしょうが、時に権力とは暴走を招きますので」


「……」


「ですから、アレン様の『婚姻』と云うのは非常にデリケートな問題です。誰がアレン様に嫁いでも、少なくない混乱を招きますし……ジークの婚約者がアリス様である以上、アレン様にもそれに見合う程度のお相手が必要になります」


「それがロッテって事?」


「はい。シャルロッテ嬢は爵位こそサルバート家に譲りますが、王都の近くの領地を持つ有力貴族のゲーリング侯爵家の御令嬢。充分、王族に嫁ぐ資格があります」


「……」


「加えて、ゲーリング家にはアレン様を盛り立てていずれ王位を……みたいな野望は無いでしょうし」


「それはどうかな、クリフト? あるかも知れないよ?」


「無いですよ、シャルル様。あるのであればさっさと猟官活動をしているでしょう?」


「人の気持ちは変わるけど?」


 シャルル様の言葉に、クリフトは大きく頷く。


「ええ、仰る通りです。しかしながらシャルル様? ゲーリング家は他家に嫁いだ娘に対して行動を縛る事をしないのでは? そのメリットもまた、ゲーリング家にはありそうに無いですし。まあ、シャルロッテ嬢のお気持ちが変われば或いは、と思いますが……」


 一息。


「少なく無い時間、シャルロッテ嬢とご一緒しておりますので。その辺りは信用が置けそうだ、と云うのもあります。シャルロッテ嬢がアリス様と骨肉の争いを繰り広げる……と言うのも考えにくいですし」


「……なるほどね」


「結論を言えば、アレン様もシャルロッテ嬢も現状では『丁度いい』結婚相手がお互いしかいない、という事です。色々言いましたけど、そういう感じですかね?」


 どうでしょう? と首を傾げるクリフトに肩を竦めて見せるシャルル様。


「……まあね。確かにロッテに釣り合うとなるとそれぐらいの相手しか居ないかな~とは思うよ? 下手な貴族に出すのは勿体ないしね」


 ……そう言えばこの人、『わく学2』でもだいぶ『ロッテ、ロッテ』って言ってたってエリサが言ってたな。関係ないけど、わく学2のロッテの旦那さんってシャルル様の有形無形のプレッシャーで胃でも悪くしなかったんだろうか? このシスコンの義兄とか私だったらマジで勘弁なんだが。


「でも、それは若干ゲーリング家の趣味じゃない」


「趣味じゃない、と来ましたか」


「ゲーリング家は『恋愛結婚』推奨派だからね。今のクリフトの言葉は『都合の良い相手』であって、『好きな相手』じゃないから」


 それに、と。



「――無論、それだけじゃないでしょ、クリフト? 君はジーク派の頭脳だ。『敵対勢力』のアレン殿下の配偶者がロッテなら」



 御しやすいと、思ったんじゃないの? と。


「……どうかな、クリフト? ロッテなら簡単と、そう思ったんじゃないの? そう思われたなら、ちょっと癪だけど?」


「……」


「……」


「……」


 流れる沈黙。そんな中、私はそっと手を挙げた。


「……あの~……シャルル様?」


「何かな、アリス嬢?」


「……多分、クリフトはそんな事思ってないと思いますけど……」


「優しいね、アリス嬢? 何かな? それはお友達を――」


「あ、いや、そうじゃなくて」


 言葉を切って。



「……クリフトなら誰が相手でも簡単に御しちゃう気がするんですけど……」



 ……うん。別にロッテがどうとかこうとかじゃなくて、同年代の令嬢がクリフトと渡り合えるってちょっと考えにくいんだが。多分、悪魔と騙し合いしても勝つぞ、クリフト。


「……うん、そう言われればそんな気もするね。クリフトだし」


 一瞬唖然とした表情を浮かべた後、そう言って頷くシャルル様にクリフトが肩を竦めて見せる。


「まあ、そんな事もありませんが……御す、御さないはともかくシャルロッテ嬢ならやりやすいとは思っています。これは別に政治的な観点からではなく、心情的に。アリス様もそうでしょ?」


「……まあね」


 アレンのお嫁さんって事は私に取っても義妹になる訳だし。なにそれ、義妹がロッテとか最高じゃん。


「嫁姑小姑関係は中々難しい。シャルロッテ嬢にそんな苦労を強いるの、シャルル様だって本意じゃ無いでしょう? アレン様に嫁げばその辺りはオールクリアですよ?」


「……」


「加えてアレン様、眉目秀麗にして才児でもあります。今はまだお若いですが……一角の人物になりますよ?」


 ……まあな。アレンは賢いし……加えて、『わく学』の登場人物の中では比較的マシな方だとは思う。今のジークやラインハルト、エディはともかく、『わく学の登場人物』としては賢い方だと思う。いや、まあ、うん。他がアホ過ぎて相対的に高く見えるだけという説もあるが。アレンの評価はサイコパスってだけで、アホだとは思われてないもんな。沈黙は金か。


「……」


「どちらにせよ、一度お二人でお出かけでもしてみれば宜しいのでは? エカテリーナ様のご意向ですし、無下にするのもどうかと思いますが」


 そう言ってパンっと手を打って。



「どうでしょう? 丁度学園祭もありますし、その時にアレン様とシャルロッテ嬢、お二人で回られてみたら?」



 なんとも乙女ゲーっぽいことを言った。あ、あれ? そのイベントってヒロインであるエリサのイベントじゃね?



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