第十二話 ジークの想い
くっくっく……サイド使いはなろう四天王でも最弱!!
……という事で、今回はジーク視点です。別に私はサイド使えば良いんじゃね? 派です。
「……」
「……」
馬車の中で向かい合い、俺――ジーク・スモルは冷や汗を掻く。理由? 眼前にいる『母』……見た目は姉と変わらない程の愛くるしいルックスの女性のジト目を一心に受けているからだ。
「その……エカテリーナ母上?」
「……ジーク。女の子に失礼な事を言ったらダメ」
「そ、それは」
「ダメ」
「……はい」
……まあ、自分でも冷静さに欠けていた事は自覚している。いきなり『婚約者』と言われ、やって来たのがアリス・サルバートなのだ。そう思ってしまっても……まあ、仕方ないだろう。
「……アリス・サルバートか」
俺の知っているアリス・サルバートは名家の子女らしく、我儘で傲慢なイメージしかない。それが、この三日間程のアリスはどうだ。俺の知っているアリスと――
「……」
……あ、あれ? あんまり変わらない気がする。いきなりドロップキック喰らったし、その後は誘拐未遂で連れ去られたし……あれ? やっぱり『我儘』だし、『傲慢』な気もするぞ?
「……」
だが、嫌では無かった。今までの我儘は何と云うか……こう、甘えた様な、媚びる様な我儘だったが、今回の我儘は方向性が少し違う。
「……『継母に不当な扱いを受けているなら、それを許すわけにはいかない』、か」
母上が亡くなってから数年。王宮内では腫物を触る様に扱われ、誰も俺の味方なんていないと、そう思っていた。
「……」
王妃であるエカテリーナ母上に、そんな口をきけば斬首だって有り得た。それなのに、アリスはそう言って俺の為に声を上げてくれた。
「……ははは」
それが――その事が、堪らなく嬉しかった。そんな感情のまま、一人で笑う俺に眼前のエカテリーナ母上が頭を下げたのが見て取れた。
「……ごめん、ジーク。至らない継母で」
辛そうな表情を浮かべるエカテリーナ母上に、思わず焦る。しまった! 失言だ!!
「え、エカテリーナ母上!? す、すみません、そう云う意味では無かったのです!」
「……でも、事実。確かに私は至らない母だった。ジークが何を求め、何を考えていたのか、それを理解出来なかった」
そこまで喋り、エカテリーナ母上は首を左右に振る。
「……ううん、理解しようともしていなかったのかも知れない。『ジーク『殿下』は優秀。気に掛けなくても、立派に育つ』と……そう、思っていたんだと思う」
「……それは仕方のない事です。私だって……良い息子では無かった」
「……子供が、良い息子になるなんて頑張るのは……間違っている。それはきっと、親の責任」
……親の責任、か。まあ、そう云う意見の方が一般的ではあるだろう。
「……腹を痛めた子供ではありませんので」
「! それ――」
いつになく、焦った表情を浮かべるエカテリーナ様を苦笑を浮かべて押し留める。
「……だから……私は距離感が分からなかったのです。何処まで甘えれば良いか、何処まで懐いて良いか、それが分からなかった」
「……」
「愛が欲しいなら、欲しいと言えばよかった。褒めて欲しいなら、欲しいと言えばよかった。なのに……拒絶を恐れ、疎まれる事を恐れ、手を伸ばそうともしなかった」
欲しい、欲しいと望みながら……俺はきっと、背を向けていたのだろう。そして、それはきっとエカテリーナ母上も。
「……そんな殿下の手を引いてくれたのは、アリス」
そう言って目を細めるエカテリーナ様。だが……すみません、エカテリーナ様。俺の認識は違います。
「……いえ。アレは手を引いたなんて生易しいものじゃありません」
拗ねていた背中に手を置いて、『こちらを向いて?』と優しく声を掛けてくれる――なんていうのは、アリスには似合わない。『何拗ねてんのよ、いい加減にしなさい!』と、拗ねていた背中を蹴り飛ばされ、怒って振り返った先で『やっとこっちを向いたわね? バーカ!』と不敵に笑っている。きっと、アリスに似合うのはそっちだ。
「……面白い子。普通の令嬢としか思って無かったのに。何処にでもいる、甘やかされて育った我儘な子だと思っていたのに」
「……全くです」
「あんな面白い子は他にはいないかも知れない。ジーク、絶対に逃がしちゃダメ。個人的な感謝もあるし……なによりあの子、私は好き」
「……そうですね。面白いヤツだと思います」
本当に。あんな変わった、面白いヤツはいない。
「……ジークも好き? アリスの事、お嫁さんにしたい?」
「……」
それは……どうなんだろうか。正直、俺には恋愛感情がどういったものか、今はあんまり理解出来ない。まあ、一緒に居れば楽しいとは思うけど……
「……じゃあ、聞き方を変える。アリスが、誰かのお嫁さんになったらどう思う?」
アリスが、俺以外の『誰か』のお嫁さん?
「……」
それは……なにか?
アリスが俺以外の誰かに笑いかけると、そう云う事か?
アリスが俺以外の誰かの手を引いて歩くと、そう云う事か?
アリスが俺以外の誰かと幸せになると……そう云う事か?
「……」
「……ふふふ。ジーク、不満そうな顔をしている」
「ふ、不満そうなどとは」
まあ……正直、あんまり面白くはない。
「……今はそれでいい。でも、ジーク? アリスに優しくはしてあげなさい。アリスを大事にしてあげなさい」
「……はい」
「まあ……そもそも、折角『親子』になれたのに、直ぐに誰かに盗られるのは寂しいし……もうちょっと、ジークは私の子供で居るべき。だから、直ぐに恋愛に現を抜かす必要はない」
「……エカテリーナ母上が言ったのではないですか」
「言ってみて、ちょっと悔しかった。まあ、私も間違う。今までも……そして、これからも」
「……」
「きっと、ジークも間違う。でも、これからは二人で解決していけたら……凄く、嬉しい」
「……はい。私もです」
そう言って微笑みを浮かべるエカテリーナ母上に、俺も微笑みを返して。
「……本当に、アリスには感謝」
「はい。それは……間違いないです」
きっと、噂されたあのヘンテコ令嬢はくしゃみでもしてるだろうと想像し、そのくしゃみも、どうせ令嬢らしからぬ豪快なモノだろうと推測して――微笑みを、微妙な苦笑に変えた。
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