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第76話 綾小路家についての考察

第76話 綾小路家についての考察


 やっと家に戻って久々に布団で寝たが、驚くくらいぐっすりと寝てしまったようで、午前遅くに目が覚めた。あまり健康には良くないが朝食と昼食をまとめて食べて、と思ったが家の中にも大したものはなく、結局近くのスーパーマーケットまで行って惣菜を買うことになった。



 午後から協会支部に行った。封印したものを預けるためだった。例の儀式は花瓶に封印したように見せて松本さんたちに渡しておいたが、実際は1円玉2枚に封印してあった。本丸を持って行った方が報酬がいいからね。無事預け終わった後、別件で来ていたみーさんと出会った。いつものジャージだった。お互い用事が済んだので支部のソファで少し話をした。この辺、みーさんが自由なのか、協会が緩いのか分からない。みーさんが半分職員も兼ねているようだから良いのだろうか。


 「上野さん、7supでも書きましたけど、ポ○モンの有料追加コンテンツですよー。環境がどう変わるか楽しみですー。それに、全部ポ○モンが集合するのも遠くない、といいですねー」

 この件でみーさんはテンションが高かった。ス○ブラのDLCが発表されたときもテンション高めだった。私も昔のをやったことはあるので聞いているだけで楽しくなってくる。みーさんの話が上手いのもあると思う。お茶とは別の、柔らかい匂いがする。


 一通りみーさんの話を聞いたところで、支部に来た理由の話になった。


 「それで、みーさんが預けに来た石には何が封印されているのでしょうか」


 「ああ、あれねー。樹木子です」


 「樹木子、ですか。あの血を吸う木でしょうか」


 「そう。あ、おねーさんがやったんじゃないですよ。元々封印されていたんです。どこかに流れてしまったから探していたんですねー」

 なるほど。みーさんに戦闘能力は(聞く限り)なさそうだし、そんな危ないモノをどうやったのかと思ったが。

 「普段はいろいろ話してもいいんですけど、今回のはシークレットなんですよー。だからレポートもよっぽどでないと見られないと思います」


 「それは残念です」

 もともとレポートを見る権限がないからそんなに変わらない。しかし、将来的に普通のレポートは見ることができるようになるかもしれない。そう言う意味で残念だ。


 「それで、上野さんの持って来た1円玉には何が封印されているんですか?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 みーさんに事のあらましを話した。話し終えたところでお茶を飲んでいたみーさんがクスリ、と笑った。。


 「知都世ちゃんの受ける依頼はやっぱり普通以上に不思議だねー」

 親しみのこもった笑顔だ。


 「そうなんですか。藍風さんがだいたいの基準だからよくわかりませんが」


 「それは、なんというか…。まあ、例えば普通、ゾンビならゾンビで終わるんですよー。今回のは窓越しなんてわけのわからないモノになっていましたよね」

 なんか解説モードみたいなスイッチが入ったようだ。


 「確かにそうですね」


 「それから、今の話、最初に綾小路さんが見たときは既に腐臭がしていたんですよね。それって…」


 「大方、良くて空き巣、悪くて、暗殺者か何かが洋館に潜んでいたのでしょう」


 「そうですよ。山中にわざわざふらっと立ち入りませんから、綾小路家に内紛か何かがあったんですかねー。それに元々わざわざゾンビに襲わせて、殺しを見物するような小部屋があったって…普通でないですよー」


 「まあ、なんだかんだ怪奇を悪用というか、人間のために良くない使い方をしているのは結構見ているような気もしますが」


 「それも、普通でないですからねー。添九島の件は例外として」

 あれは苦々しい依頼だった。


 「それからゾンビを作る儀式も変、でしょうか」


 「そうですよー。ゾンビを作る儀式はいくつかありますが、その元となる死体がどこかから集まるようにしておくっていうのはかなり異質ですよ」


 「それは私の推論ですよ」

 違う可能性も大いにある。


 「上野さんの予想は合っていると思いますよ。ゾンビの出所はそれくらいしか見つからなかったのでしょう?」


 「まあ、そうですね。書物は消えてしまいましたから」

 藍風さんの能力の副作用というか、そんなものでまとめて消えてしまっていた。残ったのはどこにでもあるような本だけだった。一緒に封印されてしまったのだと勝手に思っている。


 「それですよー。本当に貴重な本だったはずなのに。まあ、知都世ちゃんでなければ片付けられなかったかもしれなかったけれども」


 「そういえば、もう1つ聞いても良いですか」


 「あ、いいですよー」

 みーさんは未だに本に未練があるようだ。少しだけ上の空だ。


 「依頼をほぼ意図的に延長させていた人達はどうなるのでしょうか」


 「多分、干されますねー。信用を失いますよー。協会も仕事を与えなくなるでしょうし、仲間内からもどう思われるでしょうか。それをする価値のある金銭が綾小路家の一部から渡されていたのですかねー」


 「やめるつもりだったのかもしれないですね。その最後の仕事としては儲かる話だったのでしょう」



 その後はみーさんとたわいもない話をして、それから家に帰った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 夕食後、みーさんが言っていたことを少し考えた。人死にが出たのに法律では裁かれない。ゾンビには人権はない。松本さんたちは直接手を加えたわけではない。のか?武器がどこから出てきたのかも不明だ。そこまでするつもりはなかったのかもしれないが。まあ、藍風さんに怪我がなくて良かった。



 予想通り、綾小路家はお家争いが複雑だった。更には、本当に、浮浪者を連れてきては隠し部屋からゾンビに襲わせて見て楽しんでいたと分かり、ますます複雑になっていった。洋館はというと、後日抜け穴や屋根の仕掛けは取り払われて、再び別荘として使われるようになったそうだ。

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