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第74話 綾小路氏(中編)

第74話 綾小路氏(中編)


 ゾンビ退治は昨日と変わらず順調のようだ。といってもろくな作戦も立てずに、やっていることは変わらず、ゾンビを叩いているだけのようだ。盲目的にやるくらいなら室内に籠っていた方がましだと思う。


 (そもそもゾンビは室内に入れないのだから。何故だ?)

 洋館の中の人に危害を加えることが目的でゾンビを召喚?しているなら、理にかなっていない。閉じ込めることが目的なら、窓から外を見ない限り現れないわけだから、逃げ出そうと思えば夜でも逃げられる。


 (いや、誰かが見たら現れる)

 福間さんはもう一部屋くらいあると言っていた。狭い監視室くらいならがあるのではないか。置くとしたら、四方を見渡せる辺りか。家の中はあらかた探しつくしたはずだったが。


 隣で見ていた藍風さんに話してみると、窓からは目をそらさないまま、透き通るような声が返ってきた。


 「それは、そうかもしれません。誰かがゾンビが現れるようにしたのですから、でも、目的ですか…」


 「綾小路さんの親戚が建設した時にはその仕掛けがあったわけですから、そこで何がしたかったかですね」

 窓の外ではゾンビが潰されている。毎日よく体力が持つと思う。私達は結局、見ているだけと言われても仕方ないのに。しばらく間を開けて、再び口を開く。


 「目的は、誰かを殺すこと、です」

 こういうのを女子中学生に話してよいのか少し考えたが、今時はネットで何でも知れるし、仕事には変わらない。

 「つまり、室内にいる誰かが夜中に窓の外を見れば、驚いて家の中に隠れるでしょう。そうすればゾンビはいなくなる。それに気づいて室外に出たところをどこかに隠れていた誰かが見れば良いだけです。監視カメラには映らないので、映像が粗ければ、恐らく転んだか何かで死んだように見えてしまうのでしょう」


 「そうですか…。それなら朝になってから出ればよいのではないでしょうか」

 藍風さんの言うことはもっともだ。


 「これも推論ですが、夜中に出ざるを得ない理由をとってつけるのではないでしょうか。例えば家族がゾンビに襲われて危ないだとか、早く町から出ないと危ないだとか。それを聞けば、チャンスがあれば外に出ようとすると思います」


 「それなら、車で出ようとしても室内から駐車場に行けなくなる仕掛けがあるのかもしれません」


 「そうですね、焦って玄関や窓から出て、外から駐車場に行くかもしれません。できると思ったことができないから冷静さを欠くわけですか」


 窓の外ではゾンビの解剖がされている。それを調べてどう進展するのだろうか。見た感じ、腐った人間の内臓だ。中身が溶けていないから新鮮な?死体のようだ。あまり見るものではない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 少し経ってちょっとした疑問が湧いた。どうして、殺人が目的なら、こんなまどろっこしい方法を使うのだろうか。怪奇次第ではもっと簡単にできそうな気もする。


 (そうか)

 自分で考えてすぐに答えが出る。襲われている姿を見たいから、だ。それしか才能がなかっただとかそれしかやり方がなかったというのもあるのかもしれないが、だったらここまで複雑なことをするだろうか。


 それに、下調べではこの洋館付近で人が変死したという話はなかったはずだ。ということは狙いは身元不明人だろうか。あるいは、死体をすぐにどこか別のところに運んだのだろうか。いずれにしても綾小路さんの親戚が怪しすぎる。


 松本さんたちが引き延ばしていた理由はそれだろう。綾小路家の中でもその親戚派の人は何か知っていて、隠すために依頼をダメにして、その後に洋館を綾小路さんから譲り受けるなりするのだろう。あるいはその交渉のための時間稼ぎか。どのくらい貰っているのだろうか。


 そのうち朝が来たのでいったん考えるのをやめて、朝食を食べるのに下に降りた。



 その後の話し合いでは、ゾンビは確かに元人間だろうということが分かったくらいだった。大屋さんは死んだ目をしていた。部屋に戻ってから私達は福間さんに昨晩の考えを話した。彼女も仲間に連絡して調べると言ってくれた。


 私と藍風さんは四方を見渡せる場所を探した。二階から上に行こうとしたが、洋館の窓は開かない。天気が良かったので外から梯子を使って屋根に上った。上って見て分かったのだが、屋根のてっぺんには隙間があった。下からでは見えないようになっていた。


 (どこかを操作するとせり上がるなりするのだろう)

 そこで腹ばいになって監視すれば四方も見渡せて、目立たない。どこにスイッチがあるのかだが、室内の人に気づかれないようにするには…。


 (あった)

 屋根の上、飾りの中にハンドルが隠してある。人力か…。少し回すと音を殆ど立てずに、屋根の一部がせり上がってきた。背の低い小部屋だ。窓が四方に付いている。すぐに元に戻して下に降りる。古くなっているだろうから、本来の性能を発揮できていないかもしれない。振動が室内に響いて気づかれる可能性がある。


 後は、窓の仕掛けとこのゾンビが現れる根幹が分かれば対策のしようがあるだろう。藍風さんの能力も発揮できるかもしれない。

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