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第70話 停滞(前編)

第70話 停滞(前編)


 さて、朝の話し合いで分かった、決めたことは次の通りだった。

 ・ゾンビは窓からの視線が全てなくなると急に消える。日が出たときと同じ。

 ・昨晩は道具を使ってくることはなかったが、手ごたえがあるようになってきている気がする。要注意。

 ・洋館内や森を探っているが、今のところ何も見つからない。

 ・ゾンビに襲われても、感染しない。ただし、直接の接触がなかったからなのか、死んだからなのかは不明。(今までの報告と同じ)



 依然として手がかりはなく、不可解だ。ただ、ゾンビの捕獲がほぼ不可能ということだけがわかった。大体見える範囲は調べつくした。観測をしてはいるが、何が起こっているのか、窓から見える範囲からではわかることが少なかった。多分、ゾンビを追い払っている人たちも同じことを思っているかもしれないと思った。目的が不明だった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 自室に藍風さんといると(別の部屋の探索をしようか打ち合わせをしていたところだった)ノックの音が聞こえた。


 「どうぞ」

 他の人が部屋に来たことは今までない。謎に排他的だったからだ。警戒する。誰だ。


 「どうも。ちょっといいですか」

 福間さんだった。藍風さんの方をちらりと見ると、軽く頷きながらも私に返事を任せているようだった。そういえばこの部屋は私のだった。


 「ええ、どうぞ。どういった御用でしょうか?」

 バイタルサインは、少し緊張しているのだろうか。表情は読みにくい。読心者でもないから考えていることは分からない。


 「まあ、率直に言いますと、もう一部屋くらい隠されているんです」

 椅子に座ってすぐ、福間さんは口を開いた。ちなみに藍風さんが先ほどまで座っていたものだ。今は私の後ろに隠れるようにしてベッドに腰掛けている。


 「どういうことでしょうか?よくわからないのですが」


 「えーっとですね、仲間に別で調べてもらっていたんですよ。この洋館を建設するのに携わった所から、当時の工員や材料の出納をですね、そうするともう一部屋以上は作れてもおかしくないという話になりまして」


 「なるほど、そういうことがあったのですか。それで、どうしてその話を朝食の後にしないで、私たちにだけするのでしょうか?」


 「あなたは分かっているでしょう?この依頼、というよりここに集まった人達は怪しいって」

 そうだよな。きな臭い点が多すぎる。ただ、


 「どういうことでしょうか?怪しい?リーダーの松本さんに尋ねてみたらどうでしょうか?」

 福間さんがその一味ではないという保証はない。藍風さんは無表情を装っている。が、混乱しているのを隠しているようだ。


 「あの3人も怪しいですからね。どういったら信じてもらえるか…。何か良い方法は…」


 「上野さん、福間さんは本当のことを言っていると思います」

 藍風さんが後ろから唐突に言ってきた。藍風さんがそういうなら、そうだろう。


 「なら、そうですね。それで、どの辺りにあると踏んでいますか」


 「納得してもらえたなら、肝心の場所なんだけれども、図面と洋館は一致しているんです。だから、あるとしたら地下、それに水はけの感じからすると多分駐車場の下が怪しいんです」

 そういうことを夜中に調べていたのか。


 「それなら、もう出入口は分かっているのでしょうか」


 「一応、一通り見てはみたんだけれども、見つからなかったんですよ。だけど、観察する立場で来ている2人なら分かるかもしれないですよね」


 「なるほど。では早速、探しに行きますか」


 「よし、行きましょう!」


 私達は階段を下りて駐車場へ向かった。途中、福間さんが後ろで藍風さんに「仲がいいんだね」と言っているのが聞こえた。返事は聞こえなかったからジェスチャーで返したようだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 駐車場には4台の車が停まっていた。それぞれの地区から来た人(達)のものだ。普通の駐車場で両壁と床、天井はコンクリートだ。外から出入りするためのシャッターと中から出入りするためのの扉(壁の端にある)がそれぞれの側についている。


 「下にあると思うんですけど」

 駐車場に着くなり、福間さんが言った。


 「車があるから調べにくいですね」


 「そうなんです。車の下も覗き込んだんですけれど、何も見えないんです」


 私達は一通り見て回ったが福間さんの言う通り、何も見つからなかった。


 「当てが外れているということはありませんか。出入口なら見て分かりそうですが」

 申し訳ないが、そう思う。出入口なら見て分かるだろう。


 「うーん、でも、ここくらいしか残っていないんですよ…」


 「そうですか…。失礼しました。それなら、少し待っていてください」

 自分の車に乗り込んで、トランクにある工具箱を出す。そこからゴムハンマーを取り出す。

 「これの打音で分かるかもしれません」

 出入口は既に塞がれているかもしれない。


 床に耳を近づけて叩いていく。音を立てないように2人には隅に行ってもらっている。こんなもので分かるのだろうかと思いながら床を叩いていき、車の下の床は棒につなげて叩いていくと私の車の下に反響音が異なる一画があった。


 「ここの下です。出入口があるなら探す、ないなら穴を掘るくらいでしょうか」

 それと、この駐車位置が最後まで空いていたということは、松本さんたちは何か怪しいが、全て知っているわけではないようだ。もしそうなら真っ先にここを塞ぐ。


 「それなら任せてください!車を動かしてもらってもいいですか?」

 言われた通りに車をずらす。軽自動車だからぎりぎりまで寄せれば、結構なスペースができた。

 「それじゃ」


 福間さんが札を貼って何か唱えると、その場のコンクリートが消えた。正確には爆発で吹っ飛んだような痕跡が残ったが、音も破片も見当たらなかったし、爆風も来なかった。下には空洞があってすえた臭いが漂ってきた。

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