第234話 他チームの仕事3
第234話 他チームの仕事3
プールサイドには既にほとんどのメンバーが集まっているようだった。私はまずビールを取りに行き、まずはそれを1本飲んで、もう1本を持ってどこに行こうかと考えた。このことから、よく考えると、私は特定のグループに属しているわけではなかった。例えばスペイン語圏のメンバーはよくまとまっていることがあったが、色々とあって私はそうではなかった。そうは言っても、そのまとまりは割と緩く、私も、他の人たちも大体誰とでも話していて、このときも一見ばらばらに見える集まりができていた。
何も考えずにその内の1つに行って、ロイに「やあ」と声をかけると「やっと戻ってきたんだ」と言われた。私たちは一番最後だった。
「大変だった?」
ロイが手近にあった肉料理の盛られた皿を私に渡しながら尋ねた。
「そうですね。ゴーストタウンで連日、夜の見回り。怪奇的なことはあまりなかったけれども」
ルーカスの件を伏せると実際そうだった。
「並以上の霊能力者が行くと、その悪霊の集合体は姿を隠すらしのです。どうにかして手がかりを見つけるのが仕事だったのですが、残念ながら」
「それは、並以上の人たちが行ったからじゃない?」
ロイはもっともな指摘をした。
「それでも、何かそういうベールを貫通するのを期待されていたようでしたね」
「そういう考えもありだね」
納得した風なロイはビールを飲んだ。私も飲む。
「実は、ジェラルドがたくさんデータをとりましたから、そこから何か分かるかもしれません。どちらにしても仕事は成果なしで終わりです」
「そうか。僕たちは当たりだったかな」
ロイは少し嬉しそうに、聞いてほしそうにしている。
「どのようなのでしたか」
「海だよ。飛行機に乗って、きれいな砂浜のある観光地に。天気もよかったし、気温もそれほど暑くなくて快適だった」
ロイはその旅行(?)を思い返しているが、肝心の内容については…。
「それは良かったですね。それで、どういった怪奇でしたか」
「ああ、そうだった。夜、砂浜に現れる幽霊の足跡だった。朝、見に行くと、いつの間にかたくさんの足跡が点々とできているんだ。更にね…」
ロイが含みを持たせ、またビールを飲む。私も、折角もらったのだからと肉料理を頬張ってみる。牛肉のステーキだ。美味しい。甘辛いたれがビールを欲しくさせる。
「その足跡は、とあるホテルに続いていたんだ」
話が再開したが、まだビールを飲んでいる途中だ。急いで流し込む。それでも美味しい。
「そこは曰く付き…ではなさそうですね」
「そうなんだよ。だから、長丁場になると思ったんだけれども、初日に終わった。それ、幽霊じゃなかったんだ。何と言うか、足の化け物。それらがこんな風に繋がっていて…」
ロイが紙にトリスケリオンの足が多い版、円から足がたくさん生えている絵を描いて説明してくれた。
「それらが回りながら動いていたんだよ。本当に運よく、僕たちは何故かそれらを見つけた。どうして今まで見つからなかったのか不思議なくらいあっさりとだった」
うらやましい限りだ。私たちもそうだったらよかったのに。
「それで、どうやって対応したのでしょうか」
「逃げていったよ。念のため翌日も残ったけれども、実質バカンスだった。足跡は現れなくなっていたよ」
「大当たりでしたね」
「運が良かったんだ。何故その日出てきたのか、僕たちも話し合ったんだけれども、潮の満ち引きや星の配置が関係しているんじゃないかってカミラは言っていた。結論として、何もしなくてもしばらくは現れないだろうということになった」
「不思議な話ですね。ところで、来週、何があるか知っていますか」
それから、ロイと翌週にある何かについて話した。彼も見当はついておらず、大体私と、つまり、他の人たちと似通ったような想像をしていた。選ばれなかったなら都市観光と家族へのお土産を買い揃えるつもりだと言っていた。
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他のメンバーも自分たちが出会った怪奇の話は勿論、家族や出身(家の近所)といったプライベートなことも含めて話していて、私も何人かと話したが、どうやら誰もが翌週の、ピーター氏が私たちを集めた理由を知らず、自分は選ばれないだろうという前提で考えているようだった。
判断(評価)基準がまずそもそも分からなかった。私は部屋に戻って荷造りをして、硬貨虫を小さいケースに移す準備をして、ベランダからの眺めを何となく見てから(下はまだ騒いでいた)、ベッドに入った。




