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第220話 地下洞窟(前編)

第220話 地下洞窟(前編)


 2回目の仕事を一緒に行うメンバーは前回とまるで違っていた。アンドリュー(南ア)、ロイ(パプアニューギニア)、クロミドロ(ニカラグア)、ルーカス(伯)とサポートのニックは皆明るい性格で話が好きで、移動中も常に誰かが口を開いていた。私はそこまででもないのだが、誰も無理強いをしなかった。皆紳士的だと思う。


 全員が戻ってきて(あるいは戻された)少し経ったある日、私たちはニックの運転するバンで半日近くかけて、日付変更線をまたいで、山の中にある、とある地下洞窟へ向かった。洞窟好きやその町で時間を持て余す人が行くような、貴重らしいが用がなければ行かない、そういう所だ。


 昼食は途中のフードコートで食べた(炒飯を食べた)。ありがたいことにベースは近くのホテルになっていた。チェックインしてから出かけるまでに少し休憩を取った。私は日本のホテルとそう変わらない広さの部屋で、今回の依頼のことを思い出していた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 その地下洞窟では入場人数を制限している。狭い中に大人数が入ったら酸欠で死にかねないからだ。そのため、洞窟と地上をつなぐエレベーターの前で係員が人数をまとめて管理している。


 その数が1人、減ることがあるようになった。始めの頃は数え間違いかと思っていたらしい。それでももし、誰か洞窟内に置き去りになっていたら大変であるからと、一通り探し回ったが誰もいなかったそうだ。一度や二度なら係員のミスで片付くのだが、それが不定期的に起こり続けている。


 代表者に人数を書かせて管理すると、1人で来た観光客が戻ってきていないことが分かった。そして、監視カメラを導入するとその増えた1人はしっかりと映っていた。人種も性別も年齢も名前もまちまちな存在として映っていた。映像を見るまでは、誰も戻ってこなかった人の顔は覚えていなかった。


 それらしい行方不明者の情報はない。しかし、本当の人間が洞窟に入った後で消えた可能性もある。怪奇がエレベーターに乗る前に現れていて、洞窟の中で姿を隠した可能性もある。どちらにしても、毎回人数が違うたびに洞窟内を調べ回って、この事象と関係のない遭難者がいるかもしれないと探し回るのは非常に労力がいる。だからこの現象なのか怪奇なのかを片付けるのが仕事だ。


 本当に人が消えているなら大問題だと思うが、どうなのだろうか。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 私たちは夕食をそのホテルのレストランで食べて(ビフテキとサラダだった。これがまた美味しかった)、営業時間の過ぎたその洞窟へと向かった。そこは岸壁に接する形で2階建てのビルがあり、その中にファーストフード店やお土産屋が入っていた。洞窟の入り口もその中にあった。


 私たち5人(ニックは地上で待機した)は通常の手順通り、代表者ルーカスの名前を書いて、エレベーターに乗って、洞窟へ入った。中には暗い照明が置かれていて、それと電源をつなぐコードが床面を這っていた。それ以外はほとんど剥き出しの乾いた岩肌が見えるだけだった。


 「暗いね」

 アンドリューが懐中電灯のスイッチを入れると、他のメンバーもそれに倣った。


 「ウエノはいらないんだよね。クールだね」

 ロイが笑いかけてきた。


 「まあ、それくらいだけですよ」


 「誰か、何か感じる?」

 クロミドロが視線に合わせてライトを動かして、床を調べている。


 「いや」「だめだね」「分かりません」


 「幸運なことに、本当に人が消えているわけではなさそうだ」

 ルーカスが何かしらで判断したようだ。


 「良かった。それじゃ、行こう」

 アンドリューがそう言って、洞窟の先へと歩き始めた。私も遅れないようにその後ろの後ろに続いて足を進めていった。


 洞窟は、大人2人が横並びに進める程度の幅を最低でも持っていた。外よりも涼しく、話し声は反響して(ただでさえ英語だから聞き取りにくいのに)別の国の言葉が飛び交っているような感じだった。天井は時に数階分の高さまであり、時に2mもなく、ドーム状のところも、巨岩同士の隙間を道にしたようなところもあった。確かに一見の価値はあった。私たちはそこをゆっくりと進んでいった。

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