表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/305

第183話 立体(前編)

第183話 立体(前編)


 以前私は桾崎さんと一緒に行った小学校で自らをアイドルプロダクションの555プロの社員、佐々木という人物と偽ったことがある。こういうことは依頼中、身分が知られると危ない人相手や、それ以上に名前を知られること自体が危険なモノを相手にする場合によく行っている。後は単に面倒に巻き込まれたくないときだ。どうせ一度しか会わないような人たちなのだから、それでよい。


 そのことを思い出したのは今回の依頼主が555プロ所属の宍戸ありす(芸名は宍戸アリス)さんだからだった。藍風さんからゴールデンウィークに受ける依頼が決まった連絡があって、その詳細が送られてきたときに、背筋に嫌なものが走ったのを覚えている。まさかテレビに出るような人、それも首都にある会社の人が依頼主になるとは思っていなかった。プロダクションの名前を勝手に使ったことは知られてはいないだろうが、次から騙る名前はよく考えようと思う。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 世間が長期休暇となる前日、冷蔵庫の中を片付けて、水まわりを片付けて、それからガタガタと音を立てている硬貨虫にクリップとアルミ、石を山積みに与えて、尻尾の硬貨(表が平面で裏が銃で撃たれたようなヒビ模様で、緑白色)をもらって、と過ごした。藍風さんからの連絡があったのは、早めに荷造りを終えて半端に開いた時間に硬貨虫と(硬貨虫で?)遊んでいるときだった。


 迎えに行くために車に乗りこむと中は少し暑く、もうそうした時期になったのかとうんざりした。ジャケットの上着を後ろに置いて、シャツの袖をまくって、窓を少し開けていたら熱は消えて行った。


 藍風さんの家に着くと彼女はいつものように門の前で待っていた。春めいた若竹色のシャツに紺色の上着を羽織って、赤茶色のワイドパンツにスニーカーを履いていた。春風が髪を揺らして、日差しを反射して輝いていた。サイドブレーキを引くと助手席側の扉が軽快に開いた。


 「こんにちは、お願いします」


 「こんにちは。こちらこそお願いします」

 藍風さんが一旦扉を閉めて、トランクに荷物を乗せて、また助手席の扉を開けて、シートに腰掛けた。動くたびに髪が滑らかに耳をかすめて、光の模様が変わっている。


 シートベルトを着けたのを確認して、エンジンをかける。行き先は空港だ。車内にはクラリセージのような落ち着く香りがしている。


 「もう暑くなってきましたね」

 信号に引っかかった。


 「そうですね。家の中の方が涼しいです」


 「布団も1枚いらなくなりましたし」

 横断歩道を小学生たちが走って渡っている。


 「夏は暑くなければ好きなのですが、そうは行きませんよね」


 「本当にそうですね」


 空港に着くまで話したことは、夏の話だった。2人とも暑いのは苦手で、海を見るのは好きで、夏の夜風が好きだった。藍風さんにとっては受験勉強の期間になるだろうから、それを応援すると、少し照れたように頬が色づいて伏し目になっていた。志望校は「このまま行けば、多分、大丈夫です」と言っていたから、藍風さんの自己評価を反映すると、余裕なのだと思う。


 それから、半分やはりと思ったが、助手席に桾崎さんを乗せたことを気づかれた。座席の位置は動いていなかったが、普段使っている人には分かる何かがあったのだろう。藍風さんは観察力がある。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 夕食は空港の中で食べた。ファミレスでハンバーグセットを頼んだ(藍風さんも同じだった)。こういうところのは値段の割にまずいのが相場で、私は腹が膨れる量があれば妥協するが、このときは口にするまで多少緊張した。飛行機に乗っている間、藍風さんが勉強をしていたからその隣で寝るのもばつが悪く、私も本を取り出して読んでいた。



 首都に着いた後、大分暗くなった街を一瞬通り過ぎて、地下鉄に乗って依頼者の待つホテル(そこがそのまま滞在場所である)に向かった。独特の臭いの中には研究室から出てきたであろう大学生たちや酔っても難しそうな話をしているサラリーマンたち、旅行に来ているであろう大きなトランクを持った外国語を話す人たちといった、G県では見かけない風景があった。


 ホテルは、高級なところだった。泊まることができたのは555プロが奮発したからで、普通の依頼中に使ったら差額は自腹になって、それで普通の所に泊まれるような場所だった。着いてから宍戸さんに連絡を入れると、少ししてから会議室で会いたいと返事があった。その間に各々の部屋に行って、隅々まで確認してから荷物を置いた。それから、藍風さんと一緒にエレベーターに乗って宍戸さんの待つ会議室へ行った。

女性の服装は難しいですね。書こうとすると手が止まって、時間がかかります。


評価やブックマーク登録、励みになりますm(_ _ )m 。

評価は「ポイント評価」で行うことができます。

いいな、と思ったらネタを考えるモチベ維持のためによろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ