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第178話 松の木のある家(中編)

第178話 松の木のある家(中編)


 やがてみーさんは小さくうなずくと立ち上がって腰を伸ばした。その拍子に床の埃が舞って窓の外から入った光に反射した。


 「何かわかりましたか」


 「ばっちりですよ。あの怪奇が来るかもしれないし、外で話しましょー。それに埃っぽいですしー」

 安全な場所ならみーさんと手をつないで見せてもらうこともできるが、ここを離れる方が先決だろう。


 私達は慎重に部屋を出て階段を下りて、静かな家の中を進んだ。家電からも平成初期までは人が住んでいたことが分かった。今にもかつての家主か、例の怪奇かが出て来そうであった。他人の家に侵入しているような(実際ほとんどそうだが)変な緊張があった。



 敷地の外に出て、そこから少し歩くとやっと肩の力が抜けた。深呼吸すると体に付着した埃が鼻腔に入ってきた。私達は橋を渡ったすぐ先にあった自動販売機で飲み物を買って、それからその近くの、大き目の石に腰掛けた(恐らく他の人がそうするために誰かが置いたのだろう、周りの様相から浮いていた)。


 「それで、昨日のアレなんだけど、やっぱりとみ子さんと関係ありましたねー」

 みーさんはそう言うと、ペットボトルに口を付けてのどを潤した。


 「なるほど」


 「憶測も混ざるんですけど、とみ子さんの徘徊は元々のことでー、それをアレがあの家から見たなのか、見ていたなのか、見つけたなのか…、とにかく見て、連れて行ってたんです」


 「連れて行った、ですか。しかし、家の人は徘徊をしなくなったと言っていましたよね」


 「えーと、多分、私的には魂って言っているものの一部を、だと思います。徘徊に関わる部分を。だから、その時間になるととみ子さんは一点を見つめて動かなくなるんですよー。本人はいつものように歩いているつもりかもしれないですねー」

 魂の一部か。分かったような分からないような気がする。そういうことができること自体がまず不思議だ。それを連れて行った理由もわからない。


 「みーさん」

 飲み物を口にしている彼女に問いかける。


 「何ですかー?」


 「魂は、見えるのでしょうか」


 「私はあまり見えないですが、上野さんなら見えそうですねー」

 そうなのか。今まで見えていてもそれと気づかなかっただけなのかもしれない。


 「それから、例の怪奇を何とかしたとして、とみ子さんに魂の一部は戻るのでしょうか」


 「えーと、それは、分からないですねー。連れて行っただけなのか、食べたか使ったかしたのか、やってみないと分からないです。山根さんに決めてもらいましょー」


 みーさんが電話をしている間、私は何となく自動販売機のラインナップを見ていた。山根氏の返事は1日考えさせてほしい、だった。確かに急な話で、かつ今までの常識とかけ離れたことだから、即決できなくても不思議ではないと思った。しかし、その分依頼料が増えていく。私達の滞在費や食費分だ。対応だけをこの地域の協会員にバトンタッチするのも手だろうが、今回はそうはならなかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 それからタクシーで旅館に戻って、汗と埃を落としてから、昼食を食べに行った。しかし、開いている所がなかったから、コンビニで弁当を買って私の部屋で食べた。私はチキンカツ弁当、みーさんはナポリタンを選んだ。もそもそしていたし、米は潰れて味気なかった。みーさんからは湯上りのシャンプーの香りがしていた。


 食事を終えた後、次の予定は特に入っていなかったから、自分たちの部屋でそれぞれ時間を過ごした。アレへの対応の仕方はシンプルにシンプルに札でどうにかすると決めていたから、やったことは読書だった。(みーさんは仮眠を取ると言っていた)



 日が落ちた頃、みーさんと一緒に夕食兼飲みに居酒屋へ行った。ようやくまともな食事にありつけたから、私はまず親子丼を頼んで(みーさんも同じものを頼んでいた)、腹と舌を満たしてからビールを飲み、肴に焼鳥を食べた。脂が乗っていて美味しかった。流れていたアニメCMから昔のアニメの話になり、結構盛り上がった。昔よりも最近の方が当時のアニメを見ている。子供のときに見ても面白かったが、大人になってから見ると違った視点でまた面白い。


 泥酔しないように早めに切り上げて、コンビニに寄って翌日の朝食を買ってから部屋に戻った。水を飲んで酔いを醒ましてから、風呂に入って、さっぱりした後はのんびりとした。藍風さんと桾崎さんから来ていたSMSに返信をして、居酒屋で話したアニメの原作の漫画を調べて、一巻目が無料だったから読んで、読み終わるといい時間になった。スマホを充電ケーブルにつないで、電気を消すと睡魔は思ったよりも早くやって来た。

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また、「逆行転生した私は生存競争を生き残ります!」を改稿しました。本作と関連があるようなないような、な内容です。もしよろしかったらご覧ください。

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