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第174話 徘徊(前編)

第174話 徘徊(前編)


 仕事が欲しい。協会のHPを見ても、自分が見ることができる依頼は少ない。その依頼も大抵は雑用に近いもので、たまにあるのは多分倍率が高いのだろう、滅多に採用されない。雑用でも良いから(伝手を作るために)やるべきなのか、普通に仕事をするべきなのか(時給換算すると?福利厚生は?怪奇絡みの仕事は並行できるか?その時間があったら他にできることは?)、悩みは尽きない。今更普通の仕事に戻ることもできないだろうし、怪奇絡みの仕事をすると決めたのは自分だ。向こうから依頼が来るくらいまでにはなっておいた方が良いだろう。


 協会はどうなのだろうかと思うこともなくもない。日本で最大の組織で能力者の大半は所属している。能力者同士をつなぐとも、知識を集めて普及するとも謳っている。実際、所属はしていても別の集団の方がメインの人も多そうだ。結構秘密主義で、所々身内身内な気もしなくもない。


 協会以外の伝手は弦間さん、嶽さん、それから古見さんだ。古見さんとは例の件以来連絡を取っていない。例の幽霊を探すのもいつでも良いと言ってくれている。別件で行ったときに見つけたらついでに幽霊瓶に入れれば良いだけだ。


 こう考えるのは五月病なのだろうか?よくわからないが、収入や先行きが不安だからなのだろうか。受け身すぎると言われるだろうか。依頼の大半は知人と、特に藍風さんとやっている。今回はみーさんの依頼の手伝いに行った。



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 朝からどんよりと曇っていた。朝食など諸々を巻きでこなして、準備していた荷物を持って家を出た。余裕を持って動けばよかったのだが、微妙な時間だったからいつも通りに起きたらぎりぎりで文松駅に着いた。荷物を前日に準備していてよかった。


 それからG駅行きの電車に乗って、少し荒くなった息を整えてからタブレットで読書をした。文松駅―G駅間は短編を読むのにちょうど良い。古くても名作は名作だ。G駅でみーさんと合流して、それから一緒に新幹線に乗ってD県まで行った。


 新幹線の中で駅弁を食べる以外は大体スマホを操作して、D県の、伊西町の情報を調べるか、呪術の本を読んでいた。その最中にも頭の隅で、今回の依頼を思い出していた。



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 今回の依頼はD県伊西町の山根慎吾氏からのものだ。同居している山根氏の母(とみ子さん)がおかしいらしい。

とみ子さんは年を取っていて、1年前から徘徊癖があった。とはいえ、移動範囲は近所に限られているし、夜中に外出したのは数回だったから特に何もしていなかった、強いて言えば、夜外出した後は諫めていた程度らしい。それ以外のトラブルもなく、穏やかであったそうだ。


 それが、最近になって全く外出しなくなった。いつも徘徊しに行く時間にとみ子さんを見に行くと、必ず部屋にある箪笥の方を向いて座っているらしい。話しかけても反応せず、肩を揺らしてしばらくしてら反応したそうだ。さらに、一度大き目の地震があったときも全く反応せず、微動だにしていなかった。


 医者に相談してもそういうものだと言われたらしい。腑に落ちずにいたところで、とみ子さんが徘徊しているのを観察する夢を見たそうだ。夢の中でとみ子さんは部屋にある箪笥の方を向いて、半透明になって分裂して、1人は座ったまま、1人はそのまま徘徊を始めて、家から出ると黒いもやと手をつないで歩いていたらしい。その夢を何度も見るという。


 母の徘徊が止まったのはその夢の黒いもやと関係があるのではないか、母がいつの間にか消えてしまうのではないかといてもたってもいられず、協会の存在を伝手で知って、依頼をしてきた。


 依頼内容は黒いもやの正体を突き止めて必要なら対応することだ。徘徊云々は私達にはどうすることもできないし、山根氏もそれを望んでいない。



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 伊西町に着いたとき、外は晴れていた。駅前にタクシーはなかったから、電話で呼んで少し待ち、それから山根氏の家まで向かった。

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