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第157話 夜桜(前編)

次こそ、次こそ当日中に更新を…。

昨日よりも早く更新できたから、この勢いでできたらいいな、です。

第157話 夜桜(前編)


 最近は晴れの日が続いていて、例に漏れず朝から天気が良かった。さらに朝食に目玉焼きを作ろうと、フライパンに卵を落としたら黄身が2つあった。適当に作ったインスタントコーヒーもちょうど良い濃度だった。


 いつも通り勉強をして(日本史は聞き流すだけなら面白いが、年号や人物の名前を覚えようとすると大変だ、覚える必要があるかは別として)から家事をした。換気のために窓を開けると、はっきりと暖かい風が入ってきた。


 昼食の後、この天気の良さなら頃合いだろうと思い、夜桜を見に行くことにした。1本だけ山中にあったのをしばらく前に見つけていた。以前の自分なら考えもしないことだ。幸い、登山やキャンプの道具は怪奇と関わるようになってから充実していたため、スーパーマーケットに行って日本酒、つまみと肴を揃えただけで済んだ。


 それから風呂に入った。昼間に入る風呂は何か優雅な気持ちにさせられる。窓から外の光が入ってきていれば尚更だがこの家にはない。お湯がいつもよりもぬるく、しかし滑らかに感じる。同時に夜勤のときのことを思い出すのが難点だ。


 布団にもぐるとカーテンから漏れた光が気持ち良かった。昼間の睡眠も同じだ。かつては特別な気分になったものだが、最近は依頼でしょっちゅうしているから、そこまででもない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 夜、予定通りにスマホの振動音で起きてから夕食を軽く食べた。それから外が晴れているのを確認して、適度に時間を潰すのに本を読んだ。どうせなら夜中に行こうと思ったからだ。



 本をキリの良いところまで読んでから、リュックサックに道具と酒、食べ物を詰めて外に出た。月と星がきれいだった。最近は暖かくなってきたが、そうは言っても夜中に自転車に乗ると少し冷えた。アパートや一軒家の2階にちらほらと明かりが見えたが、他は静まり返っていた。遠くで車が走る音が聞こえた。人のいない道路を通って桜へ続く山の中腹(と言っても殆ど道路を通って行くことができる)を目指した。


 私は山道からけもの道が見える所で自転車を止めて、それから念のため木の陰に隠した。けもの道は地元の人がよく使っていて、最近も使ったのだろう、足跡が残っていて、ある程度は整えられていた。最も昼間でなければ滑り落ちるような場所が数か所あったが、私には簡単に避けることができた。街灯も人の家から漏れる明かりもなく、月明かりが僅かにあったのみであったため、完全にプライベートな空間だった。(他の人が来ていれば明かりが先に見えるだろう。)野生動物が来れば音と臭いですぐに分かるし、この辺りにはそこまで危険なものはいない。



 桜の木の元にはこれも地元の人が利用しているためであろう、地面はならされていて、座りやすい石が3つあった。その1つにリュックサックを置いて中身を取り出し、少し冷めた焼鳥をつまみながら日本酒を飲んだ。あまり広くなかったため火を焚くことができなかった(後は明かりで人が来たら面倒だった)。


 (風流だ…)

 芸術に明るいわけではないが、暗闇のはずの中で光るように見える夜桜はきれいだった。その後ろに少し隠れるように月が怪しく映っていた。日本酒を飲んで体を温め、桜と酒の香りが混ざり合うのを楽しんだ。


 お猪口を石の上に置いて一息つくと、風が桜を静かに揺らして花びらが日本酒の表面に浮いた。地面に落ちたものが波のように流れて遠くに消えていった。


 (平和だ…)

 酔いが少し入った頭で考える。昔の人はこういうのを詩に読んで楽しんだのだろうか。ワイワイと騒ぐよりも好きだ。ぼーっとしていると、またもそよ風が吹いて桜の花びらが落ちた。先ほどの残りが風に流された。


 (おかしくはないだろうか…)

 妙に思った。ここに来た時、地面には花びらが落ちていなかった。特に気にしてはいなかったが、地元の利用者が片付けたのか、まだ時期ではなかったのかと考えていたのだと思う。しかし、今は違う。ここに来たのは夜中だ。その間に風は吹いていた。花びらは誰が片付けたのだろうか。


 分からないモノ、危ないモノからは逃げるに限る。急いで荷物を片付けようと足に力を入れた瞬間、突然、桜の陰に何かが現れた。


 「一杯、下さいな」

 落ち着きを持った低い女性のような声が聞こえた。

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