第156話 頭痛(後編)
次こそ当日中に更新したいです…。
自分が2人いたらいいのに、です…。
第156話 頭痛(後編)
『怪奇についての質問をしてもいいですか?』
珍しい。何だろうか。桾崎さんの方が詳しそうだが。
『大丈夫ですよ』
続きはすぐに来た。
『嶽さんから宿題が出たんです。怪奇をどう感じ取っていますか?教えてください』
宿題か。色々と大変なのだろう。しかし、改めて聞かれると難しい。
『少し考えますから、待ってくださいね』
そう返信すると、『ありがとうございます!』と返ってきた。
メモ用紙を傍らに用意して考える。前提として、この、今自分がいる世界(こちら側)と怪奇がいる世界(向こう側)に分けられる。向こう側は複数あるだろうが、その辺りは詳しく知らない。怪奇毎に分かれているのだろうか。それとは別に異界(異世界)がいくつもあって、夢の世界もここに含まれていると思う。
怪奇がこちら側にいるときは姿を隠していても、波長の合った人や感じる人にはその姿を見ることができる。怪奇によっては姿を隠さずにこちら側にいる場合もある。このくらいだろうか。
『私の場合、見た目はこちら側のものや人と同じです。ですが、目を細めたり、だて眼鏡をかけても像がぼやけないので、区別はできます。こちら側に姿を現していると姿が二重に見えます』
以前までは、桾崎さんとやり取りをするときは、小学生がどこまで漢字を読むことができるだろうかと考えていた。ただ、彼女に限ってはだいたい読めているようだ。彼女の専門知識は漢字まみれだ。
『ありがとうございます。僕には向こう側のモノは明らかに違って見えます。見た目以外も気配で区別できます。上野さんはどうですか?』
他人が怪奇をどう感じているのか、自分が怪奇を感じるようになり始めの頃は気になっていたが、近ごろは意識しなくなっていた。
『気配は分からないんです。だから、完全に姿を隠されるとお手上げですね。見た目以外は、音も重なって聞こえます』
返信して思ったが、味や臭いは二重になっている感触がしない。この先成長するのだろうか。触覚は、何となく分かるような気がする。
次の返信が来るまで、メモにまとまりのない思考を書き出していく。怪奇によっては音だけをこちら側に出しているモノもいた。臭いや姿だけを出しているモノもいた。私には音だけの怪奇と区別することはできないが、気配が分かればできるのだろうか。
『僕たちには音も気配も同じに感じるんです。人によって違うんですね。ありがとうございました!』
『どういたしまして。宿題大変ですね。頑張ってください』
『ありがとうございます。嶽さんに気配に頼り過ぎって言われたばかりだから、この宿題が出たんだと思います。頑張ります!』
その後の短いやり取りで桾崎さんが久々に自宅にいるということが分かった。学校はともかく、勉強やその他の学びの機会は大丈夫なのだろうかと心配になる。
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することもあらかた片付いて、大事をとって早めに寝ようかと思った時、部屋の水槽がガタガタと音を立てた。水槽の中の硬貨虫が元気に動いていた。尻尾の硬貨(クリーム色で表に狐、裏に鼠が彫ってあった)を回収するのに手を入れたら、硬貨虫が手にすり寄ってきた。たまにはこういうことをしないとストレスがたまる(?)ようだから、されるがままにしておいた。もう片方の手でスマホを操作しながらよそ見をしていたら、手にぶつかってきた。結局、スマホをテーブルに戻して、定期報告書のネタ作りも兼ねて硬貨虫と遊んだ。しかし、10分も経たないうちに硬貨虫は飽きたのか、水槽の隅に行って動かなくなった。
再度スマホを見ると嶽さんから桾崎さんの宿題を手伝った(?)お礼が来ていた。返信すると、弦間さんと一緒に行ったパーティーについて、できるだけ注意するようにと返ってきた。弦間さんと嶽さんはそれぞれ陰陽道と修験道によって怪奇に対応しているが、その違いにも関わらず仲が良いようだ。閉鎖的な中でもオープンな人たちだと思う。
なんだかんだでいつも寝る時間まで過ごしてしまった。頭痛はもうなくなった。電気を消して布団にもぐってから、これからどうなっていくのか、どうしようかと漫然と考えた。まずは調整したスケジュールを進めて行こう。
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