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第147話 自分がしたことの意味(前編)

第147話 自分がしたことの意味(前編)


 最近、卒業式帰りの学生を目にすることが多い。制服やスーツ姿の学生が晴れ晴れとした姿で親や友達と一緒に歩いていて、自分にもそんな時期があったと懐かしさを感じる。それと同時にあの時ああなっていたら、ああしていたらと考えずにはいられない。過去に戻ることはできないが、忘れろというのも無理な話だ。


 それはさておき、先日ツァップさんから手伝ってほしいことがあると連絡があった。怪奇関係とのことだった。ツァップさんは最近、日本語が上手くなっている。独力で小さめの依頼を受け始めているそうだ。



 朝食を済ませた後、すぐに電車でG駅に向かった。荷造りをするほどの仕事でもないから、小さいかばんを持って出たら、途中でタブレットを入れ忘れたことに気付いた。読んでいる途中も気になったが、後にしてスマホで調べものをした。


 G駅に着いて改札に行くと、ツァップさんが出口で待っていた。青目にウェーブのかかったセミロングの金髪はそう珍しくないかもしれないが、スリムで様になっている容姿は目立っていた。高校生(相当の年齢)なのに小学生のような服装をしていることも目立つ一因だろうと思った。着こなして似合っていたが。


 「上野サン、こっちデス」

 発音も上手くなっている(が、微妙に異なっている。私の聴覚のせいかもしれない。後で変わるかもしれない。とりあえずこう書いておく)


 「こんにちは。今日はよろしくお願いします」


 「お願いしマスワ。じゃあ、行きマショー!」

 ニコニコしている。肌の白さにスマイルが映えている。


 「そうですね」

 まず車を、と言おうとして、タクシーを使う予定だったことを思い出した。



 私達は駅前に停まっている一台に乗って、町から外れたある路地へ向かった。道中、ツァップさんととりとめもないことを日本語で話した。プ○キュアを見て勉強したと言っていたが、好きな物をきっかけにするとこうも上手くなるのかと思った。車中にはアイリスのような香りが漂っていた。


 某路地には15分程度で着いた。タクシーを降りて目的の幽霊を探しながら、今回の話を思い出していた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ツァップさんが依頼を受けた帰りに、某路地にいた女性の幽霊に話しかけられたらしい。それ自体はよくあることだが(無視がほとんどで、稀に浄化するそうだ)、あまりにも念が強く、不思議なことを言っていたため興味を持ったそうだ。


 その内容というのは、「自分のことを児童たちは感謝しているのか」というものだ。この幽霊、佐藤という姓で、生前は先生をしていた。十数年前にこの路地で死んだらしい。たまたま登校の列と一緒になったその日、急に出てきた変質者から児童たちを庇って刺されたそうだ。そこからの意識は全くなく、何故か最近になって、自分が幽霊であることに気付いたらしい。


 その幽霊は、戸惑いながらも受け入れて、自分が動くことができる範囲(某路地の周り)を観察しているうちにふと、例の内容について考えたという。何故ならば、事件の痕跡は何もなかったからだ。その考えは日増しに強くなっていき、それで、ツァップさんに話しかけたそうだ。



 私やツァップさんはこの地域の出身ではないし、昔のことだから覚えてはいない(ツァップさんは国も違う)。ただ、みーさんが調べてその事件が本当にあったことは事実である。私がすることはその幽霊を見つけて話を聞いて答えること、つまりツァップさんの通訳だ。この幽霊は能力者にも見えなかったり聞こえなかったりするが、私ならできるから適任というわけだ。


 依頼ではないから、お金は出ない。ツァップさんには普段からお世話になっているから手伝うだけだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 その幽霊は路地から2つ外れた、人の気配がまるでない路地の、捨てられた犬小屋の上に座っていた。見た目は普通の20代くらいで、スーツ姿だった。背中から胸にかけてある刃物が貫通してできたたような傷が事件の凄惨さを語っていた。


 「あ、あのときの子。調べてくれたの?そちらは?」

 こちらに気付いた幽霊は顔を上げると犬小屋からトンと下りた。


 「どうも、こんにちは」

 はっきりと話すことができる幽霊は慣れていない。どうするか迷ったが余所行きの声で普通に接することにしてみた。


 「調べマシタ。こっちは友達デス」

 ツァップさんも同じように話しているから多分これで合っていたようだ。事前に聞くべきだった。


 「お友達も私が分かるのですか?」


 「そんなところです。今日は調べ物の話をしに来ました」


 「やっぱり私が見えていたのですか!」

 どうやら今までのやり取りは適当にしていると思われていたようだ。


 「そうです。それで、調べ物の話ですが、どうしてそう思ったのですか?」


 「理由ですか…。やっぱり、知りたいんですよ。何の痕も残っていない。自分のしたことは正しかったのかって」


 「そうですか。なら、話しますね」

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