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第122話 穴だらけ(後編)

第122話 穴だらけ(後編)


 朝早くから天気が少しばかり悪かった。雨が降る2、3歩手前で雲がずっと留まっていた。私はビデオカメラとICレコーダーが人に見つからないよう明るくなってすぐに回収に行ったが、既に1人老人が散歩をしていた。流石に早起き過ぎると思った。仕掛けた物が見つからなかったのは幸いだった。


 画角には穴や窪みが新しくできた跡はなかった。他にもざっと公園内を見て回ったが、明らかにそれと分かるものはなかった。一旦ホテルに朝食を食べに戻って、藍風さんと一緒に懐かしいわかめご飯(藍風さんにとってはそうではないが)に喜んだあと、再び公園へ向かった。


 前日同様少し遠めの駐車場に車を停めてから公園の中を探索した。遊具の上、ベンチの下、時計の裏、花壇の隅などをできるだけくまなく探していった。途中、噴水から壊れかけの不気味なメロディーが流れたが(時間になったら作動するものだろう)、水が出ることはなかった。凍結防止か故障か。


 見つかったのは穴とくぼみはそれぞれ1か所ずつ、遊具近くの石碑に穴が空いていたものと、そのすぐ傍の木がえぐり取られていたものだった。木のくぼみはジャングルジムに上って発見したのだが、この年でこれで遊んでいるように思われるのは気恥ずかしかった。


 「まずいですね。多分」

 地面に下りて、幼児の視線から逃れるように離れる。


 「私も同感です」

 藍風さんの顔には少し深刻そうな表情が浮かんでいる。


 「今までは土は例外として無機物ばかりでしたから、木にくぼみができたということは、次は動物、人間が対象になりかねません。それに、今までよりも痕跡が大きくなっているような気がします」


 「そうですね…。公園を封鎖できないか、協会を通して担当者に聞いてみます」


 しかしと言うか、ある意味予想通りと言うか、担当者は電話に出なかった。マッピングと写真撮影も行っていたが、穴とくぼみの位置の法則はさっぱりわからなかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 できないものは仕方がないと公園の封鎖はあきらめ、一旦ホテルに戻って記録した動画と音声の確認をすることにした。その間に近くのスーパーマーケットで買った昼食を食べた。しかし、数倍速で動画を流しても、時折サラリーマンや私服姿の女性が道を通るくらいで他に何も見つからなかった。音声も同様で彼らの足音や電話をしているらしい声が入っているくらいだった。



 それから再び藍風さんが担当者に電話をかけたがやはり繋がらなかった。協会の方からも担当者の個人携帯に連絡を入れたが返答は曖昧なものであった。要するに、何もしないということだった。私はこの時藍風さんが自力で公園を封鎖したり、中にいる人を追い出したりするのではないかと少し考えていた。だが、こちらも予想していたことであるが、藍風さんの目的はあくまで怪奇の正体を突き止めることだった。ドライととらえるか、当然ととらえるか。


 藍風さんが自分の部屋に帰った後、仮眠を取った。布団に入ってから眠りに就くまでの間、今回の依頼について考えていた。



 今までは無機物だけが対象だったと思う。芝生はが削れていたのは、地面が削れた巻き添えで根が取れて風か何かで飛んでいったのだろう。そう考えれば、後は無機物が対象だった。今日は木に窪みができていた。穴も大きく、深くなってきている。同日に複数箇所で見つかったのも初めてだと思う。発見日と穴やくぼみができた日が同じとは限らないからだ。恐れるべきはこの怪奇が人を対象にすることだ。


 穴やくぼみが見つかるのは大抵朝方だ。ということはこの現象が起こるのは夜だ。夜の観察が必要だろう。痕跡はどうやってできたのだろうか。熱光線のようなもので焼き切ったのか。それなら縁が融けて丸くなり、構成物の違いによって表面に凹凸ができるはすだ。化学物質で溶かすにしては形がきれいだ。何だろうか。舐めて削り取ったのか。円状の跡を複数残す意味が分からない。いや元々怪奇は訳の分からないものだ。そうだった…。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 薄暗くなった頃、相変わらずの空模様の中で起きた。昼食と一緒に買っておいた軽めの夕食を食べてから藍風さんと公園に向かった。前日と同様のものを同じ場所に仕掛けて、公園内から出た。それから、藍風さんと交代で車で仮眠を取りながら、公園の外を周回することにした。遠くから見ることができる範囲を見て、正体が突き止めることが目的だった。公園内に怪奇が留まっているという保証もないから何かあっても身を守れるように護符と札を懐に入れておいた。

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