キス
「あーあのお姉ちゃん達キスしようとしてるー」
ハッ!手を繋いだまま我に帰った私たち。
横を見れば小さな女の子がこちらを指指しながらニコニコと笑っている。
......しまった。いい雰囲気でつい周りの状況が見えなくなっていた。水族館の中、人の多い公衆の面前で遥にキスをしようとしていた。
顔が熱い。先程の雰囲気と、我に帰ったのでダブルパンチでカーと身体が火照るのが分かる。
目の前の遥を見た。
遥も同じなのか、私と同じように顔が真っ赤だった。
遥は私の手をバッ!と離し、きびすを返し私の前から、いやこの場から駆け出した。
「遥!」
駆け出した遥をとっさに追い出す私。このままじゃいけない!足は遅い私だが、この時ばっかりは死物狂いで走った。
離れていく遥を見失わないいようにとにかく走った。
水族館の建物の外。人気のない場所でようやく遥は足を止めた。遥も息切れしている。
「......ハア!......ハア!ん、ごめん遥!場所も気持ちも考えず、あんな事しようとして!」
息も絶え絶えのまま私は遥の背中に向かって言う。
肩で息をしていた遥も背中を向いたまま
「......ううん。私の方こそごめん。リードするって言ってたのに、晃子の事置いてとっさに逃げて、ごめんなさい」
「いいよ。私もあの場にいるの絶えれないと思ったし」
息を整えた私たちはようやく向かいあった。
「......恥ずかしい。まだ身体が熱いわ」
遥の顔はまだ真っ赤だった。
走ったというだけじゃないのは私もドキドキしているから分かる。こうして遥と先程のキスしようとしていた事を思い返すと、やっぱり顔が熱く感じる。
少し涙目で口を真一文字に結んだ遥が少し下を向きながら言う。
「やっぱりごめんなさい。私が期待して晃子が応えようとしてくれたのに。私だけ盛り上がって勝手に逃げて......」
「遥。.......私の顔を見て!どう?私も顔赤いでしょ?期待して盛り上がったのは私も一緒だよ」
溢れる情動のまま想いを口走る。
「......でも、でも」
後悔を口にしようとする遥に抱きつきハグをする。
「.......!!」
驚き、目を見開き涙がこぼれる遥。
自分が自分じゃないような感覚を覚えながら私は遥を抱きしめながら腰に片手を回しながら
「今度は逃がさない。私をこんなにした遥を。大丈夫私たちは変じゃない。後悔なんかしない、させない」
空いたもう片手を遥の顎に手を添える。
「ううっ!......晃子!晃子!」
涙を流し目を瞑る遥。
その顔を見つめて自分の唇を遥の唇に重ね合わせた。
時が止まるのを感じながら。
続く




