スプライト
てくてく。私は今島崎さんと下校している。
中学卒業ぶりだろう、1人じゃない誰かと下校するのは。
しかもぼっちの私と比べて隣にいるのは、クラスでも友達の多い上位グループにいる島崎遥さんだ。
......き、緊張する。1人でいた時間に慣れすぎたのかな。いや、慣れるもんじゃないけど。
緊張で上気しうつむいた顔のまま、目線だけを島崎さんの顔に見やる。
綺麗な人だな。女の私から見てもそう思う。整った顔立ちに大きめの茶目。薄くひいた化粧に、少し脱色して、肩を越え背中の腰まで伸ばしている綺麗な茶髪。
ふくよかな胸元には銀のアクセサリーがちらりと見えて大胆な感じ。スカートも膝上までで短くスラリとした長い脚が見えて、洗練された印象を受けた。
それに比べて私はちょっと猫背で、眼鏡をかけて野暮ったい黒髪を後ろでくくり、長い膝下のスカートで、脚なんか太くて見せられない。
隣で歩いていて釣り合わない──
「そこで瑠美はこう言うのーーってどうしたの町田さん?やっぱりこういう話し駄目だった?」
「い、いや、本の話しをするのは嫌じゃないし、むしろ好きなんだけど......」
「そうじゃないんだけど?」
少し心配そうに覗きこんでくる島崎さん。違うんだ、そうじゃなくて。嬉しいけれども!
「その、私なんかと一緒に帰っていいの?」
ぐふっ!と島崎さんが吹き出した。
「プッ、アッハッハハッ!よかった、そんな事?あー良かった、百合小説の話しが駄目じゃなくて!」
快活にちょっと涙目になりながら爆笑した島崎さん。もう!そんな事で済まして。なんで笑われたか分からず少し腹が立った。
「あーごめん、ごめん笑っちゃって。あのね、町田さん。大人しくて真面目でいいと思うんだけどな私。清楚な感じで。逆に私なんかいかにもな遊び人風だけどな。」
「そ、そんな事!島崎さんは綺麗です!」
「ありがと。町田さんも可愛いよ」
ニヒッと笑う島崎さん。なんかやられた感じがした。
「それに、町田さんは私が百合小説見てても変に思わなかったじゃない。それに、誰にも言わないでいてくれーーあ!」
島崎さんが、ジュースの自販機の前で止まる。チャラチャラと100円硬貨を3枚入れて、
「喉渇いたな、ジュース買いたい私。何飲む?町田さん」
「ええ?い、いいよ私は。」
「いいよ、口止め料」
......えっ?私はそんな事しなくても喋らないのに
私の顔が曇ったのを見て
「冗談よ!ただ1人で飲むのも味気ないし、付き合ってよ」
バツが悪そうに言う島崎さん。それなら、いや悪いな。でも私も喉渇いたし、ここは素直に甘えて。しかし、恐る恐るかんコーヒーを選ぶ。
「へーブラック飲めるんだ、なんかカッコいいね、似合う」
「そ、そんな事は。頂きます」
カシュッ!プルタブを開ける。島崎さんは、スプライトのペットボトルの蓋を開ける。あっ、それもアリだったな。人のものが美味しそうに見えるのは世の常である。
グッグッ!
島崎さんが、物凄くおいしそうに飲む。ごくり、つばを飲みこんでしまった。
その視線に気づいた島崎さんは、
「飲む?」
さすがに奢って貰っておいて相手のも飲むのは人としてどうなの?と断ろうとする。
「いーよ、いーよ。私そんなに美味しそうに飲んでた?フフッはい」
目の前にスプライトが差し出された。嫌みのない顔で言われて、思わず受け取る。
これって間接キスじゃーーいや、気にしすぎか。島崎さんも、どうしたの?という表情でこちらを見ている。
の、飲もう。
慌てて飲んだ為むせた。
「だ、大丈夫?そんなに喉渇いてた?」
「いや、う、うん」
スプライトの味は、よく分からなかった。島崎さんにペットボトルを返す。
島崎さんは、またスプライトを美味しそうに飲んで、はー生き返る!と言っている。
自分のコーヒーを飲んで、
「苦い」
「プッ、ブラックなんだから当たり前じゃない。飲めなかったの?」
「今日のは特に苦いっていうか......」
「......?!へ、変なの、あははは!」
島崎さんががツボに入って、それを見て私も可笑しくなって、笑う。
2人揃って笑い合った。緊張してた自分が嘘のように久しぶりに笑った──
続く




