中世風異世界で卵かけご飯は危険なのか?
卵かけご飯には醤油が必要不可欠に思われますが、この問題は無視して考察を進めます。
ご了承下さい。
日本の卵かけご飯を海外の人は驚くみたいですね。
曰く卵を生で食べるなんて信じられないと。
サルモネラ菌が危ないので、海外の卵は加熱調理が必須みたいです。
日本の卵は薬剤で洗浄するので、卵の表面のサルモネラ菌は皆無だそうです。
では、中世風異世界での卵の生食は危険なのでしょうか?
物によっては危険ではないと言えましょう。
理由は中世レベルの文明だからです。
中世だと何故安全なのでしょうか?
ケージ飼いしていないからです。
ケージ飼いとは、まあ簡単に言えば鳥かごの中でメスの鶏だけを飼い、産んだ卵をケージの下に落とし、卵だけを採集する方法です。
詳しくお知りになりたい方はWikipediaで養鶏を検索して下さい。
飼料効率と衛生管理、卵の採取の容易さなどから、近代採卵養鶏では大体ケージ飼いみたいです。
大量生産出来るというメリットの一方で、狭いケージに押し込められ、ストレスから病気になったり、その病気が一気に蔓延しかねないデメリットがあります。
鶏肉にする鶏を育てる場合には平飼いが行われます。
大き目の鶏舎での多頭飼育です。
中世レベルであれば人の食い物が優先の筈ですから、大量の飼料が必要な採卵の為のケージ飼いは難しいと思われます。
当時であれば、農家の庭先で放し飼いしているくらいが精々でしょう。
農家は鶏に産卵の為の場所を確保してやり、産んだ卵があればありがたく頂戴する程度だと思われます。
ある程度溜まったら市場に持って行って売る様な形態かと。
ですから鮮度はバラバラで、新しい物もあれば古い物もあり、危なくて生食なんて出来ません。
当時は有精卵でしょうし、産んだ事を見落として母鳥が抱卵し始めた卵もあるでしょう。
つまり、孵化が始まっている卵が混じっている可能性もあるという事です。
料理しようと卵を割ったら孵化寸前の雛が出てきたとか、絶叫モノですよね。
まあ、そんな状態の卵をわざわざ食べる、バロットというモノが東南アジアにありますので、異世界にもあったりするかもしれません。
ネットにはいくらでも画像がありますが、グロテスクなので検索する人はお気を付け下さい。
市場で買った卵が腐っていたなんてことは、何も中世だけでなく、私が過去に滞在した事のある、太平洋に浮かぶ小さな島国でもそうでした。
その国でも採卵養鶏が為されており、その卵がスーパーに並ぶのですが、買った卵を割ったら腐っているなんて事が偶にありました。
古い卵が混じる理由というのがちょっと想像出来ませんが、ケージ飼いではなくて平飼いだったのかもしれませんね。
では、庭先で鶏を飼っている農家ならどうでしょう?
確実にこの卵は今朝のモノだと確信が持てるなら?
健康な鶏が産んだものだと言えるなら?
であれば生食しても問題は少ないと思われます。
サルモネラは大丈夫なのか、ですか?
大丈夫だと思われます。
そもそもサルモネラとはどんな細菌でしょうか?
以下、Wikipediaの『サルモネラ』から一部を抜粋して引用します。
>引用始め
サルモネラ属の細菌は自然界において、さまざまな動物の消化管内に一種の常在菌として存在している。
中略
これに対して食中毒性サルモネラ菌はペットや、家畜の腸管に常在菌として存在する人獣共通感染症であり、そこから汚染された食品などが食中毒の原因となる。
中略
鶏卵のサルモネラ汚染は、かつてはニワトリの消化管内に寄生したサルモネラが総排泄腔で卵殻の外側を汚染するためと考えられた。
そのため、汚染防止には鶏卵の洗浄が有効とされた。
しかし、今日ではこうした卵殻の外側からの汚染のみではなく、S. Enteritidisなどがニワトリの卵巣や卵管に寄生し、ここから鶏卵の卵細胞そのもの、つまり卵黄の部分に細胞内寄生したり、その外側の卵白などが保菌することによって鶏卵を汚染していることも知られるようになった。
しかもこうしてサルモネラに感染した鶏卵からはしばしば発生を全うして健康な雛が孵化することが知られており、保菌鶏が再生産されることになる。
こうした親子間の垂直感染を介卵感染と呼び、衛生状態に十分配慮した鶏舎でも汚染鶏卵や汚染鶏肉が生産される原因となっている。
>引用終わり
サルモネラは鶏の体内常在菌ですから、常に増殖して鶏を不健康にしている訳では無いと思われます。
健康を崩した時などに一気に増えるのか、何かの原因で一気に増えるから病気になるのかは専門家でないので分かりませんが、健康な鶏であれば卵がサルモネラに汚染されている事は少ない様です。
卵の中にまで侵入するサルモネラ菌も発生しているみたいですが、それは衛生環境が改善された現代社会だからこそであり、中世レベルの文明であれば卵巣や卵管に寄生するサルモネラにはまでは進化していないと思われます。
ですから農家の庭先で放し飼いされている健康な鶏であれば、病気の鶏の卵を容易に分離できれば、卵によるサルモネラ中毒は防げるモノと思われます。
現に私の祖母の家ではかつてチャボを数羽飼っており、産んだ卵を普通に生食していました。
それで食中毒になった記憶はありません。
当然卵の消毒なんてしていませんでしたし、ワクチンを接種して飼育していた訳でもないと思います。
それでも普通に生食していましたし、健康被害を被った記憶はありませんから、健康な鶏の産み立てだと問題は少ないと思われます。
ですから、中世風異世界でも卵の生食は問題ないと思われます。
ただ、これは鮮度の保障された卵という限定での話であり、市場に出回っている鮮度の怪しい卵はその限りではありません。
あと、サルモネラ菌に関し、Wikipediaからの引用ですが、
>引用始め
食品衛生的観点からみたサルモネラ菌の生存・増殖特性[14]
耐熱性:全卵、卵黄中で60℃、3.5分で不活化。卵白中で55℃、3.5分で不活化。砂糖や食塩を添加すると耐熱性が増加。食品中では、68℃3.5分で不活化。
増殖温度:10℃以下、46℃以上で増殖遅延。5℃以下及び50℃以上では増殖しない。
増殖pH:pH 10以上または4.75以下では増殖しない。pH 4.0 マヨネーズ中で生存、pH 4.6 で増殖する。pH 3.0〜3.5(23℃)で不活化。
増殖水分活性:aw 0.95 以下では増殖しない。
消毒剤耐性:食品製造所で使用される通常の消毒剤は有効。
凍結:食品中のサルモネラ菌は凍結では不活化しない。
乾燥:食品中のサルモネラ菌は乾燥に対して生存、しかし増殖はしない。但し、乾燥するまでに増殖することがある。
卵食品を水で希釈:非常に薄い希釈液中でも増殖。
>引用終わり
だそうです。
マヨネーズには酢が含まれているから殺菌出来るという訳ではなく、pH 4.0でも生存し、pH 4.6 では増殖するみたいですね。
pH 3.0〜3.5(23℃)で初めて不活化する様です。
異世界で冷蔵庫が無ければ、マヨネーズはpH 3.0〜3.5にする必要があります。
食酢を10%は加えないと、十分な殺菌効果は見込めない模様です。
そうでないなら、作ったその日のうちに消費した方が安全らしいです。
最後に、最も簡単な異世界で卵を生食出来る設定は、異世界にはサルモネラ菌がいなかった、でしょうか。
元から異世界人は平気で生卵を食べていたで解決ですね。
鮮度の問題は変わらず残りますが・・・
放し飼いされた鶏の卵ですが、サルモネラに関しては問題が少ないと思われますが、別の恐ろしさがあります。
鶏が何を食べているのか分からない点です。
ミミズやバッタ、ゴキ〇リなんかをついばんでいる可能性が高い。
そんな物を食べた鶏の卵を生食できるのかは、思考を放棄する以外にないでしょうね。
加熱調理していても無理な人もいるでしょう。
因みに祖母の家で飼っていたチャボですが、バッタなんかを獲って来てはあげてました。
そんなチャボの卵なんか生で食えるかと思い、家族は平気で卵かけご飯を食べているのを横目に、一人だけ食べなかったりしました。
だって、バッタが鶏の体内で消化され、その成分が卵になっているのかと思うと、うわぁ・・・となりません?
自分だけは食べずに家族に食べさせるって、酷い奴ですね。
ですから、実は健康被害があったのかもしれません。
私が知らないだけで。
まあ、それでも食べるのをやめなかったので、大丈夫だったのだろうと思っていますが。