恐怖症
誰しも、何かに対して怯えてしまう。
極端に恐ろしさを感じるときには、恐怖症と呼ばれる。
よく知られているだけで、いろんな恐怖症があるもんだ。
高所恐怖症、閉所恐怖症、対人恐怖症に、先端恐怖症。
ところが、すごく変わったものに怯えた少女がいた。
少女は、時が流れるのを恐れた。
とにかく少しでも、時が流れると、涙を流し悲しい顔をした。
ある日、僕はどうしても気になって、彼女に尋ねてみた。
すると少女は、意外なことを言った。
「時が流れるのなんてちっとも怖くないわ」
「じゃあなんで時が流れたら、君は涙を流すんだい?」
僕はさらに聞いてみた。
「時が流れたら、世界は一気に変わってしまうのよ」
そう少女は答えた。
「世界が変わるって?」
僕はその先まで聞いた。
「何もかも二度と元には戻らないの。何があっても、二度と」
「それじゃあ君は、ずっと泣き続けなければいけないね。どうする?」
「時を止めないと無理ね」
「どうすれば、時は止まる?まさか、死ぬとか言わないよな...」
「死んで止まるならとっくにそうしてるよ」
こんなに怖い恐怖症はないな、と思った。