作戦開始
リーフと目を合わせた直後、私の視界は一瞬闇に閉ざされた。しかし、直ぐに見えるようになり目の前には見慣れない景色が広がっていた。
まず目にはいるのは、赤い倉庫。体育館ぐらいの大きさで正面にある2枚の扉が半開きになっている。港などでよく見るやつでいかにも悪い人が集まりそうな場所だ。
後ろには広大な海が広がっている。海を見るのは初めてではないが、自然と気持ちがわくわくする…はずなのだが、今が深夜と言うこともあり、どこかで光っている赤い光のせいか怪しく水面が揺らいでいる。どうせ来るなら昼間に来たかった。
「いや、そんなことより。」
瞬間移動したことへの驚きと海に対するわくわくを抑え、首をふる。
「なんで容赦なく新人の私まで飛ばされてるんですか!?」
隣でキョロキョロしていたイシカに半ば叫ぶように言う。
「っ!大きな声を出すな…!敵が居るかもしれないんだぞ。」
小声でイシカにそう言われ慌てて両手で口を塞ぐ。
「…ふぅ。新人だからこそ、早いうちに任務に慣れないとな。ま、気楽に行こう。」
そう言って倉庫へと歩き出すイシカ。気楽にって…。『重火器を取り扱う闇商人』が相手だというのに気楽には無理だと思う。
そんなことを思っているうちにイシカは倉庫の入り口前近くまで行っていた。堂々と歩いているがなぜかその足どりに無謀な感じはしない。むしろ慎重に忍びよっているように見える。…経験とか無いので勘だけど。
極力、足音を抑えてイシカの後を追う。扉に張り付いて中の様子を伺うイシカの隣につく。
イシカは手で大丈夫と言う合図を出し小声でこう言った。
「作戦開始だ。」
イシカに続いて倉庫の中に入る。中は開けていると思っていたが目の前の道は複雑に枝分かれしていた。左右は白い壁。真っ直ぐに道が伸びていて突き当たりまで見える。その途中では左に右に3、4本の道があることがわかる。道が突き当たりまで見えるので分かるように中はとても明るい。ところどころに吊り下がっているランプのおかげだろうか。
「もしかして、迷路?」
だとしたら、とてもめんどくさい。
「流石にそこまでいりくんでは無いよ。たぶん。」
イシカもめんどくさそうな顔をしている。
「外見からして、そんなに広くないと…。」
そう言いながら左右の分かれ道を無視して突き当たりまで進んでいくイシカ。敵が居るかもしれないって言ってたのはイシカなのに本人は全く気にしてないのでは。
「そんなに堂々と行っちゃ敵に…。」
「あ…。」
イシカが突き当たりで左に曲がった後で小さく呟いた。私からはイシカの姿は見えずなにがあったのかわからない。
「あ、ってなに?イシカ?…イシカー?」
不安になり名前を呼ぶ。
「索敵成功。」
返ってきた声はとても楽しそうな声だった。