表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分かれ道 (改)  作者: leaf
2/13

出会い

××××年8月14日


午前1時24分


私は一人、学校の保健室にいた。

電気もつけず眠いのを必死に我慢してベッドの上に座っていた。

いや、寝てもいいんだけど。なんとなく…怖い。

暗い所や夜には慣れてるからそういうのが怖いんじゃないけどなんとなく怖い。


そんなことよりなぜ私がこんな深夜に学校の保健室なんかにいるかの方が気になるだろう。

それはそれは9時間ぐらい前のこと、カゲロウ中学校1年生の私、ユキヒナは部活中に腹痛を訴え保健室へとサボりに来たのだが…部活の方へ行っているのか先生はいなかった帰ってきたら説明すればいいかと思いベッドに横になってクーラーの効いた涼しい部屋ですやすやと眠りに落ちた。


あまりに快適でぐっすり眠ってしまい、起きるとすでに日が暮れていた。

まさかこんな時間まで寝てしまうとは思っていなかったのでびっくりしてすぐに保健室を出て荷物を持って帰ろうとした…が。

「あれ…扉が開かない…?」

扉にはすでに鍵がかけられていてびくともしなかった。


ここで一つ疑問が浮かぶだろう。生徒がいるのに鍵をかけて教師が帰ったりするだろうか、と。

ましてや寝ていたのに気付かないなんてことあるわけがない。私が保健室に来たとき先生の荷物であろう物が机の横にあったのだから。もしも、まんがいち、気が付かなくても警備員さんが確認とかするだろうと…。


この学校では生徒がいることを確認せずに教師が帰ったりすることなど普通に起こるのだ。

普通そんなことになれば保護者が黙っていない。教育委員会などに訴えたりするだろう。

そんなこともここではない。

ここ、カゲロウ中学に通う生徒達は皆、みなしご同然の子供たちだからだ。

親たちは私たちに興味がない。いてもいなくてもいい存在。だから何も言わない。

保護者がそんなだから教師も適当になる。そうしてこういうことが起こる。

まあ、だれも私たちの行動を気にも留めないおかげでやりたい放題できるからいいけど。


さて、この学校のことはその辺にしてとにかく今私は閉じ込められ窓から出ても門に鍵がかかっており結局職員室に行かないと出れないけど職員室まで行くのも周りが暗すぎて視界が悪く怖いので動けない状態なのだ。


「はぁ…」

思わずため息が出る。鍵を開ける手段はあるのにそれを実行できないのがもどかしい。

ただここから出ればいいことなんだけど…。

おなかもすいてる。帰りたい。キング○ムハーツしたい。

朝まで待って学校やすんで1日家に籠るか、職員室まで行って鍵をとって帰って1日籠るか。

悩んで数時間いまだに答えは出ず寝るに寝れないのだ。しかし、今その答えが出ようとしていた。

「寝よう」

眠気はピーク。もう私はその答えしか出せなくなっていた。数時間寝てまた寝るのかと思われるかもしれないが最近徹夜続きでまともに寝ていなかったので少しでも多く睡眠がとりたかったのだ。

一度決めるとそこからは早い。体をベッドに預け布団にくるまる。そしてそのまま素敵な夢の世界へ…


ドンッドンッ!


「わっ!?」

いきなり保健室の扉がたたかれる音。驚いてせっかく寝る姿勢に入っていた体をもとに戻してしまった。

そしてあわてて視線を扉の方へ向ける。扉の上の方には窓がありそこに人影が写っていた。

「誰!?」

扉の向こうに問いかけると予想外の声が返ってきた。

「あ、やっぱり誰かいた!すいませーん閉じ込められて出れないんですけどー」

ちょっと低めの女性の声。しかし透き通っていてきれいな声。とにかく幽霊じゃなさそうだから扉の方へ向かう。

けれど閉じ込められたってどういうことだろう。廊下にいるのならそこから職員室に向かえば鍵がある。

まさかそこまで頭が回らないバカではあるまい。気になって問いかける。

「閉じ込められたって…職員室に行けば鍵があるでしょう?わざわざなんでノックしたんですか」

「え、職員室に鍵あるんですか。あー良かった。」

バカだった。

「…いやぁ、なんか声がしたもので誰かいるかなぁ先生かなぁと思ってノックしたんです。先生ですか?」

「違います。私も閉じ込められた生徒です」

「あ、じゃあ一緒に行きません?職員室どこにあるかわからないし。一人じゃ怖いし」

職員室どこにあるかわからないって…ここの生徒じゃないのか…?このまま扉を開けて大丈夫だろうか。

それに今から寝ようと思っていたところだし、無理に帰る必要ないし。あ、でもキング○ムハーツはしたい。

「貴方誰ですか?ここの生徒じゃないんですか?」

「あ、俺は来月からここの先生になるイシカ。一回研修に…ってことで今日初めてこの学校に来たんだ」

…あれ、なんか敬語はずれてない?生徒ってわかったから?…まあ、いっか。

「来月から先生…にか。って、先生なら職員室の場所一番覚えないといけない場所じゃないっすか!!」

「いやぁ、うっかりうっかり」

大丈夫なのかこの先生。…まあ、この学校ではそんな適当な先生でもやっていけるであろう。

「とりあえず扉を開けてくれないかな?」

「はーい」

とりあえず扉を開ける。ギギッとゆっくり開くとそこには女性にしては高めの身長で黒髪の長髪。緑色のフード付きパーカーを着たきれいな人が立っていた。

研修に来たにしてはラフな格好だ。ほんとに研修か?

「おや、かわいいお嬢さん」

「ワーイ、生まれて初めていわれたー」

お世辞かどうかわからなくなる笑顔で言うイシカ先生。嘘をつくのがうまいのかはたまた本心か。

「じゃ、行くか」

そう言って先を歩くイシカ先生の後ろを怪しみながらついていく私。イシカ先生はなんとなくその距離感に困っているようで

「怪しい…かな?」

「はい」

「うう…」

と、落ち込んでいる。

「優しいひかえめなお姉さんを演じたつもりなんだが…」

「演じたって言っちゃってるけど…」

「ああああ!」

暗い廊下でイシカの叫び声だけが響いた。

「嘘か」

「違う!違うよ!?嘘じゃないよ!?本当に来月からここの先生にはなるからね?」

「じゃあ、どこが嘘なんですか」

「えぇ…う、嘘なんてないよ」

「…」

「…」

足を止め睨み合い。イシカの目をじっと見る。そのうちイシカの方が折れた。

「はぁ…今日研修で来たってのは嘘だ。ホントはちょっと探検にな」

「探検?」

夜の学校に?来月就任する先生が?いろいろおかしい。いい大人がなにをやっているのか。

「まあ、それもそのうち納得できるさ。ほら職員室」

そんな話をしている間に職員室についてしまったようだ。

けれど…

「あ、鍵かかってる…」

固まる私とイシカ。そういえば普通に考えれば職員室にも鍵がかかってるのは当たり前だ。

「えええぇ」

やっぱり素直に寝てればよかった…。

「で、でも鍵がなくても職員用玄関から外には出れるし!」

「門があいてないのに外に出てどうするの…」

「…と、とにかく外に出よう?」

なぜとにかく外に出るのか…。そんなことを尋ねる暇もなくイシカは来た道を戻っていく。


なぜかその足取りはとても楽しそうに見えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ