一つの想いが宿る世界 第六話 【過去】
-----16:47・和巳の部屋-----
少女「う、ん・・・」
「あ、気がついた?」
少女「・・・・・・」
少女は体を起こそうとした瞬間痛みが走ったのか、少女は腕を痙攣させた。
「まだ起きちゃダメだよ!」
少女「仕事を・・・」
「い、良いよ。今は母さんの知り合いの刑事さんたちが外に居てくれてるから。」
少女「・・・り・・がとう・・・」
「え?」
少女「・・・・・・」
「それより・・・大学での話って・・・」
少女「・・・・・・」
「人権が無いって・・・」
少女「Мне не нужна твоя симпатия.(あなたの同情なんて要らない。)」
「え?」
少女「Я хочу хорошо ладить ・・・ Я не хочу, чтобы вы чувствовали жалость.(馴れ合いがしたいとか・・・あなたに同情なんてして欲しくない。)」
「Прости.(ごめんね。)」
少女「・・・・・・」
「Я не хотел говорить это отдельно.(別にそういうつもりで言ったわけじゃないんだ。)」
少女「・・・・・・」
「Вы с тем, что я говорю? Это первый раз, когда я когда-либо говорил с русским ・・・(僕の言ってること通じてるよね?ロシア語で人と会話するの初めてだから・・・)」
少女「・・・・・・」ポロッポロッ
僕が彼女に話しかけたとき彼女は無表情だったが、黙り込み無言で涙を流した。その時僕は全てを悟った気がした。彼女はこのとき初めて人の前で本気で涙を流したと。
少女「Я думал, что не было японцев, которые понимали русский ・・・(ロシア語がわかる日本人なんて居たんだね・・・)」
その時彼女は深い悲しみを押し殺しながら笑った。涙を流しながら。
「Потому что твоя рана на руках будет замечена у знакомого врача завтра.(君の腕の傷は明日、知り合いのお医者さんに看てもらうから。)」
少女「Тебе ・・・(あなたには・・・)」
「Хм?(ん?)」
少女「Я ・・・ Как ты выглядишь?(私が・・・何に見える?)」
「Что вы имеете в виду?(どういうこと?)」
少女「Тебе ・・・ Я похож на человека?(あなたには・・・私が、人間に見える?)」
「Я не понимаю цели этого вопроса ・・・(その質問の意図は、僕には分からないけど・・・)」
少女「・・・・・・」
「Я думаю, что имя Нина замечательно.(素敵だと思うな・・・ニーナって名前。)」ニコッ
僕は彼女にそういいながら微笑んだ。それが彼女に対して僕が唯一してやれることだったから。
-----翌日・個人医院-----
「先生、お願いします。」
医者「分かってますよ。お母さんから事情は聞いてるから、私に任せて座ってなさい。」
「はい、すみません。」
-----20分後-----
医者「終わりました。弾が貫通していてくれたおかげで、大事には至りませんでした。しかし、念のため数日の間は腕を動かさないようにしてください。」
「ありがとうございました。」
少女「・・・・・・」
医者「これから応急処置が必要な場合は夜間でもいらしてください。今回はたまたま運が良かっただけで、最悪の場合死亡する可能性もありますから。」
「ありがとうございます。」
少女「・・・・・・」