一つの想いが宿る世界 第二話 【重要参考人】
-----16:00・自宅-----
「はぁ、はぁ、はぁ・・・何なんだよ・・・」
進「どうしたんだ、そんな血相かいて?」
「い、いや、何でもない。」
インターホン「ピンポーン」
進「はい。どちらさまですか?」
インターホン「成川さんのお宅でしょうか?」
進「えぇ、そうですが。」
インターホン「渋谷警察署の者です。少しお話よろしいでしょうか?」
進「警察?はい。分かりました。」
-----5分後-----
警察官「すみませんね。」
進「えぇ、それで一体何の用でしょうか?」
警察官「あの実は、対策庁の方からそちらの成川和巳さんにお話があると言われて。」
警察官がそう言うと後ろからスーツ姿の長身の2人の男とまだ10代位だろうか、その容姿で僕を一瞬で魅了させる程の童顔の少女が立っていた。高校生位だろうか、恐らく僕より年下だ。するとスーツ姿の男たちが口を開いてこう続けた。
黒スーツ1「こんばんは。テロ対策庁・関東本部・警備部・証人保護対策室の山下です。」
黒スーツ2「同じく刑事部・刑事第一課の桂木です。」
進「一体、どうしたんですか?」
桂木「新進英社の存在はご存知ですよね?」
進「えぇ。それはもちろん。」
桂木「私たちは今日彼らの動向を監視していました。」
進「はい。」
桂木「監視は上手くいき。後一歩で逮捕まで追い詰めれるところだったんです。しかし、想定外のアクシデントが起こってしまった。それが和巳さん。あなたです。」
進「どういうことですか!?」
桂木「ご存知ですよね?彼らの犯行を目撃してしまったこと。」
「・・・・・・」
桂木「恐らく彼らは24時間以内に和巳さんのことを口封じに殺害に来るでしょう。」
進「そ、そんな。」
山下「どうかご安心ください。我々はあなた方を守るために今日ここに来ました。」
進「ど、どういうことですか?」
山下「和巳さんを現在から我々テロ対策庁の保護下に置きます。」
「え!?」
山下「彼女をここにおいて行きます。」
進「誰なんですか?」
少女「初めまして。」
進「か、彼女ですか!?」
山下「はい。4年前の六本木で起こったバイオテロをご存知で?」
進「えぇ。」
山下「その犯罪組織のシンジケートが居ましたよね?彼女はそのバイオテロの実行犯です。」
進「そ、そんな!?」
山下「ご安心を。我々が2年に及ぶ教育のプログラムにより彼女は証人保護を目的とする対策庁の非正規雇用の職員となりました。」
進「しかし、そんな・・・」
山下「それと和巳さんにはこれを持っていてもらいます。」
そういって山下と名乗るその男は一つのデバイスを僕に手渡した。そして彼はこう続けた。
山下「もしも身の危険を感じて。彼女1人では対応不可能と感じたらそちらのボタンを押してください。」
和巳「どうなるんですか?」
山下「あなたの位置情報が当局に送られて、警察・テロ対策庁の捜査員があなたの身柄を保護します。」
和巳「分かりました。」
丁度彼の話が終わると同時に後ろのリビングへと繋がるドアが開いた。
彩加「話は聞かしてもらったわ。」
山下「あなたは、確か・・・和巳さんのご両親ですね。」
彩加「えぇ。」
山下「それで、どうされたんですか?」
彩加「息子が新進英社に狙われてるって本当?」
山下「はい。間違いないでしょう。当時の映像も残っています。」
彩加「私は警視庁・公安部の警察官です。息子の身柄は我々で保護します。」
山下「あぁ、そういえばそんなことも書いてありましたね。でもそれはやめたほうがいいでしょう。」
彩加「どういうこと?」
山下「彼らの武力を知っていますよね。必要なら平気で傭兵を投入するような奴らです。あなた方には守りきれないでしょう?」
桂木「それでは我々はこれで・・・」
こうして僕はJCTの保護下に置かれた。ここから僕と彼女の想像を絶する生活が始まるとは、この時の僕はまだ思ってもみなかっただろう・・・。