97.マコ、サプライズ
会長の屋敷で、タジマ達との彩り豊かな旅行の想いでを語り合い
名残惜しい気持ちを共有したまま、僕は家路に着いた。
あまり広くないマンションに僕の足音が響く。
ひと際明るい月明かりの下で僕は部屋のドアを開ける。
「おかえりタロちゃん!!」
マコさんが部屋から走り出て、僕に飛びつく。
驚いた顔の僕に、マコさんがキスをする。嬉しい!
マコさんのサプライズ。
あぁ、もっと早く帰りたかったよ。
(知ってたらサプライズにならない、とマコさんが言う)
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マコさんが注いでくれたワイン。
カリフォルニアの日差しを浴びて育った赤いワインを飲みながら、僕はマコさんに話した。
旅行の日々を。
そこで確かな仲間ができた事を。
「あの猫山さんが」とマコさんは驚く。
「ツヨシちゃん、タロちゃんを慕ってるのねえ」とマコさんは微笑む。
「タジマさん。よっぽどあなたが好きなんだわ」とマコさんが笑う。
”鷹”の件に話が進むと、マコさんは真剣な顔になった。
「タロちゃん、やっと見つけたのね。あなたの中に鷹がいるわ」とマコさんが言う。
猫森村の話になると、マコさんはとても興味を持ったようだ。
「エレーン?その猫ちゃんと会ったのね?」とマコさんが身を乗り出す。
僕は頷くとマコさんは意外な話をする。
「実はね、数日前から何度も不思議な夢を見るのよ。
白いブラウスに黒いコートの女性が私に会いに来るの。
彼女は言ったわ、「あたしはエレーンよ」って」
僕はそこで気がついた。
エレーンを紹介しなければいけないのだ。
エレーン出ておいで。僕は声を掛けてみる。
マコさんは狐につままれたような顔をして僕を見つめる。(何かの冗談だと思ったようだ)
部屋の電気がちかちかと点滅し、部屋の中に風が吹き込む。
『やっと思い出したのね。待ちくたびれちゃったわよ』
エレーンがぶつぶつ言いながら僕の肩にひらりと飛び乗る。
「ど、どこから来たのかしら?その猫ちゃん」
明らかに動揺しているマコさんに、僕は順を追って説明したのだ。
長老とエレーンの秘密について。猫森村の運命について。
うーん、と唸るマコさん。
毛づくろいをするエレーン。
彼女らが仲良くなるのは時間の問題だった。