表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第三章
96/123

96.帰還祝い


 僕達の取材旅行はようやく長い旅路を終える。


暖かだった中国地方とは違い、この土地の季節は既に秋であった。

目に映る紅葉は艶やかであり、辺りを漂う空気もきりっとした冷たさを感じさせる。


 会長の屋敷前。長い塀の前には、朝から地元の人々が数多く並んでいたと言う。


ナリタ会長は、僕達の到着を待ちわびて集まった人々の為に、急ごしらえの仮設テントを敷地内にいくつも並べ、地元のみんなに暖かいうどんやお茶を配ったのだ。


---


 秋風と共にナリタ会長の屋敷へと帰還した僕達は、地元の人々の暖かい歓迎を受けた。


車から降りた僕達は集まってくれた一人一人と握手をした。


「お帰り」「よく帰ったね」「待ってたよ、タロちゃん」みんなが優しく声をかけてくれる。

僕達は少し涙ぐみ、そして笑顔になる。

(マコさんだけは用事があって来れなかったらしい。それが寂しい)


「さあ、タロさん。そして猫山さん。タジマとツヨシ。みんなよく顔を見せてくれんか」会長は僕達に抱きついて喜んでくれた。


いい顔をしとるわい。そう言って会長はツヨシをしげしげと見つめる。目を細め優しく微笑む会長。


「わしらは最高の仲間ですわ」猫山さんが言う。堂々と、誇らしげに胸を張る猫山さんを見て、会長がびっくりしている。

何があったのかと会長が僕に聞く。旅が彼に自信を与えたのですと僕は答えた。

その通りです、とタジマも頷く。


「でも一番変わったのは、タロちゃん、あなたでしょうな」

会長は何かを見通しているかのようにそう言って微笑んだ。



 ひとしきり挨拶も終わり、即席の会場では上映会が始まった。


-”DJタロと不思議な冒険”-

ひときわ大きなタイトルロゴがテントのスクリーンに投影され、僕達の旅の軌跡がダイジェストで流れる。

(これが今日のイベントとなっていた)


「上映会が終わったら、タロさんの手料理をお願いできませんかな」と会長は言う。夜には地元のみんなは帰るそうだ。

「もちろんいいですよ」僕がOKサインを片手で示すと、ガッツポーズをしたのは会長だけでなかった。(タジマもツヨシも猫山さんもである)


---


 上映会も終わり、人々が徐々に帰り始める。


辺りは宵闇に包まれ、頭上には月と星が輝き、秋の虫が鳴き始める。


僕はテントの外で大きな月を眺めていた。

月にはウサギと杵突きが見えると言う。

(月の表面の斑紋を眺めているうちに、本当にそんなふうに見えてくるのが不思議だ)


家に帰ったら、と僕は想う。


マコさんに電話をしよう。


挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ