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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第三章
93/123

93.取材旅行38(猫一族との別れ)


 森山夫婦は言う。

「タロさん。あなた達と出会えて本当に良かった」

「寂しいもんじゃねえ、あんた」

二人は夏の間、自分達だけが猫一族と共に村を守ると言う。

(秋の始まりと共に、村の人間は少しずつ戻って来るらしい。自給自足では生活が補えないために出稼ぎが必要なのだ)


 「何か困った時にはいつでも連絡してください。必ず力になります」とタジマが言う。


 「わたしもですわい。超常現象研究家として、ペット用品の父として、この村を放ってはおけんのです」

猫山さんも熱く語る。


 「僕も楽しかった。ありがと。おじいちゃん、おばあちゃん、それから猫族のみんな」

ツヨシがうつむきがちにそう言うと、森山夫婦は彼をしっかりと抱き寄せた。

「ツヨシちゃん。あんた若いのに偉いね。たまには田舎に遊びにきんしゃい。じいちゃんとばあちゃんは大歓迎じゃけぇね」

おそらく彼らは知っているのだ、ツヨシの心を。脆くて危うい心の内を。


やがてツヨシはしくしくと泣き始めた。

少しずつ、少しずつツヨシの泣き声が大きくなり、やがてえんえんと号泣する。


 「おぅおぅ、わかっとるよ。じいちゃんもばあちゃんもわかっとるよ」

何度もツヨシの頭を優しくなでる森山夫婦。

ツヨシの足元でしっぽと身体をこすりつける猫達。


 よかったな、ツヨシ。お前は一つ扉を開いたんだな。

僕はツヨシの心がほぐれるのを感じる。

止まった時が動き始めた針の音を聞き取る。


 冠山の麓には優しく風が吹き抜ける。

”かちゅ”が優しく唄い始める


涙を(ぬぐ)ったツヨシが微笑む。


ふぉっ、ふぉっ、と長老が微笑む。


---


 「心配しなくても、あたしは時々帰るわよ。”猫森村の次元”はどこからでも繋がるんだもの」

エレーンがそう言うと、猫一族はほっとした表情で頷いた。


 「おみやげ持ってきてね」と”かちゅ”が言う。

もちろんよ、とエレーンがウインクする。


 僕もついてく、とかちゅが言う。

エレーンが睨むと、はっとした表情で”かちゅ”は身体を舐め始める。

ばつが悪くなったのだ。


 僕達はさよならと言い、車のエンジンをかけた。

ぶるるんと取材車が震え、走り始める。


僕達の車を猫達が見送る。

首を長く伸ばし、しっぽを左右に揺らしながら。


エレーンは助手席から彼らの姿をいつまでも見つめていた。



 僕はエレーンの為に音楽をかける。

-ノクターン第2番変ホ長調op.9-2(F.Chopin)

(「ぴあの」とかちゅの声が聞こえたような気がした)


彼女のしっぽが揺れ始めた。


挿絵(By みてみん)


実在の地名その他が出てきますが、細部は作者の創作です

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