91.取材旅行36(翌朝)
森山家での宴会も明けた翌朝。
村に朝日が静かに差し込む頃、僕は客用の布団で目を覚ました。
太陽の香りが詰まった布団だ。
鼻がかゆい。
寝ぼけまなこで左を向く。(胸の上で寝ていた猫が飛びのく)
左にも猫がいた。頬がかゆい。
仕方なく右へ身体をねじる。
さらに顔がかゆい。(ふさふさとした猫のおなかが目の前にあった)
仕方なく僕は飛び起きる。
辺りにはたくさんの猫たちが寝ていた。
僕に起こされた猫達は身体を毛づくろいしている。
「一緒に寝たかったの?」と僕が聞く。
うなん、と猫達は一斉に答える。
おはよう、と言って僕は背伸びをする。
猫達も思い切り背伸びをする。
「よく寝てたわね」エレーンが僕を見て微笑む。
「朝ごはん。出来てるわよ」そう言ってしっぽを振って部屋を出て行く。
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森山家の食卓で僕達は美味しい朝食を頂いた。
ぱりっと漬かった”たくあん”は実に瑞々しく、ほうじ茶は香ばしく、白米はつやつやとしていて噛むほどに甘い。
香ばしく炭で焼かれた川魚は旨味を凝縮している。
(東京で食べる魚とは明らかに違い、ぷりっとしているのだ)
納豆と大根がまた美味い。
そして、山菜の味噌汁がとどめを刺す。
どうしよう。
あまりに美味しくて食欲が止まらない。
そう言った僕の言葉にみんなが同意する。
「おかわり、たくさんありますけぇね」
森山夫婦はそう言うと、とても嬉しそうに僕達を見つめる。
そうして僕達は一斉に「おかわり」をしたのだ。
実在の地名その他が出てきますが、細部は作者の創作です