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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第一章
9/123

9.会長とタジマ 1

 2000年、夏。


 今日は休みだ。


マキの親父さんとおじさんは、

相変わらず人懐こい笑顔で遊びに来てくれる。

仕事も忙しいだろうに。(あんまり忙しくなさそうだけど)



 ローカル局のDJタロは、思っていたより人気が出てきたらしい。

この町にあんな時間まで起きている人がいるのが不思議だけれど。


 先週は”超常現象研究会”なるグループの人たちがDJブースに遊びに来た。

スプーンが曲がったとか、写真に人影が写ったとか喜んでた。

この場所はパワースポットに違いないとか、深夜に活動していることが作用してるに違いないとか。

怖いっての。



 休みだからといっても、特に予定があるわけでもなく、リスナーさんたちから局に届けられたメッセージを読んでみたり、選曲してみたり。。。気が向いたら"UFO研究会"に遊びに行くかも。



・・・結局僕は、その研究会を尋ねて行くこととなった。



 局に問い合わせたら僕の自宅をすぐに教えてくれたと”研究会”の会長さんは電話の向こうで笑っていた。

(教えたのはおじさんに違いない)


 電話で教えてもらった住所まで自転車で尋ねて行った僕は、しばらく呆然と眺めることになる。


 その建物は住宅街を抜けた海のそばにあった。


あったというか、塀があった。


住所は間違いないのだけれど、その塀は住宅街のはずれに突如として現れて(そんなふうに見えたのだ)、なだらかな坂に沿ってその外壁をはりめぐらしていた。


 はあはあと息をつきつつ、外壁の向こうまで坂を上ったところで、”お待ちしておりました”と声がかかった。


”タロ様ですね。そのまま塀を曲がったところが正門前です。”

塀越しの松の木あたりから重々しい声が聞こえる。

よく見てみると、学校に設置されているような形の拡声器が確認できた。

せみの鳴き声の多さを考えると、塀の向こうには森があるのではないか。


塀を曲がってみると、さっきと同じ光景が広がっている。

せみの鳴き声はさらに増えたような気がする。



いいかげん帰ろうかと思ったあたりで、やっと正門に到着した。


 「いやあ、自転車で来るって聞いてたけど、ずいぶん早かったですねえ。

そこまで迎えに行こうかと話してたところなのに。がははは」

太陽の下で見る会長さん。

草履(セッタ)に着流しの和服。

きれいなスキンヘッド。

先週遊びに来たときとは同一人物とは思えない。

こ、怖い。



 乗ってきた自転車は、会長さんの愛車(黒塗りベンツ)の隣にうやうやしく駐車された。(倒れなきゃいいけど)


「会長がお世話になっております。わたくし、秘書のタジマです」

僕に自転車キーを渡してくれたタジマは、サングラス越しに一礼する。

しわ一つない黒服スーツが長身によく似合っている。

怖い。


先週遊びに来たときのタジマさん御一行はアキバ系だったのにぃ。


挿絵(By みてみん)


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