表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第三章
89/123

89.取材旅行34(猫森村の人間・歓迎の宴)

 エレーンに案内された家には、二人の老夫婦が僕達を待っていた。


「よぉ来てくれました。疲れましたでしょう」

満面の笑顔で迎えてくれた彼らと、僕達は握手を交わして喜んだ。


僕達は自己紹介をした。

うんうん、と老夫婦は笑顔で頷きあう。

「わしは”森山哲夫(もりやまてつお)”です」と自己紹介をしてくれる。

「こっちは家内の”静子(しずこ)”ですわ」静子さんは哲夫さんの横でお辞儀をする。僕達もお辞儀を返す。


 通された居間の囲炉裏を僕達は囲み、お茶を頂く。

つまらんものですが、と山菜の漬物を差し出してくれる。


香ばしいほうじ茶に漬物が実に美味しくて、僕達はとても心地よく寛いだ。


 「この村の猫ちゃん達は実にすばらしいですな」と猫山さんが言う。

「まさに奇跡の村ですわい」


それはよかった、と森山夫婦は声を合わせる。


 「エレーンから聞いたんじゃけどね」哲夫さんが口を開く。

「タロさん、あんたが”鷹”に導かれたんじゃね?」


そうです、と僕は頷く。そして長老に話した内容を彼らにも話して聞かせたのだ。


 「なんとまあ、不思議な縁じゃねえ」話を聞き終わり、静子さんは頬に手を当ててしきりに頷く。

「”天狗”はこの村の伝説となっとるんよ。ねぇ、あんた」

哲夫さんも静子さんに促されて頷く。


 「今夜はぜひ家に泊まってくれんかの?”天狗”の話を聞かして欲しいけぇ」


とは言っても大したもてなしも出来ないが、と森山夫婦は顔を見合わせる。


 そうして僕達は遠慮なく森山家に宿泊させて頂く事にしたのだ。


---


 その夜の森山家。


長老は猫である秘密をばらされても全く気にしなかった。

「あんたらには話すつもりじゃったからのう」

そう言ってエレーンをなでた。エレーンはぺろりと長老をなめる。



村のあちこちから猫達が集まる。

長老とエレーンが順に彼らを紹介してくれた。


三毛猫の”かちゅ”。「こんちわ」

黒猫の”あい”。「よくきたわね」

白猫の”ミュー”。「またたび、ありがとうよ」

同じく白猫の”ララ”。「カツオブシもってない?」

トラ猫の”とら”。「ひざにのってもいい?」

ぶち猫の”みみ”。「あたちものっていい?」


紹介は絶え間なく続く。

そして宴会は夜通し盛り上がった。


僕のひざにも、ツヨシのひざにも、猫山さんの頭にも、タジマの肩にもそれぞれ猫達が寄り添う。


 彼ら(猫一族)は実に饒舌であった。


自分達の次元について、伝説について、歴史について

話すべき事は尽きなかった。


彼らは飢えていたのだ。

隔絶された世界を選んだ自分達の歴史を、語るべき時を待ち望んでいたのだろう。


その気持ちは僕達にもよく分かった。


彼らが望んだ世界は、あまりにも時代と相反していたのだ。


しかし、僕には彼らのほうがまっとうな生き方であると思えた。

僕がそう言うと、長老は嬉しそうに頷いた。


「な、本物じゃったろうが」長老が聞き、猫達と森山夫婦は一斉に頷いた。


「いいひと!」「タロちゃん好き!」たまらなくなった様子で猫達が叫ぶ。

僕はくすぐったくなる。


エレーンが僕の肩に飛び乗り、耳をがじがじと齧った。

「合格よ」と彼女はささやいた。


 エレーンが認めた、と猫達が口を揃えて驚く。

それが嬉しいシルシであるらしく、猫達は踊りだす。


ランタンの灯りの下で、僕達はとても暖かい時間を過ごしたのだ。


挿絵(By みてみん)


実在の地名その他が出てきますが、細部は作者の創作です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ