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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第三章
88/123

88.取材旅行33(エレーンの案内2)


 「次のお家でごちそうするわ」

エレーンは僕達がきちんと着いて来ているのかを確かめると、そう言った。

「彼らは人間よ。あなたたちの事を楽しみにしているの」



「長老は?人間じゃないの?」

エレーンの言葉に僕は違和感を覚えて聞き返した。


彼女は、しまったという顔をして立ち止まる。

首をすくめて毛づくろいを始めたエレーンはあきらかに何かをごまかしている。


あやしい。


僕は猫山さんに合図する。


猫山さんがポケットから例の物を取り出し、エレーンにチラリと見せる。


 「またたび!」

信じられない速さで猫山さんに飛びつくエレーン。

猫山さんはとっさにまたたびを僕に投げる。


僕はエレーンにもう一度質問する。長老は何者なのかと。


「あーあ。あたしもヤキが回ったもんね。またたびに負けるなんて」

そう言いながらエレーンはじりじりと僕の掴んだまたたびの小枝に近づく。

しっぽをまっすぐに伸ばして。足音を忍ばせて。


 もらったわ! とエレーンが叫んだ時、彼女は既にまたたびを咥えていた。


恐るべし、エレーン。



 またたびに身体をこすりつけ、踊りまくるエレーンは幸せそうである。

僕達は彼女が落ち着くまでのおよそ20分をぼけっと眺め続けた。


背後にたくさんの気配を感じて振り向く。

そこには、さっき別れたばかりの猫達がいた。

ギラギラと大きな瞳でまたたびを見つめている。


こ、怖い。


 さすがに独り占めをすることに堪えられなかったのか、エレーンは彼らに分け与えた。

「一人5回ずつよ。5回踊ったら譲ってあげなさい」

気品を漂わせてエレーンが指示すると、猫達は行儀良く一列に並んで楽しみを共有し始めた。


 たくさんの猫達が踊る中でエレーンが重い口を開く。


「長老にはちゃんと言っておいてよね。あたしが勝手にしゃべったんじゃないって」

うん、ちゃんと言っておくよ。

そう僕が請け負うとようやく彼女は教えてくれたのだ。

長老はこの村一番の長寿猫であることを。

彼は次元を操る”奇跡の猫”なのだ。


「見た目が猫に見えないね」と僕が言う。


「長く生き抜いた猫だもの。変態したのよ。おたまじゃくしとカエルみたいなもんよ」

そんなことも知らないの?とエレーンは意外そうな顔をする。

「”猫の七継ぎ松”は知ってるわよね?あれも変態した猫だったわ。

主人のおばあちゃんを食い殺したとか言われたけど、違うのよ。おばあちゃんを慕っていたからなんだわ」


そうだったのか。

僕達はひどい勘違いをしていたようだ。


「だから守りの村を置いたのよ。悪い風潮に一族が滅ぼされないようにね」


 とんぼの飛び交う野原の一画で、踊る猫一族。

彼らの幸せを壊してはいけない、僕達はそう心に決めたのだ。


挿絵(By みてみん)


実在の地名その他が出てきますが、細部は作者の創作です

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