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タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第三章
87/123

87.取材旅行32(エレーンの案内)


 長老は少し眠ると言って奥の部屋へ消えた。

後はエレーンに村を紹介させると言う。


 「それ、持ってきてね」エレーンが煮干の袋を見つめる。


僕達は煮干の袋と共に彼女に従った。

 

 村は5軒の藁葺き家屋で構成されていた。

2本の川が流れており、村の出口で合流していた。

村の周囲は背の高い木々に囲まれ、山に包まれていた。

長老の家が一番入り口から遠く、入り口を取り巻くように4軒が建ち並んでいた。


 村のいたるところに猫達がいた。


一人一人(一匹一匹)に僕達は紹介されて歩く。


「みんながみんな話せるわけじゃないのよ」とエレーンは言う。


「”かちゅ”。ちょっとおいで」エレーンに呼ばれて、川のほとりから三毛猫が現れる。


「こんちわ」と”かちゅ”が言う。


こんにちは、と僕達はお辞儀をする。


「この子はステキな歌を唄うのよ」エレーンが促す。

体を舐めるのを中断した”かちゅ”は歌を唄う。


ナン、ナーン、にゃごりょょょ~♪

村に彼の歌声が響く。

川面で魚が跳ねまわる。


にぃにゃ、にゃごりりぉ~♪

彼の歌声に合わせて続々と猫達が集まってくる。

やがて全員が合唱を始めた。


にゃぁにゃ、ナンゴーりょぉ~・・・・

ナンナンナ~ゴォリョ~♪


うっとりと最後のくだりを唄い終わり、彼らが僕を見つめる。


ひょっとして、と僕は聞いてみた。


 「オンブラ・マイ・フ(Ombra mai fù)?」


おぉっ、と彼らは歓声を上げた。


 「うん、あたりだよ」”かちゅ”は僕の肩に飛び乗り、うなじの髪をペロペロと舐めた。


「この曲ね、昔”天狗”が良く唄って聞かせてくれたの。あんた()ってる?」

”かちゅ”はとてもかわいい声で僕に尋ねる。

うん、知ってるよ。と僕は答える。


-ヘンデル作のオペラ『セルセ』で唄われるアリアであり、ペルシャ王セルセが劇中で歌うのだ。

-木陰を愛した歌である。(※wikipedia参考)

-伸びやかなファルセットでオペラ歌手のキャスリーン・バトルが表現し有名となった。


おぉっ。再び彼らは歓声を上げる。


「あんた、音楽を()ってるね」”かちゅ”は僕の頬をペロペロと舐めてくれる。


僕達の車で音楽が聞けることを知ると、猫達は口々に叫び始めた。

「聞きたい!!」「今聴きたいよ!」「音楽さいこう!!」


あとにしなさい、とエレーンが一喝するとみんな静かになる。


エレーンは僕の肩に乗ったままの”かちゅ”を睨む。

はっとした表情で”かちゅ”は僕の肩から飛び降りた。


優雅にエレーンはきびすを返して、僕達をいざなう。


また後でね、と僕は猫達に手を振った。


彼らはしっぽを振って見送ってくれた。

背の高い草花が辺りに生い茂る丘の上で、彼らのしっぽが揺れ続けていた。


挿絵(By みてみん)


実在の地名その他が出てきますが、細部は作者の創作です

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