85.取材旅行30(猫の森)
僕たちが出発してすぐに、舗装された道はなくなり
剥き出しの土の道路がひたすら続いていた。
清清しい緑つらなる道を車は進んだ。
いくつかの山を越え、いくつかの谷を抜けた。
しかし道はひたすらに一本であった。
一度の十字路にも出会うことなく、僕たちは最後の山を越えた。
(これらの様子はキャビンからツヨシが一部始終を撮影している)
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「あれじゃ」と長老が言う。
『あれが猫の森よ』とエレーンが言う。
その村は、とても不思議な印象を持って僕たちを迎えてくれた。
そこに広がる景色。
それは”猫守村”と瓜二つの村のように見えたのだ。
「似てますね。”守り”の村に」
僕がそう言うと、長老はゆっくりと頷いた。
「そりゃあまあ似とるじゃろう。元々わしらは守りの村に住んでおったから」
そうして僕たちは長老の家に招かれたのだ。
その家は”猫守村”の井戸があった家と同じ位置に建っていた。
家の玄関をくぐると、たたきの横に”井戸”があった。
同じだ。と僕たちは思う。
「ほぅ。気がついたみたいじゃね」と長老が言う。
「ほんじゃあ、教えちゃる。まあ座ってお茶でも飲みんさい」
そう言うと長老がお茶を入れてくれた。お茶請けにわらび餅も添えてくれる。
僕たちは示されるまま茶の間に座り、炭火香る囲炉裏で沸かしたお茶を頂いた。このお茶がまた絶品であった。
「このお茶おいしい!」ツヨシが満面の笑顔で味わう。
「昔、田舎で飲んだお茶を思い出しますねえ」「いやあ、確かにそうですな」
タジマと猫山さんもしきりに感動している。
僕たちは、すっかりこの村が大好きになってしまった。
実在の地名その他が出てきますが、細部は作者の創作です