80.取材旅行25(鷹)
夢の中では”鷹”が待っていた。
鷹は僕が差し出した親指にしっかりと掴まり、ぶるんと羽を震わせて深呼吸をした。
彼はくるりと顔を僕に向けると、その不思議な色彩を伴って輝く瞳で僕を見つめた。
(実に不思議な瞳だ。例えるならそれは「宇宙」を眺めているようである。)
『夢の中で会うのにはもう慣れたか?』と鷹が問いかける。
だいぶ慣れたと僕は言う。
『お前は、刻まれた記憶を忘れなかったらしいな。長老が誉めていた』
長老に会ったの? そう僕が聞く。
『会ったとも言える。私たちは想いを交わしたのだ』
鷹は瞳の奥で色彩をくるくると回転させながらしばらく考えていたようだ。
『この場所に来るために、お前たちは次元を超えなければならなかったのだ』
次元?
『そうだ。そのせいで時間が多少おかしな進み方をしたらしいな』
タイムスリップなの? 僕は聞いてみる。
『・・・長老が答えを教えてくれるだろう。がんばれよ』
唐突に鷹は空中に浮かんだかと思うと、次の瞬間には消えていた。
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「タロさんっっ。変な人が入ってきちゃった!」
僕を起こしたのはツヨシだった。
「おはよう」と言ってツヨシの頭をなでてあくびをする僕に、ツヨシは言う。
「ちょっとこっちに来てよ、タロさん」
変な人って?と聞く僕の手をツヨシは掴み、キャビンのテーブルへと連れて行く。
腰まで届きそうな長い髪。ふさふさとした髭とまゆげ。
何枚重ねているのか分からないほど着膨れした服。
ズボンの下からは"ももひき"が見えている。
手には茶色くてごつい"杖"を持っている。
テーブルに座っているのは見知らぬ老人だった。
「こんにちは」と僕はお辞儀をした。(朝時刻はもう終わっていたのだ)
「はい、こんにちは」ゆっくりとお辞儀を返し、老人は僕とツヨシを交互に眺める。
やがてにっこりとして笑い出す。
ふぉっ。ふぉっ。(口の中にふいごが入っているようだ)
「タロちゃん言うんはあんたのことかいの?」 老人は実にゆっくりと話すので聞いてるだけで眠くなりそうである。
「僕がタロです、それからこの子はツヨシ」 僕たちは改めて自己紹介をする。
「あと二人います、起こして来ましょうか?」 と僕は聞いてみる。
取材車を勝手に停車している事で何か話をしに来たのかと思ったのだ。
ふぉっ。ふぉっ。と老人はしばらく息をして(笑い声かもしれない)、やがて一言添えた。
「わしが長老じゃよ」